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笑わせる技術 世界は9つの笑いでできている

元芸人の放送作家が記した一冊である。何でも、笑いの種類は9つに分類されるらしい。筆者はお笑いスクールの講師を務めており、笑いのタイプを分類するあたりが講師らしい。

共感、自虐、裏切り、安心、期待、無茶、発想、リアクション、キャラクター。これらが9つの分類である。基本的には相手との距離感を縮めた上で、笑いは成り立ちやすい。距離感がある中で笑わせるのは、なかなか難しいのである。いわゆる"内輪ネタ"が盛り上がるのは、そのような心理的な背景があるからだと理解できる。

この中で最も高い難易度に分類されるのは、無茶と発想である。無茶のほうは、世の中色々な決まりやルールがあり、そのような規範に縛られている人に対して、自分の言動で「それ言っちゃうんだ」と思わせられたら笑いが沸き起こるという仕組みだ。たしかにこの技術は、かなり難易度が高い。バランス感覚をミスると、言っている自分が変なやつ扱いされてしまうからである。逆に、成功した時のインパクトは、(難易度通り)相当高いものである。

昔、会社でボーリング大会をした時のこと。優勝した先輩は「親方」と一部の間で呼ばれていた。本人にそのつもりがあるのかないのかわからないが、偉そうな言動を度々する人だったのだ。飲み会中に表彰式が行われ、その人は前に出て表彰をされ、一言述べることになった。酒席の場だったので、ほとんどの人たちが酔っていたこともあり、優勝スピーチが終わった瞬間、「これはイケるのでは?」と閃いた。そこですかさず「おーやかた、おーやかた!」と、親方コールを始めてみた。すると、当の本人はすごく嬉しそうにノっているし、周りもかなりの笑いに包まれていた。今思えば、相当賭けに出たな…と思うが、あれこそ「無茶の笑い」だったのかもしれない。

その人に対して「親方」と言いたいけど、本人の前で言うのはちょっと憚られる。それを「あいつ言っちゃったよ」といった感じで、その無茶が周りに受け入れられた、ということになる。あの場の雰囲気、本人の高揚感、多少羽目を外しても問題なさそう、そういったいくつかの判断基準をクリアしたうえで繰り出した一撃であった。相手が目上だったのでこうなったが、自分より下の人にやってしまうと、ただのいじめになるので、注意が必要である。

笑いは世の中に必要だと思う。こんな世の中だから、特に。誰かを傷つけることなく笑いを起こせるのが最も望ましい。本を読んだからといって人を笑わせられないけど、自分が行っているコミュニケーションは、どう分類されるのかな?と、自答する瞬間があってもよさそうだ。

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