福砂屋のカステラ
福砂屋、というカステラ屋さんがある。たまたま物産展で発見して、美味しそうだから買ってみたのだが、どうやら有名なお店、老舗中の老舗だったようで。
買ったカステラを入れてくれた袋を持っていたら、見知らぬ人に話しかけられ、「福砂屋、どこで買いました??」と聞かれた。買った時にはお店の名前をうろ覚えの状態だったので、"福砂屋"の音が聞き取れず、何のことかわからなかった。何回か聞き返して、やっと、「あ、このカステラのことか」とわかる始末。
このカステラのすごいところは、味も然ることながら、角の取れたザラメである。底に敷かれたザラメは、材料を撹拌するときに角をすり減らしながら生地に馴染ませるという技術らしい。てっきり、ザラメを入りの生地を先に作ってから、黄色い部分を重ねるのかと思ったが、それだと角が取れる形状にはならない。
しかも、これは機械は使わずに、人の手で行われているらしい。再現性はかなり難しいと思うが、まさにそれは職人芸。
ベテランの職人はこう話します。「撹拌する際、シャリッというザラメの音がかすかにします。この音を聞きながら、長年のカンで混ぜ加減を調節します。ザラメが全然溶けないのもいけないし、溶けすぎてもいけない。ザラメ糖がすり減らされながらも、カステラの底に残るように努めています」
(福砂屋HPより抜粋)
数字では語れない、条件は人間の頭と感覚の中にある。それなのに、どうやってこの技術を伝承していくのだろうか……。福砂屋曰く「手わざ」なのだそうだが、その様子はYouTubeに上がっている。
何人もの職人さんが似たような動きを繰り返す。素人ではわからない微かな音を頼りに、あの味を作り出している。これを見てから食べたほうが、より美味しさを感じることができたかもしれないな…と、少しだけ後悔している。
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