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尊敬と新規性

マウスの聴神経の再生に成功したとのプレスリリースがあった。九州大学の研究だそうだ。

実験では、内耳に傷害を与えたマウスを詳細に解析したところ、傷害時に現れる増殖性細胞が、少数ながらニューロン(神経)へと分化していることを発見したという。また、増殖因子とバルプロ酸(抗てんかん薬として世界中で頻用されている薬剤)との組み合わせ投与により、この神経細胞を増殖し、ニューロンへの分化及びその後の生存率を著明に亢進できることがわかったとのことだ。

先行研究では、増殖性細胞のニューロンへの分化が確認されず、そのため破壊されたニューロンが戻らないと考えられていたと思われる。しかし、つぶさに観察してみることで、実はちょっとだけニューロンに分化していたことがわかったので、その増殖を試みたところ、見事成功したということなのだろう。

ニューロンの生存に効果のあるバルプロ酸との組み合わせもよかったのだろう。これをどうやって見い出したのか、その過程はプレスリリースには書いていないが、おそらくいくつかの候補を試してみて、これが当たったということなのかなと解釈した。いずれにしても、最初の気づきが無ければ、研究の発展は無かったと思われる。

何事もしっかり観察してみるというのは研究の基礎的な部分だとも思うが、先行研究で確認されなかったからといって、そこがスタートになってしまうと、新しい発見は出来ない。先行研究に対するリスペクトはしつつも、常識を疑ってみることも必要だと感じる。過去できなかったことを更新していかなければ、新しいことは生まれないからだ。

自分の身の回りにも、今までこうだったから…という理由でやっていることがないか、今一度見直したいものである。

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