固い袋

小学生の頃は今みたいにシネコンが無かったので、市内の古い映画館に行っていた。小学校高学年くらいになると、友達同士で映画を観に行くことを許されたので、たかだか自転車で10分そこらの距離だったが、とてもワクワクしたのを覚えている。見た映画は、クレヨンしんちゃんとかドラえもんとか、子どもがよく見るような作品だ。今も、それらのシリーズが続いているのは集客が見込めるからで、単純にすごいなと思う。

物販コーナーはそんな古びた映画館にもあって、そんなに大きいスペースではなかったが、パンフレットや軽食を売っていたと思う。飲み物やお菓子を食べながら映画を見るのは、大人になった今でもいい娯楽である。もちろん、小学生の頃も親からもらった小遣いの範囲で、それらを買って楽しんでいた。

キャラメルコーンを売店で買った時があった。ご存じの通り、スナック菓子で相当甘い。当時は一袋を一度に食べるなんてそうそうできなかったけど、映画館に行けば別だ。キャラメルコーンを一度に食べられる。大の甘党だった自分(今もそうだが)は、これもまた楽しみにしていた。キャラメルコーンを買って映画館の席に座る。本当なら映画が始まる前に開けておくべきなのだが、この時はそうしなかった。たぶんすぐには食べたくなかったからだと思うが、記憶は定かでない。

映画が始まってしばらくたった時、キャラメルコーンが食べたくなった。明るい時に開けておけばよかったものを、上映中の暗い最中で袋を開けねばならない。そして、キャラメルコーンの袋が固い。なかなか開かない。子どもの力だったからもあると思うが、ポテトチップスなどと比べてキャラメルコーンの袋は固かったように思える。なかなか開かなくてかなりの力を込めたものだから、開いた瞬間に「バーーーン」と、物凄い音がして周りにキャラメルコーンが飛散した。3分の1くらいは無くなっただろうか。せっかく買ったお菓子が、それも一袋食べるのを楽しみにしていたお菓子が3分の1も無くなってしまったのだ。それはそれで悲しく、さらに上映中に(一瞬ではあるが)周りの注目を集めてしまったことが何よりも恥ずかしい。映画の内容の話では全くないが、自分にとっての映画館の思い出といえば、これなのである。

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