「察する文化」のネガティブな側面
日本には「察する文化」があります。
例えば妻や部下といった身近な人や、はたまたサービス業の人などがこの「察する」ことができないと「あいつは気が利かない」となって、腹を立てたりもします。
「察する文化」とは、「いちいち言葉にしなくても伝わる」や「その場の状況に応じて適切な対応や言動をとる」ことを良しとし、自分にも、そして周りの人にもそれを求める文化です。
「おもてなし」という言葉にはそういった「わざわざ言葉にしなくても」っと言ったニュアンスが含まれているのも、日本文化ならではです。
ハイコンテクスト文化
少し難しい話になりますが、この「察すること」を良しとする文化とは、アメリカの文化人類学者エドワード・ホールが唱えた「ハイコンテクスト文化」にあてはまります。
「コンテクスト」とはコミュニケーションに際して共有されている体験や感覚、価値観、習慣や考え方のことを言います。
なので、「ハイコンテクスト文化」とは価値観や習慣などの多くの部分が共有されているために、言わなくてもわかる「以心伝心」で意思の伝達が行われる傾向が強い文化となります。
まさに日本の「察する文化」は「ハイコンテクスト文化」にあてはまります。
基本的には居心地がいい
この「ハイコンテクスト文化」、基本的には中にいる人にとってはなかなか居心地のいい空間を提供してくれます。
わざわざ言葉にしなくても周りの人は気を利かせてくれますし、レストランでお水がなくなれば従業員の人がお水をつぎに来てくれたりもします。奥さんや部下に「あれ持って来て」でちゃんと伝わることはとっても楽チンです。
むしろ「わざわざ言うこと」は相手にとって「失礼なこと」であると思う場面も結構ありますよね。
赤ちゃんと母親の関係
こう言った「ハイコンテクスト文化」における個人間の関係は、赤ちゃんと母親の関係と似ています。
生まれたばかりの赤ちゃんは、自分では何もできませんし、言葉もしゃべれません。なので全面的にお世話をしてくれる主に母親に頼るしか方法はありません。
そして母親は泣いている赤ちゃんをみて「この泣き方はお腹が空いているのね」とか「オムツか濡れているね」などと、赤ちゃんの状態を「察して」何も言われなくても赤ちゃんに必要なことを行います。
赤ちゃんにとっては快適です。ただ泣いているだけでおっぱいが与えられて、オムツが交換され、いつの間にか寝ていることができるのです。
自分と相手との適切な境界線が引きづらい
しかし、赤ちゃんも大きくなると、自分を主張し始めます。2歳ごろに訪れるイヤイヤ期などはその典型で、何かを拒否することで、自分という枠組みができてくるのです。
この拒否する反応や、言葉で説明することができないと、自分と他人との区別が着きづらくなります。すると、自分の境界に人が入ってくることを拒めなくなったり、他人の境界に無意識に入り込んでしまうことに繋がります。
母親と赤ちゃんとの関係は、長い年月をかけてそのやり取りの中で自分と親との境界線を引いていくことになります。
さて、前置きが長くなりましたが、日本における「察する文化」とは、この相手と自分との境界線が曖昧になってしまうことがネガティブな側面なのです。
空気を読めない、期待に応えてくれないが怒りを呼ぶ
例えば「毎朝新聞を読むときにいつもコーヒーを準備してくれる」と言ったケースを想定してみます。
その準備してくれる人は、奥様でも秘書の方でも部下でも誰でもいいとします。
その人が突然、何かの拍子にコーヒーを準備しなくなりました。
そんなとき、人によっては「気が利かない部下」や「空気が読めない嫁」ということになり、怒りを覚える方もいるかもしれません。
しかし、よくよく考えてみるとコーヒーを飲むのは自分自身ですし、また場合によっては「コーヒーを入れてもらえないかな?」っと一言お願いをすればやってくれるかもしれません。
「何も言わなくてもコーヒーが出てくる」ことを期待するのは、子供の心理状態であるのかもしれないのです。
自分の領域を意識する
こう言った本来自分の領域として自分で責任を取るべき場面においても、相手に期待をしてしまうことというのは、「察する文化」のネガティブな側面になります。
そして、いつもそう言った自分の領域を何も言わずに満たされていると、つい人はそちらの方向に退行していってしまいがちになるのです。
なので、「察する文化」の便利さを満喫しながらも、自分の領域を意識することが大切です。そうすれば自ずと感謝の気持ちも出てくるはずです。
自分がゴキゲンな毎日を過ごすためにも、自分の領域を意識して生活したいものです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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