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みっちり叱られて良かったという話

「起業しました!」と若干猛々しく書いた前回のnoteですが、今回は時間をぐんとさかのぼり、ぼくが社会人になってから初めて、「こっぴどく叱られた話」を書きたいと思います。この経験が、仕事に向き合う上で、とてつもなく大切な、本質的なことをぼくに教えてくれたから。

①新人営業マンのぼく

新卒で入社したベンチャーは、当時の社員数が全部で10名ちょっとの時期だったので、配属された営業部門も、部門、といいつつ、上司と先輩とぼく、の3人。売る商品だけは決まっている状況で、営業研修なんてもちろん無し、OJTでばっちり指導してもらうこともない。ぼくは、新人は大事にしろ!とか、新人には研修が必要だ!とか思わないタイプなので、放置されていてもぜんぜん違和感なく、自分なりに「営業」して、それなりにうまくやっていました。

もちろん、お客さまのところへも1人で行きます。

その日は、夏のとても暑い日で、汗まみれのスーツ姿で歩く自分の姿を今でもはっきりと憶えています。駅から随分と距離のある、お客さまのところに伺いました。訪問は、この日で2回目。

前日1回目の商談では、先方の「課題」をしっかり伺っています。その夜は、宿泊先のホテルで、あれこれと材料を集め、わからないことを調べあげ、徹夜でプレゼン資料を作成しました。70ページの大作。いいプレゼンができそうでワクワクしながら朝を迎えました。

さてその2回目の訪問。しつこいですが、暑い暑い夏の日でした。70ページの資料を前に、お客様の課題が当社の製品によって如何に簡単に解決できるか、を、ぼくなりにロジカルに、よどみなく説明を始めたわけです。

上手くいくとしか思っていなかったぼくの予想は裏切られ、先方からは、

こっぴどくお叱りを受けることになりました。

こっぴどく、みっちり、1時間。永遠にこのお叱りは終わらないと感じた1時間。怒鳴るとかそういうんじゃないんです。とにかく、しっかりとお叱りを受ける、という。

②こっぴどく叱られて

びっくりしました。いや、別に、叱られ慣れてないとかじゃないんです。どちらかと言えば、子ども時代から、先生にも先輩にも、楯突く、いや、自分の意見を言ってしまうタイプなので、怒られることはぜんぜん平気です。

でも、このときは、とにかく、びっくりしました。そしてとてもショックでした。今でもそのショックは残っています。なんで怒られるのか、さっぱりわからない。だって、ぼくからすれば、当社の製品が先方の課題に間違いなくお役に立てることを、ロジカルに説明しただけなんですから。

担当者の方は、なぜ当社の製品が先方の求めるものとは違うのか、大変な怒りを含みながら、こんこんと語ります。欲しいものをもってきてくれればいいのに、これじゃないんだ、と。

③叱られた理由がわかってきた

叱られたときに言われた言葉を幾度も反芻して、叱られた理由をひたすら考えました。だから、今でも、あの日のことは、暑かったことも含めて、鮮明に覚えているわけです…

そして、だんだんと理由がわかってきました。

それは、相手が求めているものに対して、過小なものもダメだけど、過大なものもダメ。ジャストフィットしたものでないとダメ、だということ。

相手にどう合わせるか、が重要で、相手が求めているものを、自分勝手な理解で、自分勝手な精一杯と一生懸命を詰め込んで提案したところで、受けいれてもらえるわけがない、ということ。

それまでのぼくは、がむしゃらにやりながら身に付けた、自分なりの営業スタイルでそれなりに結果も出せていて、「自分が正しい」という過信があったんですね、きっと。「御社にとって、このサービスは絶対必要ですよ!なぜならばですね、、、」と、理路整然と一本調子で営業し倒す。電話営業で、先方に要らない、と断られても「ほんとにいらないんですか?そのご判断、間違ってますよ」と引き下がらず、説明を続ける。

そんな風に調子に乗っていたぼくが、夏の暑い日に、汗まみれになりながら、こっぴどく叱られました。

でも、叱られた理由がわかってくると、なんだか「ずん」と腹に響いて来ました。

相手が求めているものを、適切なタイミングで、適切な状態で提供する。このことに、このタイミングで気付けたことは、本当によかったと思います。叱ってくれた方に、今でも心から感謝しています。

④会社でなくて、「人」を理解する

過小でもダメ、過大でもダメ、ということは、相手が求めるもののポイントを理解し、そのサイズ感を捉えることが重要です。

では「相手」とは誰なのか。この「相手」の理解も、ぼくは間違っていました。目の前で話をしてくれる「人」が「相手」なのに、ぼくは、その人を通り越して、ぼくが勝手に妄想した「会社」を「相手」に、これまた勝手に「課題」を定義し提起していました。「人」への理解をすっとばして、自分勝手な提案を押し付けていたのです。

このことに気付いたぼくは、まずは、目の前にいる人を理解する努力を始め、自分勝手な妄想からの提案という営業スタイルを卒業しました。「御社の課題を分析をした結果、こちらの商品を導入されるのが正しいです」と、(一見)理路整然と営業するのをすっぱり止めました。

相手を理解するためには、まずは相手から話してもらうための材料や環境が要ります。ぼくからは、業界のトレンドや情報に始まり、ちょっとした世間話まで、さまざまな投げかけをします。相手が共感して、話しやすいトピックを探します。そうして、さまざまなトピックをきっかけに、お話を伺うなかで、先方への理解を深め、ぼくが何を提供すれば、その人にとって価値が出るか、を考えます。

そして、直接会いにいく、会いに行けるような関係を続けるためには、会う価値があると思ってもらう必要があります。そのためには、相手を理解し、時々で相手が必要は情報や知識を常に準備しておきます。

課題が明確なら、適切な商品を当てはめれば課題解決できます。そうではなくて、課題の抽出から一緒にやらせてもらえる関係を構築しておくことが、ぼくはとても大切だと思います。

そうしてようやく、「フィットした提案」が作れるようになります。

⑤でもやっぱり動いてから考える

こんなふうな失敗も含めて、まずは動くことが大切だと思います。ぼくは、新人のころ、ビジネス書を読んだり、セミナーに行くより先に、たくさん動きました。本を読んでから営業してたら、ぼくの場合は、きっとうまくいかなかったと思います。付け焼刃の知識で、空回りしたはず。

まずは活動量が大切で、自分で考えて動いて、結果を出してみる。そのあと、やった動きと結果を、プロセスも含めて、振返り、言語化して、再現できるように整理していました。

たとえば、お客様のお問い合わせから10分以内に折り返しのご連絡をすると成約率が高い、ということがわかったり(これは、新人のぼくにとっては、大発見でした)。

自分なりの言語化がある程度できてから、ビジネス書を読んでみると、自分がやってきたことを追体験する気分で思考の整理を進めることができます。理論武装もばっちりです。

次回からは、みなさんが再現できるような形で、ぼくなりに言語化した「営業のエッセンス」を少しずつ書いていきたいと思います。

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