見出し画像

#4-人生100年時代におけるシニア社員のための実践的なキャリアデザイン術

第2回:人生100年時代のキャリア開発~変わる企業の役割(その2)

人生100年時代のキャリア支援の方向性

それでは、人生100年時代のキャリア支援はどのようなものになるのでしょうか? 

実は、2017年12月に経済産業省産業人材政策室が発表した『「人生100年時代」の企業の在り方~従業員のキャリア自律の促進~』という報告書にその方向性が示されています。

まずは、個人(従業員)側のキャリアに対するスタンスです。

報告書では、“ 個人(従業員)は、 「人生100年時代」に高付加価値労働主体として活躍し続ける必要性があり、そのためには、個人がキャリアにオーナーシップを持ち、社内外の広い選択肢を視野に入れてキャリア開発することが必要” と提言しています。

これに対応して従業員に対する企業の役割も変わってきます。

これまでは企業は、従業員のキャリアに関しては 「自社で雇う」 ことを保障し定年まで仕事を与えることを企業の役割としてきました。しかしながら、これからは 「 社会で活躍できる」ことを保障するために、企業はキャリア開発を支援していくことが必要である” と報告書では提言しています。

すなわち、企業の役割は 「雇い続けることで守る」 から 「社会で活躍し続けられるよう支援することで守る」 に変容が求められているということです。

前回2020年の通常国会で成立した高年齢者雇用安定法改正について紹介させていただきましたが、この改正法は、「70歳定年法」とも呼ばれ、今後のシニア雇用の方向性に大きな影響を与える法律です(施行は2021年4月から)

この法案の中で新たに提案された選択肢が ④他企業への再就職支援、⑤フリーランス選択者への業務委託、⑥起業した人への業務委託、⑦社会貢献活動への支援、の4つでしたが、この新たな選択肢は、いずれも 「雇用」 ではなく各人がキャリアにオーナーシップを持って 「独立」 して働くことを支援することを求める内容です。

これからの企業のキャリア支援もこの方向性を踏まえたものにしていく必要があります。

シニア層こそ必要なキャリア研修


前号で「シニア世代には戦力として従来以上にイキイキと働いてもらわなければ企業の業績向上はあり得ない」 と指摘しました。

シニア層がモチベーションを落とすタイミングとして、①役職定年(50歳~55歳の企業が多い)と②定年再雇用の大きな2つのタイミングがありますが、特に役職定年制度については、50歳代に役職を解かれると給与が大幅に下がり、仕事に対するモチベーションが低下するきっかけになりがちです。

定年後研究所(東京・港)とニッセイ基礎研究所による共同研究の試算では、50歳代が役職定年でやる気を失うために生じる経済的な損失は、年に約1兆5000億円にのぼると試算されています。シニア層の活性化は一企業のみならず日本経済の浮沈を左右する重要課題になっているのです。

従来は、企業も層別研修のメインはこれから管理職になる若手中心で「終わった人」であるシニア層にはあまり積極的に人財育成に取り組んできませんでしたが、これからはそうはいきません。

次回からは、「シニアに対する今後のキャリアデザイン研修を考える」というテーマでシニア層に対するキャリア研修について考えてみたいと思います。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?