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コンビニ人間 村田沙耶香

学生時代、コンビニで夜勤のアルバイトをしてたことがあります。

繁華街から離れたわりと静かな店でした。

静かといえども、明らかにキマッた状態のお客さんが来たり、酔った中学生達がタバコ買いにきたり、事件はたくさんあって面白かったなー。

ある晩、着物姿のとある相撲力士のお客さんがタクシーで乗り付けられました。
あれは食事帰りなのかなー?でも地方場所中に食事なんていく?
なんて思いつつも、僕は初めて生の力士をみて内心大興奮。

カゴをもってしばらく店の中を見て回る力士さん。
なに買うんやろー!?って僕はもうわくわく。
ほかのお客さんのレジは全然集中できひん。

なんとかタイミングよく僕の方のレジに来てくれた!
よっしゃー!

わくわくしながらカゴを見ると、入ってるのはアイスのピノ。
しかもピノだけ。

…ピノて。

サイズ感。
ちっさすぎやろ。
こんなんでええんかい。
もっとでかいん行ってくれよ。

ホテルかえって食べるんかなーって思ったらかわいくてかわいくて。

しばらくの間アルバイトネタとして使わせて頂きました。



そんなコンビニバイトで一度だけお客さんに怒られた。
コンビニバイトで怒られたことは後にも先にもこの1回だけなので、強烈に印象に残っています。
なんかイライラして高圧的なおばさんのお客さん。

「にいちゃん愛想わるいなー、感じ悪いで。」
「もっとニコーってやるやろ普通。」

おもわずポカン。

いや、なにが普通やねん。
普通、誰も深夜のコンビニバイトごときに愛想求めてないでしょ。
しかもほかのお客さんにも、愛想はこんなもんやし。
ほかの深夜バイトみててもこんなもんやし。
普通でしょ。普通。


でも待てよ。普通ってなに。



読みました。

ん-ちょっと気持ち悪かった。
面白いのは面白いけど、何とも表現しがたい気持ちの悪さがあります。

「普通」とは何か?
現代の実存を軽やかに問う第155回芥川賞受賞作

36歳未婚、彼氏なし。コンビニのバイト歴18年目の古倉恵子。
日々コンビニ食を食べ、夢の中でもレジを打ち、
「店員」でいるときのみ世界の歯車になれる――。

「いらっしゃいませー!!」
お客様がたてる音に負けじと、今日も声を張り上げる。

ある日、婚活目的の新入り男性・白羽がやってきて、
そんなコンビニ的生き方は恥ずかしい、と突きつけられるが……。

累計92万部突破&20カ国語に翻訳決定。
世界各国でベストセラーの話題の書。

解説・中村文則
amazon 内容紹介

「気持ち悪い」って表現もちゃんとハマってるわけじゃないけど、この感覚はなんて言ったらいいんでしょう。

ニューヨーク屋敷の感想で先に「気持ち悪い」って言ってるのを聞いたからそう思うのか、よい表現が見つかりません。


ブックオフで110円で買ったら、色んなとこに線が引いてありました。
前の読み主はここが刺さったんかーって思うとそれも面白かったです。

これはこれでアリ。



とにかく普通っぽくあろうとして、徹底して他人の真似をする主人公。

今の「私」を形成しているのはほとんど私のそばにいる人たちだ。
ー略ー
過去のほかの人たちから吸収したもので構成されている。
特に喋り方に関しては身近な人たちのものが伝染していて、今は泉さんと菅原さんをミックスさせたものが私の喋り方になっている。
ー略ー
伝染し合いながら、私たちは人間であることを保ち続けているのだと思う。
コンビニ人間 より

これは分かるわー。
違いはそれを自覚しているかどうかで、割とみんなそうなんじゃないかなと思います。

僕はめちゃくちゃそうです。

喋り方なんてほんとにすぐ人に影響されるし、話す人のリズムに合わせちゃう。
かっこいいなと思う人の喋り方を真似したり、発言内容もわりと人の受け売りだったり。

そんなもんだよね?


そして主人公は、友達に以前会った時と雰囲気が変わったことを指摘され、考えます。

だって、私の摂取する「世界」は入れ替わっているから。
コンビニ人間 より

「摂取する」って表現がなんかいい。
そうだよねー。
旧友と久しぶりに会うと、変わった姿に驚いたり、変わらないところを懐かしくおもったりするけど。
人が変わるのは、摂取する世界が変わるから。超納得。


ほかのひとの感想も読みました、おもしろかった!

https://note.com/irino_irino/n/nf756e628710d


本作155回芥川賞受賞作だそうです。
恥ずかしながら、文学賞に疎くて。
これを機に、なにがあるのか、読んだことあるのか、いろいろと頭の中を整理しようと思います。

この記事では芥川賞のメモ。

芥川賞
昔の対象は、無名あるいは新人作家、今はそうでもない。
半年に1回。W受賞の年もある。
短編、中編がメイン。
発表は7月と1月。

2010年代
第143回(2010年上半期) - 赤染晶子「乙女の密告」
第144回(2010年下半期) - 朝吹真理子「きことわ」、西村賢太「苦役列車」
第145回(2011年上半期) - 該当作品なし
第146回(2011年下半期)- 円城塔「道化師の蝶」、田中慎弥「共喰い」
第147回(2012年上半期)- 鹿島田真希「冥土めぐり」
第148回(2012年下半期)- 黒田夏子「abさんご」
第149回(2013年上半期)- 藤野可織「爪と目」
第150回(2013年下半期)- 小山田浩子「穴」
第151回(2014年上半期)- 柴崎友香「春の庭」
第152回(2014年下半期)- 小野正嗣「九年前の祈り」
第153回(2015年上半期)- 羽田圭介「スクラップ・アンド・ビルド」、又吉直樹「火花」
第154回(2015年下半期)- 滝口悠生「死んでいない者」、本谷有希子「異類婚姻譚」
第155回(2016年上半期)- 村田沙耶香「コンビニ人間」
第156回(2016年下半期)- 山下澄人「しんせかい」
第157回(2017年上半期)- 沼田真佑「影裏」
第158回(2017年下半期)- 石井遊佳「百年泥」、若竹千佐子「おらおらでひとりいぐも」
第159回(2018年上半期)- 高橋弘希「送り火」
第160回(2018年下半期)- 上田岳弘「ニムロッド」、町屋良平「1R1分34秒」
第161回(2019年上半期)- 今村夏子「むらさきのスカートの女」
第162回(2019年下半期)- 古川真人「背高泡立草」
2020年代
第163回(2020年上半期)- 高山羽根子「首里の馬」、遠野遥「破局」
第164回(2020年下半期)- 宇佐見りん「推し、燃ゆ」
第165回(2021年上半期)- 石沢麻依「貝に続く場所にて」、李琴峰「彼岸花が咲く島」
第166回(2021年下半期)- 砂川文次「ブラックボックス」
第167回(2022年上半期)- 高瀬隼子「おいしいごはんが食べられますように」

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%8A%A5%E5%B7%9D%E9%BE%8D%E4%B9%8B%E4%BB%8B%E8%B3%9E

勉強になりました!

以上。

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