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コンビニ人間

今朝、読み始めたら止まらなくなって、仕事を始めなくちゃいけないギリギリまで読んでしまった。
以下、ネタバレあり。

こちらで読んで、村田紗耶香さんに興味を持って。
この時はまだ、コンビニで実際に働いてたっていう。
それと、コンビニで働いていた時に、突然、客に抱き着かれたけども、自分が騒いじゃうとセクハラとか、そういう風になっちゃうから、じっと我慢した、みたいなエピソードがあって、もー-、ぶっ飛んでる!
と、作家のご本人に興味を持ったところからなのだけど、まずは本の感想。

一番最初、やっぱり、ご本人が実際に働いていたから書けるであろう、コンビニ店内の様子の描写。
書き出しの一文

コンビニエンスストアは、音で満ちている。

コンビニ人間

上からで申し訳ないけど、秀逸。
コンビニが音で満ちてるなんて、思ったことない。
そして、音からコンビニとコンビニにいるお客様の様子を敏感に感じ取る。
それと、繰り返される、コンビニの中の代謝。
店長が変わり、商品が入れ替わり、そして、体の中の水も二週間ほどで入れ替わるという、自分とコンビニとの類似性。

そして、「異物は排除される」ということ。
突然、他の客に指導しだすおかしな客。
「コンビニは強制的に正常化される場所だから、あなたなんて、すぐに修復されてしまいますよ。」
という、心の中の言葉。
でもこれは、コンビニの中だけの話じゃなくて、日本の社会、なのか、どこの国に行ってもそうなのか。
本当に、多様性なんて言いながら、「正常」な人たちに異物は削除される。
もしくは、異物があっても、見て見ぬふりで無視される。

ここからは、私の感想。
自分の想像が及ばない人には、恐怖を感じる。
だから、積極的に関わらないようにする。
そして、このコンビニのバイトの人たち、たまに飲みに行っているのに、古倉恵子が誘われるのは、白羽と同棲しているのがバレてから。
それで、急に、こちら側の人間なんだな、と思ったのだろうし。
・・・しかし、やっぱり、私は白羽、すごー---く嫌いなタイプだな。

日本では、案外、憎めない、という感想も多かったそうだけど。
でも、いるよなー、って。
自分が属しているコミュニティーを率先して貶める人。
この、白羽、作中で、コンビニなんて底辺の奴らばかり、さらに、雇われ店長が負け組だ、と。
どの口が言っているのか。
自分は、店長ですらない、バイトで借金しまくって、この先、住む家も無くなる。
ただ、強いオスが若くて美しいメスと子供を残す、というのは、太古の昔から、まぁ、事実。
そういや、現代、一夫一妻制というけれども、時間差で今も一夫多妻制だ、みたいな文章を前に読んで

荒川和久さん、多分、この人の文章だったわ、前に読んだのも。
だから、金があって魅力的な男性は、若い複数の女性と結婚するのだから、余計に、社会的に弱い男性は、どうしたって、恋愛相手を見つけるのも難しい。
まー、分かるんだよ。
主夫、って言葉もあるけれど、まだまだ一般的ではないし、男性の生きづらさ、男性学って呼ぶのかな。
そこらへんについて、田中俊之さんとジェーン・スーさんの対談を、昔読んだけれども。

また最近、対談されていらっしゃる。
あとで読もう。
まー、とにかく、生きづらさは、大小の違いこそあれ、それぞれが引き受けているものなのに、まるで、自分には過失がないみたいに、自分だけが被害者で、すべて世の中が悪いみたいに言う白羽には、みじんも同情を感じない。

だから、主人公の古倉さんは、それでもエライと思うんだよな。
生きづらい中で、どうにか、社会から排除されないように、血のにじむような努力をして生きてる。
それが、コンビニ店員になる、ということで。
そして、実家に寄り付かない理由も、この小説の中では詳しく書かれてなかったのだけれども、wikiなり村田さんのインタビュー見たら、なるほど、と。
親の価値観を押し付けてくる家に帰りたがる子どもなんていない。
まして、その親の価値観に従わなかったわけだから、居心地が良いわけない。

いやー、面白かった。
2,3時間あれば一気に読めるし、読書の秋の一冊におすすめ(ネタバレしといて、、)

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