研究テーマ・目標
従来、「宗教」と「空間」とは双方主に異なる研究分野について取り扱われており、前者は宗教学や文化人類学の分野から、後者は都市工学建築学、空間社会学などからアプローチされてきた。本研究は、従来まで文化人類学、宗教学などの専門分野とされてきた宗教、宗教性やスピリチュアルなどのテーマについて、都市や空間との関係から再定義するものであり、上記で揚げた異なる研究分野を横断する学際的な研究を可能にする。
現代社会の精神性や宗教性というテーマについて都市空間や生活空間などとの関わりから新たな位置づけと評価を行うことによって、実践的な面でも、今後の都市計画や街づくり、建築様式について検討する際にも重要な要素を提供することができると考える。
特に京都は寺や神社などの宗教施設のみならず道祖神やスピリチュアルスポットなどが多数存在しており、現代の生活空間における宗教性を多分野的、多面的な視点から研究するために理想的なフィールドであるといえる。また、近年イスラーム教徒や海外からの移住者も増加しており、日常生活、日常空間において礼拝やその他の宗教実践を行うことを常とする外国人居住者のインテグレーションを考える上で、「空間」という分析軸に焦点をあてる本研究のアプローチは大きな意義がある。
研究テーマ
各研究担当者がそれぞれの研究分野事例研究についてテーマを設定し研究を進めると同時に、以下の共通テーマについて合同で意見交換を行い、明らかにする。
対象地域の公共空間(路上、広場、公園など)における宗教実践や宗教運動について、空間と現代社会との関わりから明らかにする。
寺、モスクや教会などの宗教施設、宗教建築物の現代社会における役割や利用する人々に関する研究。観光資源、文化資源としての宗教性という側面から分析を進める。
個人の日常的な宗教実践やスピリチュアリティの実践などを通じた身体表現や実践とそれが行われる空間(公共空間、ドメスティックな空間を含む)での表象について。
それぞれの社会におけるマイノリティーによる「異文化」としての宗教実践とそれが行われる空間、現地の文化との関連についての分析(日本におけるムスリムコミュニティー、アフリカにおける真光や天理教についてなど)。
その他、宗教性と空間について明らかにする理論構築や分析方法、アジア・アフリカからの新たな視点に関する理論的なアプローチ。
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