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グロース株か、それともバリュー株か。

人気者を買うか、一見地味でもポテンシャルを買うか。

 以前、全世界株か米国株のどちらが良いのか論争に対する私なりの見解を記したが、それと同じくらい永遠に決着のつかないテーマとして、成長のグロース株か、割安のバリュー株か論争が挙げられる。

 こちらに関しては、私がトレンド転換する以前から根っからのバリュー推しであるため、できるだけ中立と言うよりもバリュー贔屓な内容に偏ってしまうと思われるので、予めご了承いただきたい。

 個人的にグロース株投資とバリュー株投資とでは、同じアクティブ運用であっても、求められるスキルが異なるため、個人の性格でも向き不向きが分かれるのではないかと言うのが、これと言った根拠のない持論である。

 私は昔から普遍性を嫌う天の邪鬼で捻くれている性分であったが故に、長いものに巻かれることも、多数派だけを理由にそちらになびくようなこともなかった。

 そのため、集団内での人気者とその取り巻きには属すことなく、普通ではないコミュニティに片足だけ突っ込んでいる、クセは強いのに何故か掴みどころがない変わり者不思議ちゃん的位置付けで、多数派が敬遠しがちな、極端なキャラの人と仲良くなりがちな傾向がある。

 そこで感じたのは、クセの強い人ほど他人とは違う「何か」が、ピンポイントで突出している割合が高いのに、その凄さをほとんどの人が把握できていない点である。

 今思えばこれは、潜在能力が高いかも知れないにも関わらず、不人気で周囲が見向きもしないが故に評価が低く、結果として割安な状態で放置されているバリュー銘柄に投資するスタイルそのものでないかと、最近になって思うようになった。

投資の基本に忠実ならバリュー。

 投資の趣旨は、自分のお金や時間、労力を投じて、それよりも大きなリターンを得ることである。金融投資でのリターンは実利であり、利益を得るには「安く買って高く売る」が基本である。

 安く買う観点では、グロース株は不利である。期待の成長企業は人気であり誰もが欲しいと思っているため、多くの投資家が虎視眈々とチャートを眺めていて極端に割安とはならない。

 また、買いたいと思う人が多いと、例え今は会社の実態や本質的な価値よりも割高でも、将来的な価値を折り込めば妥当な水準だと思い込み、株価が欲しいと思う人が居なくなるまで上昇し続ける傾向がある。

 つまり、グロース株は一時期のポケモンカード同様に、「高く買って、もっと高く売る」ことでしか利益を得るチャンスがなく、それも高値でも欲しい人が居なくなるまでの、所謂チューリップバブル状態であるため、相場感が掴みづらいと言った特徴が挙げられる。

 壮大なババ抜きで、運悪く最期にババを引いてしまうと、一気に損失が膨らむリスクがあることは、グロースからバリューにトレンド転換したとされている過去半年間の、ナスダック総合指数の下落幅を見れば明白である。そしてここ数年イケイケだったレバナス勢は息をしていない。

 一方のバリュー株は、不人気故に割安で放置されているため、誰も見向きもしていない時はグロース株比であっけない位「安く買う」ことが出来る。とは言え、誰も欲しがっていない時期は「安く売る」ことしか出来ないため、短期では「安く買って安く売る」ことになる。

 しかし、長期保有しているうちに、何らかの拍子で価値が見直される時が来たりする。来なかったりもする。その際に、得られるインカム5年分〜の利益が出るくらい、高値になっていると感じたら、そのタイミングで売ることで「安く買って高く売る」が成立するのである。

バフェットの名言。

 投資の神様とも称されるウォーレン・バフェットさんは、バリュー投資家で「今日や明日、来月に株価が上がろうが下がろうが、私にはどうでもいいのです。」の名言がある。

 これは、未来の株価がどうなるのかは予測不能だが、現在の株価が割安か否かはある程度判断できるからこそ、短期での価格変動はどうでも良く、いつか価値が見直されるその時まで保有し続けていれば良いと考えているからではないだろうか。

勝つことより、負けないことが重要。

 それに、投資の世界で最もトクをするのは、市場に居続けてアインシュタインが人類最大の発明と称賛した複利の恩恵を受け続けることである。バフェットさんも運用期間は永遠と発言していることからも、これは真理である。

 市場に居続けるのは、言うは易く行うは難し。大暴落の際に多額の含み損を抱えた状態が長く続けば続くほど、自身の投資方針に疑念を抱いて、最悪なタイミングで退場しかねないが、これは相場が好調な時に、聞いたり考えてみても理解できない部分である。

 ボラティリティの高い傾向にあるグロース株であれば尚のこと、元が高く買っている分、大損するリスクも相応に高いのである。また成長企業故、配当する金が有るくらいなら、事業投資に使って成長を加速させたい思惑から、配当が出なかったり、少額である場合が多く、暴落時にキャピタルロスで無配となると心理的にはかなりきついと思われる。

 それに比べてバリュー株は元々が割安で放置されている、言わば安定した低空飛行のため、市場が暴落して冷え込んでいる時であっても、下落幅が軽微だったりする。

 割安故に高配当だったりするので、持っている限り配当と言う名の確定益で含み損を補填したり、再投資で買い増す種銭にもなる。相場全体が冷え込んでいる時にキャッシュフローを生み出してくれる、バリュー株のありがたみは、長期投資を行っている人ほど理解しているのではないだろうか。

流行に乗るか、信念を貫くか。

 2018年からの3年間は、米国でグロース株が持て囃されていた時期で、この頃は投資家心理としてグロース株が正義、バリュー株はオワコン的な風潮だった。

 本記事でグロース株を酷評しておきながらも、S&P500指数に連動するインデックスファンドを、日本の高配当株と同額程度積み立てていたため、実はグロース株の恩恵も多分に受けていた。

 特に2019〜21年の3年間は、毎年2割近いリターンを叩き出す米国株式を横目に、年利4%前後の配当金と優待を受け取っていた日本株との落差が激しく、日本株用の種銭をS&P500に突っ込めばもっと利益が出るのではないかと言う誘惑に何度も負けそうになったが、最初に決めた円建て・アクティブ運用・バリュー、ドル建て・インデックス運用・グロース(加重平均的に)を半々で積み上げる自分との約束を守り続けた。

 結果として、疫病による暴落が発生した際に、バリュー株の方が下落幅が小さく、配当金も出たことから落ちるナイフを拾うことが出来たものの、運用効率重視で分配金再投資型のS&P500インデックス一本だったら、一瞬とは言え年収以上の時価が変動していた可能性もあり、大バーゲンセールで買い増しする気にはならなかったかも知れない。

 これが個人の性格から、グロース株とバリュー株の向き不向きが分かれると言った根拠のない持論である。今はバリュー株にトレンドが転換しているため、この記事も受け入れられ易いかも知れないが、再度グロース株にトレンド転換した際に、バリュー株を貫ける人は半分くらいだろう。

 もし、生涯バリュー投資家の信念を貫いて、長期に渡って利益を出し続けている人が居たら、いつか乾杯したいと思う今日このごろである。


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