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最近の金融経済動向(2023年7月)


円安で日本はスタグフレーションに?

 昨年に150円台を記録した勢いで再び円安が加速している。先月末に145円台を付け、その後は一旦、政府の為替介入牽制や、イールドカーブコントロール(YCC)の修正可能性をブルームバーグが報じたことから、一時138円台まで円高方向に触れたかと思えば、141円台に向かうなど乱高下している。

 この背景にあるのは日米の金利差であり、YCCがなかなか修正できないのは日本の国力低下と見るのが妥当だろう。

 利上げを行う=10年物国債の金利上昇=住宅ローンの固定金利が上昇することを意味するため、これまでの異次元金融緩和でボコボコにされていた、銀行だけは助かるかも知れない。

 しかし、住宅を購入する消費者や、売買を仲介する不動産業。家電や家具のメーカーや小売店は、消費が冷え込むことで大打撃となる可能性が高く、日本経済においてメリットよりもデメリットの方が上回ると判断して、修正できないのだろう。

 とはいえ、その影響が円安であり、原材料価格の高騰、すなわちコストプッシュ型のインフレが生じている訳で、最近のマスメディアではプロパガンダなのか知らないが、ここ30年のデフレ脳から脱却して、インフレ脳に切り替えよ的な風潮が見受けられる。

 とはいえ、パンピーの賃金は物価上昇以上に上がっている訳でなく、単なるスタグフレーションの域を出ず、下手したら今年のような賃上げは一過性のもので、可処分所得は増えず、モノの値段が上がって、むしろ買えるモノが以前よりも少なくなって終わる可能性すらある。

 つまりYCCを修正しようがしまいが、同じような未来を辿る可能性が高く、それが急激に変わるのか、徐々に悪化していくのかの違いでしかないのかも知れない。そう考えると、保有資産の半分は外貨建てで持っていた方が良いと思うのは必然だろう。

日米のCPIが逆転。

 先述の円安の影響を別角度から見た指標のひとつが、消費者物価指数(CPI)と言えるだろう。

 今の物価高はコストプッシュ型、つまり円安で輸入する原材料のコストが上昇し、結果として製造原価が釣り上がっているから、それを販売価格に転嫁しているに過ぎず、企業側は大衆が想像するほど値上げでボロ儲けしている訳でもないのが中央値的なシナリオと言えるだろう。

 そんな中で政府主導で賃上げ圧力を掛けているものの、無い袖は振れないため、今年の春闘で財務的に無理をして賃上げした企業は、その反動が翌年以降に業績悪化として現れる可能性が高い。

 そうなると「雇用を守るため」と言う大義名分から賃上げを渋る、これまでの失われた30年間の常套句に逆戻りするが、その間にも国力が低下しているのだから、為替レートは元に戻らない可能性が高い。

 資源が豊富で自給自足できる国ならまだしも、日本の食料自給率はカロリーベースで38%と言われており、工業製品に必要な原材料や、石油が湧いて出てくる土地でもないため、輸入に頼らざるを得ない側面は否定できない。

 だからこそインフレでジリジリと貧しくなったところで、別に多くの日本企業は儲かる訳でもなく、以前よりも割高になったモノに支払ったお金は、為替と海外に消えていく。CPIの逆転はそのゴングが鳴ったに過ぎないのかも知れない。

日銀金融政策決定会合。

 FOMCは市場の予想通りの展開となり、利上げが打ち止めとなる期待感からダウ平均が36年振りの13連騰を記録したが、微増を重ねているだけで、イメージするような連騰とは程遠い。

 そんな中で日銀が28日にYCCを0.5%から、市場に任せて1%までは許容する利上げの方針を示したことから、円高方向に触れ、日本株は下落しながらも、終場に持ち直して微減で住んだ印象だった。

 利上げそのものは想定外ではないものの、意外と言えば意外な展開で、先述した日本人あるあるの、緩和継続で円安地獄に陥り、いつまでも先送りすることによって、徐々に悪化していく展開を、市場関係者ほど予測していたが故に、発表直後の意外性がチャートの下落に現れていたように思える。

 日本経済にブレーキをかけるリスクを踏まえた上で、長期国債の利回りが1%を超えるようであれば指値オペを入れると、限定条件付きで市場任せにすると決めたのは、新総裁の勇気ある決定のようにも捉えられる。

 個人的にも望み薄ではあったものの、利上げの可能性を想定して、円高に傾くことで恩恵を受けると思われる割安株を、今年に入ってから何銘柄か仕込んでいるだけでなく、米国の逆イールドが1年も継続していることから景気後退懸念で現金を厚めに確保している。

 円安に触れようが、円高に触れようが、株高に触れようが、株安に触れようが、爆死しない程度のポジションを取るよう心掛けており、そもそも今年に入ってからの買い増しは受取配当+リバランスによる銘柄組み換えが主で、入金した額は割合にして資産総額の1〜2%と軽微であり、利上げで積極的に買い増せる局面が来ることを期待する今日この頃である。


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