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モチベーションの保ち方。

イチロー選手に学ぶ。

 私は幼少期から身体が小柄で、同級生比でハンディキャップを負っていたこともあって、スポーツ全般が好きではない。プレイヤーとして楽しめなかった経験から、スポーツ観戦をする気にもならないため、スポーツに関して疎いどころか、ルールすら理解していないが、鈴木一郎さんが打率よりも安打数を重視していたことは知っている。

 それは、数字の累積がモチベーションを保つために重要な要素だからである。あまり詳しくないが、プロで四割打者はほとんど居ないため、偉業のような扱いになると聞いたことがある。打率の場合、挑戦した数だけ分母は増え、成功した時だけ分子が増える訳だから、失敗すると百分率は低下してしまう。

 そうなると、成功し続けている時は良いかも知れないが、成功している最中に一度でも失敗すると、百分率は低下してしまい、自身のコンディションと指標の数字が連動することになる。これではモチベーションを保てないし、裏を返すと、成功すればするほど失敗を恐れるようになり、偉業を達成した後ほど保守的となり、挑戦したくなくなる。

 これでは大衆が想像するような、プロスポーツ選手の理想像とは大きくかけ離れてしまい、構造上よろしくない。だからイチロー選手はヒットを打てば確実に積み上がり、数字が減少しない安打数を重要視していたのである。

 これは、スポーツに限った話ではなく、勉強でも、投資でも、継続することが重要な物事に対して、モチベーションを保ち続けるために、累積ほど有効なものはないだろう。

継続力は学歴をも塗り替える。

 私は高校生まで勉強嫌いで推移していたから、学校成績は並だった。それに、理数科目が他人より出来たところで、英語が全く出来なかったため、全ての科目を満遍なく得点しなければ良い大学には行けない、日本の教育システムとは相性が悪く、勉強からは距離を置きたかったことや、家庭の経済状況と相まって大学には進学しなかった。

 しかし、非大卒で社会に出ると、社会を支える上で重要な役割を担う割に、低賃金や失業のリスクを一手に背負うような、ブルーカラーな職種以外の選択肢が極端に少ないことに気付いた。転職しようにも学歴で弾かれる。

 そんな経験から自分に足りない大卒資格を補いつつ、社会に出て興味が湧いた、財テクに必要な経済周りの知識を体系的に学ぶために、通学部の真逆に位置する、入学はお金さえ払えば誰でも簡単に出来るが、卒業するのが難しい通信制大学の中から、英語が必修ではないところを選んで入学するに至った。

 高校までは試験の点数で減点主義での評価が絶対で、加算される要素がないから学習に対するモチベーションが保てなかったが、大学は卒業単位を積み上げる過程が可視化されているため、卒業率が通学制よりも圧倒的に低い通信制の大学で、本業と並行しながら、短大では入学して15ヶ月で卒業要件を満たすハイペース具合で、あとの9ヶ月間は学費納入と事務手続きさえ忘れなければ、何もしなくても卒業できる状態に漕ぎ着け、晴れて非大卒から抜け出す運びとなった。

 また、大学の科目と親和性が高いからと、社会人学生と並行して日商簿記2級を取得する際も、過去問や答案練習の際に、高校生までの減点方式ではなく、自分の中で得点を累積させるように工夫したため、例え難問や調子が悪くても、解けば解くほど点数が確実に積み上がるようにした。

 それが継続する原動力となり、当初予定した年3回ある統一試験まで待ちきれず、CBT方式のネット試験を模試感覚で受験して一発で合格したことからも、モチベーションを保ち継続することの重要性が身に染みた、貴重な経験となった。

 「小さなことを積み重ねることが、とんでもないところへ行くただ一つの道」はイチローさんの名言でもある。

資産形成も小さなことの積み重ね。

 これは資産運用も同様で、金銭的に余裕のない人ほど、信用取引で一か八かの大博打に賭けてしまったり、詐欺師の絶対に儲かるとか、バフェットもビックリな年率20%超の案件に惑わされ、暗号資産やNFTなどの、その時々で魅力的に映る新しいアセットに、中身もよく理解しないまま身銭を投じてしまう。

 資産運用で大切なのは、運用を長期に渡り継続し続け、アインシュタイン博士が人類最大級の発明と評した、複利の力を存分に発揮させることである。

 現に、投資の神様と持て囃されるバフェットさんは11歳から株券を購入しているが、フォーブスの長者番付にランクインしたのは56歳になってからで、現有資産の95%超は60代半ば以降に形成されたものであることからも、継続することの重要性が伺える。

 最適解としては、全世界または米国株式の、優良なインデックスファンドに長期間に渡り、積立投資をすることではあるが、これほどまでに単純だからこそ、途中で飽きたり、リスク許容度に見合わない額を投じてしまい、暴落時の含み損に耐えられず売却してしまうなど、何れにせよ継続し続けるのが最も難しいのがインデックス投資の課題である。

 幸か不幸か我々は日本人で、日本円を決済して生活していることから、運用資産の全てをドル建てで全世界または米国株式のインデックスファンドにするのは、いくら円がゴミ屑化しそうな円安とはいえ、為替リスクの面から好ましくない。

 そうなると、日本株と外国株を半々で運用するのが、バランスの良い投資方法と考えるが、日本株のインデックスファンドは、オルカンやS&P500ほど魅力的ではなく、個別で運用するのが望ましい。

 この逆境を逆手に取るのだ。外国株がインデックスファンドでほったらかし投資なら、日本株は手間のかかる個別で運用させることで、気を紛らわしてマンネリ化させず、個人で記録するのは累計配当金のみ。

 一株あたり配当や、配当利回りを基準にすると、減配や無配転落で数字が減少してしまい、モチベーションを下げる要因となるが、今まで受け取ってきた配当金の累計であれば、絶対に減少しないし、保有し続ける限り数字が増加する。受け取った金額を足していくだけだから、高度なツールもアプリも不要。

 そうして固定費削減による倹約、年率4%目安の堅実な運用、転職で可処分所得・時間を増加させるなど、地道に積み上げた結果が、金融広報中央委員会の統計上、20代単身者の上位0.8%に位置する保有資産額を築くに至った。

 これも一夜にして小金持ちの仲間入りをした類の話ではなく、小さなことの積み重ねによるもので、資産は短期的に変動するものの、時間を掛けて増加させたため、一瞬で全てを失うような失態は今の所犯していないし、株式、債券などの伝統的な投資商品以外には懐疑的である。

 また、いつか騙されるかも知れないという前提のもとで、風が語りかける、うまい、うますぎる話には必ずウラがあると逐一疑っては、人が離れていく今日この頃である。


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