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インフレで年功序列に綻びが...


既存の社員より高給な新入社員?

 昨今の少子化により、若者の絶対数が減少傾向にあること。コロナ禍での人減らしのツケが、今になって顕在化したこと。そして物価高。この三重苦により、企業は人材確保のために、否応にも賃上げしなければならない状況が続いている。

 私が経験した鉄道業界では、少なくとも、失われた30年のデフレ経済下では、据え置きが当たり前で、ベースアップを交渉したところで、棄却されるのが常だった。

 しかし、アベノミクス以降、最低賃金がジリジリと引き上げられ、時給換算で最賃を下回る体たらくとなった際に、致し方なくベースアップに踏み切り、先輩方が実に10年振りみたいな反応だったことは記憶している。

 そもそも、鉄道員など典型的な労働集約型産業であり、初任給が安い。そして、人口減少時代や、ICT化により鉄道事業の先行きが暗く、斜陽産業であることから、長く勤めても定期昇給は雀の涙となっている。

 そんな状況下で、最もベースアップの恩恵を受けるのは新入社員に他ならず、初任給が一気に5,000円引き上げられるだけで、既存の社員が何年か勤続して引き上げた定期昇給分を凌駕してしまう。

 流石に上場企業の体を成しているからか、給与テーブルが厳格に定められていたため、既存の社員よりも高給な新入社員が現れることはなかったが、それでも勤続年数が近い先輩と、差にして数百円みたいな状況は見てきた。

 そのため、昨今のインフレや人材確保に対処するために、新卒の待遇ばかりを引き上げて、既存の社員を蔑ろにすれば、年功序列の根幹が覆る事態は十分考えられるわけで、もはや、一社に長く勤めれば、相応に報われるような時代ではない。

単純作業者に給与交渉の余地などない?

 アメリカンコンプレックスを有する、アメリカ様万歳な日本人にありがちな対比として、上司と給与交渉しないことが挙げられる。

 とはいえ、私の古巣である電鉄会社のように、基本給がいくらで、入社時の学歴に応じていくら加算、勤続年数に応じていくら加算、年齢に応じていくら加算、職級に応じていくら加算…というように、給与規定とセットで、テーブルがガチガチに定められているお堅い日系企業の場合、交渉の余地がなく、嫌なら辞める以外の選択肢が残されていないケースは往々にしてある。

 一応、私も在職中に給与アップの方法がないか、現場でそれなりに偉い人に確認を取ったが、給与交渉など想定外みたいな反応で、社内試験で職級を上げる以外にはなさそうな返答だった。

 そもそも、典型的なシフトワーカーである以上、個々人のスキルが貯まる性質の仕事など与えられる訳もなく、誰がやっても同じような成果しか期待できない単純作業である以上、社会主義的なシステムに則った、等しく貧しい給与テーブルが最も不満が出ないのは自明の理だろう。

 それ故に、交渉した一人の給与を個別で調整するくらいなら、嫌なら辞めて貰って、代わりを補充した方が経営判断としては合理的なのだろう。誰にでもできる単純作業に従事した時点で、端から給与交渉の余地などないのが現実である。

 そこまで深読みした私は、安月給に嫌気がさしたので、水面下で転職活動を行い、静かに金払いの良い同業他社への鞍替えを選んだ。

二度目の新卒カードという名のリセマラ

 とはいえ、私は金払いを優先した結果、場違いな風土の職場に身を置く羽目になり、諸々のストレスが祟って20代半ばで身体が壊れ、労働者としては報われない結末を迎え、身を以て「金は命より重い!」を体現したことは、熱心な読者であれば、耳タコレベルで読んだ話だろう。

 そうして、無類の金好きでありながら、むしろ、金好きだからこそ、お金を手放すことに抵抗があり、元々生活レベルを引き上げる発想が皆無だったことから生活費は安く、力こそパワーな入金力で20代のうちに老後資金問題が解決。

 その資金を運用する形で、別に働かなくても生きていける状態を構築できているのは、不幸中の幸いである。

 日頃から「主に労働はクソである」と記していることからも、働こうと言う気は微塵にもないのだが、インフレで年功序列に綻びが生じているメシウマな状況下で、おとなしく傍観するだけなのも勿体無いと思ってしまう、野次馬根性全開な自分も居る。

 何を隠そう、私は株式投資で役立つ知識を、体系的に学んだ暁に、学歴ロンダリングまで可能な通信制大学をじきに卒業することで、副産物的に人生で二度目の新卒カードが切れる、ちょっと何言ってるかわかんない人種なのだ。

 「主に労働はクソである」と今でも思ってはいるものの、労働集約型産業における、シフトワーカーの経験だけを以て、そう結論付けるのは時期尚早のようにも思え、事務職のような日勤の頭脳労働でも同じ結論となるのか、怖いもの見たさはどこかにある。

 別に保有資産的には働かなくても生きていけるであろう状態なら、新卒カードを切るリスクはないに等しい。

 むしろ、人生で2度目の新卒カードを切っている全く以て想定外な人間を、社会がどこまで受容するのかを、話のネタを作るために、リセットマラソン感覚で嫌がらせ的に試している節すらある。

 そうして高卒で社会に出て、おとなしく一社で勤続している奴よりも、途中で転職したり、大卒にロンダリングしたりと、端から一社に長く勤めるどころか、そもそも働く気がなくフラフラしている奴の方が、良い時期に就職したという理由だけで、蓋を開けてみたら高給取りだったという珍事が生じれば、最高のショーだと思わんかね。見ろ、社畜がゴ○のようだ!うわなにをするや目がぁぁぁぁあっ


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