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日本版サブプライムローン。

彷彿とさせるフラット50。

 8月1日、アルヒ(7198)がフラット50の取り扱いを開始することを発表した。35年もの長期にわたる固定金利型住宅ローンのフラット35ですら、マイナス複利の影響が凄まじいのに、50年という半世紀に渡り借入を行うことへのインパクトは凄まじい。

 2022年3月期の決算説明資料の25pには、フラット35が中~高所得者層向けの金融商品であるのに対して、フラット50は中所得層以下に向けた金融商品であることが明記されていることからも、住宅価格が高騰して、35年で割賦しても支払えない様な層をターゲットにしていることは間違いない。

 早い話が、今までの35年ローンでは到底返せっこない価格帯の住宅を低所得者層に買わせるための金融商品で、日本版サブプライムローンと言える。ご存知の通り、米国ではこれを証券化したことや住宅バブルの崩壊が引き金となり、リーマンショックに発展し、リーマン・ブラザーズは経営破綻した。

 フラット50を取り扱う金融機関は今のところ少数だが、どこの会社でも50年ローンを取り扱うようになり、50年ローンが当たり前となってきたら、日本もいよいよ市場がクラッシュする予兆だと私は考え、打撃が大きそうな不動産や金融セクターの投資割合を減らすことを考えるだろう。ある意味、サププライムローンを彷彿とさせる商品である。

 因みに、契約者が亡くなれば団信によって残額は弁済されることから、50歳で借り入れ、100歳で完済するような使い方をしようと頭を働かせる方も居ると思うが、80歳までに返済することが条件となっているため、実質的にフラット50を50年フルで利用できるのは30歳までである。

 何も50年ぴったりで借りなければならない仕組みではないため、35歳なら45年ローン、40歳なら40年ローンといった具合になる。日本人男性の平均寿命が81歳とされているから、早死にすることに賭けるなら遺族は若干得をするが、どちらにしても自分が得をすることはない。

情弱はカモにされる。

 前々から記しているように、今の若者世代は、両親や祖父母世代の新築信仰が強かったことや、少子化で兄弟が居なかったり少ないことから、住宅は買わなくても相続で手に入り、リノベーションして住むのが、近未来のデファクトスタンダードになるのではないかと予想している。

 現に日本は少子高齢化で人口が毎年60万人ペースで減少し続けている。言い換えれば、毎年最大で60万軒規模の住宅が不要となるのである。特に地方の限界集落や離島では空き家問題が発生している地域も散見され、団塊世代が寿命を迎える頃合いの10年後からは、全国各地の地方部で同時多発的に空き家が発生し、今のペースで新築を立て続ければ、2040年には住宅の4割が空き家になると試算されている。いわゆる2040年問題である。

 しかし、そうなれば不動産業や住宅ローンの貸付を行う金融業や銀行は先細り苦しくなる。だから、これまで通り都市部に一極集中して、少し離れた郊外に新築戸建を購入する具合に、住宅の新陳代謝が行われた方が都合が良い。

 地方回帰やリノベーションで既存の住宅を長く使うことなど、それを生業にしている業者を除き望んでいない。だからこそ、低所得者層の若者に、返せるかも定かではないローンを組んで、新築一戸建てを買うように、マーケティングを駆使して誘導してくることだろう。

 「賃貸でお金を払っても何も残らないが、持ち家なら完済後に資産となる。今なら新築が賃貸と変わらない金額で手に入る。」これはもはや常套句である。冷静に考えれば、新築の時は綺麗な物件が賃貸と遜色ない金額で住めるかも知れないが、持ち家はその家に住み続けなければならない。隣人ガチャが外れた時も、持ち家は気軽に引っ越せないため地獄である。

 それに、50年ローンを組んだ場合、50年の長期に渡り新築時と同じ位の金額を返済し続けなければならない。賃貸で似たような築40年超のボロ物件なら、返済額よりも相当安く借りられるだろう。完済した頃にはボロ物件で借りては付かず資産にはならない。自分で住む分には問題ないが、固定資産税や賃貸なら不要な修繕費用も掛かり、タダ同然で住める訳ではない。

 金融リテラシーの低いような情報弱者は、業者のカモにされるだけだから、不動産で儲けようなどの下心は抑え、賃貸で甘んじるのが堅実だろう。

不動産はワンミスが命取りに。

 「金持ち父さん貧乏父さん」では、自分のポケットにキャッシュが入るものを「資産」、ポケットからキャッシュが出ていくものは「負債」と定義している。この定義からすれば、個人で購入する不動産の9割以上は負債ではないかと思う。

 新築の住宅価値は鍵を開けた瞬間に2~3割下落する、謎の新築プレミアムが価格に上乗せされている。だから、基本的には負債でしかないのだが、業者に資産と思い込まされて買わされている。そう思った上で、心を豊かにするための浪費と割り切った方が、晩年にこんなはずではなかったと思わずに済むだろう。

 投資物件だと思い込んで購入し、いざ売却すると借金だけが残ると判明し、売るに売れないなんてことはザラにある。最悪売れなければ自分が住むなんて考えが脳裏に浮かぶ時点で、投資物件としての魅力はないに等しい。不動産に精通している人で、業者とのパイプでもない限り、不動産には手を出さない方が無難だろう。

 市場そのものの規模が縮小している上、ワンミスで人生がハードモードになるのだから、個人的にはハイリスク、ミドルリターンである。リスクに見合ったリターンとは言い難い。とはいえ、銀行は株式を買うためのお金は貸してくれないが、不動産を買うためのお金なら貸してくれる。

 会社員や公務員の社会的信用を担保に、不動産投資を行うことでレバレッジが掛けられる利点があるから、上手く立ち振る舞えれば株式投資よりも早期に資産を形成することができるのは、紛れもない事実である。

 不動産の知識や情報がプロに負けないくらい有しており、扱いにも長けているのであれば不動産王も夢ではないが、私はレバレッジを掛けず、時間をかけてゆっくりじっくりと、株式と複利の力で資産形成する方が性に合っているため、不動産に手を出すつもりはない。


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