見出し画像

競合相手の存在を意識して戦略を練る


新卒採用、面接解禁日前にほぼ終幕

 6月から、来年度に入社予定となる新卒の、面接解禁日となっているらしいが、調べた限り、解禁日を守らないことによる罰則がないことから、民間企業は、ただでさえ少子化で母数が少ない新卒争奪戦と化した結果、面接解禁日前に、来年度入社の新卒採用は、ほぼほぼ終幕しているギャグみたいな展開となっていることが、地方新聞で取り上げられた。

 なぜ地方新聞で取り上げられるかといえば、都市部での就活が早期化することで、若者が都市部の大企業に拘束され、地方経済を支える中小企業に人材が流れてこないことへの当て付け的な側面が強いのだろう。

 とはいえ、売り手市場にも関わらず、未だに選ばれる側として下手に出ては、クソ真面目に就活をして、ルールを守らない大企業の言いなりになっては、労働力を安く買い叩かれている就活生も就活生だし、大企業の真似をして、優秀な人材を獲得しようとする中小企業も中小企業だと、現在、社会的なポジションを持たないドロップアウト組だからこそ思う節はある。

 企業の採用担当者は、猫も杓子も優秀な大卒を採りたいと思い、どこかの就活サイトが炎上したように、学歴フィルターを設けているくらいだ。

 しかし、そもそもの大学進学率は57%と、およそ半数の非大卒をバッサリ切り捨てている上、更におおよそ偏差値55以下の大学を切り捨てて、偏差値が上位25%くらいの大学に絞っている。

 つまり、大卒・非大卒全体の新卒を100とした時に、企業側は偏差値という単一の指標で、上位14%に位置する学生しか、端から眼中にないと言っているようなもので、これで新卒が採れない。人手不足だと言うのは、自業自得が過ぎるだろう。

学がないなら、高学歴の人と競合しない道を

 一方の就活生も同様の構図で、猫も杓子も「知名度」、「給料」、「正規雇用」、「世間体」の良い会社に入りたがる。

 しかし、その条件を概ね満たしているであろう、品川駅の社畜回廊を歩くサラリーマンが、「今日の仕事は、楽しみですか」の広告を見て、炎上するレベルの怒りを買ったことからも、これらの項目が、仕事を選ぶ上で重要視したところで、幸せな人生とは何ら関係がなさそうであることは窺える。

 そもそも、今の20代の肌感覚として、年功序列、終身雇用を前提としたキャリアプランなど、絵に描いた餅同然で端から思い描いていないため、一社に長く勤める概念そのものが希薄である。

 そして、入社1年以内でおよそ1割が離職し、3年以内離職率も、概ね3〜4割となっていることからも、必死になって就活したところで、就労して3年後には「会社辞めたい」とか「早くFIREしたい」とぼやきながら、ざっくり半分弱の確率で離職に至るのが現実なのだから、就活で希望した会社に入れるか否かに拘っても、大した意味をなさないだろう。

 むしろ、典型的な「知名度」、「給料」、「正規雇用」、「世間体」の良い大企業を狙おうとすると、同じ大卒なら、旧帝大、早慶上理、GMARCH辺りと同じフィールドで競合しなければならないのだから、学がない人間には分が悪いこと位、自分自身が最もよく分かっていることではないだろうか。

 高校受験の前に、高学歴社会という枠組みの中での己の立ち位置が、決して上流側ではないことを自覚した私は、工業高校で手に職を付けながら、それなりな企業の高卒現場採用をワンチャン狙うという、高学歴な人とは競合しない道を選び、結果として在学中に第二種電気工事士を取得して、保険をかけた上で電鉄会社に就職して、電車の運転免許も取得した。

開き直りが一概に悪とも言い切れない

 ここまで読み進めると、単なる工業高校生のサクセスストーリー感が出ているが、冒頭に「現在、社会的なポジションを持たないドロップアウト組」と記しているように、20代半ばで身体が壊れたのを口実に、現在は株トレーダー的な生き方をしている。

 就活を「ルールを守らない大企業の言いなりになっては、労働力を安く買い叩かれている」と揶揄したのも、労働集約型産業で低賃金でこき使われた結果、健康を損なった自分に対する戒めの意味合いが強い。

 名著である「DIE WITH ZERO」のロジックによれば、お金の価値を最大化できる年齢は、お金を扱う能力と、価値を引き出せる若さを鑑みて、26〜35歳らしいが、そのスタートラインを病気によって、出鼻を挫かれた身としては、かつてのような労働力の安売りをしたくないのが正直なところだ。

 通常、何かしらの不幸により、社会の枠組みのどん底まで落ちると、傷病手当金などの恩恵が受けられ、その給付が打ち切られる時期に社会復帰するのが通例である。

 しかし、私は後遺症とも捉えられる症状があることに加え、蓄財もしていたこと、ある種の怖いもの見たさもあって、資産の許す限り、無闇に社会復帰せず、開き直って社会的に落ちるところまで落ちる道を選んだ。

 高学歴エリートほど、失業=この世の終わり感を出すが、全然そんなことはないどころか、個人的には社畜時代の方が、この世の終わり感が強かった。

 最大で1年ちょっとのタイムラグはあるものの、失業者や低所得者などの条件を満たせば、国民年金は全額免除、住民税も非課税世帯、健康保険税も7割減免と、税金のことは殆ど考えなくて済むような制度設計となっている。

 そうして生きているだけで徴収されるペナルティを最小化して、生活コストを低廉に抑えられると、わざわざ条件の悪い求人に応募する必要もなければ、自営業者として、時間をかけて自分のビジネスを育てる選択肢も取れるだろう。

 こうしたドロップアウト組は、競合が少ないからこそ、昼間から飲んだくれては、月曜から夜ふかしの取材を受けて有名人になるみたいな、千載一遇の機会をものにできる側面もあり、開き直りが一概に悪とも言い切れないのが、この社会の面白いところではある。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?