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新NISAで高配当銘柄は買わない派。


再投資に非課税枠を消費する。

 2024年から新NISA制度に切り替わったことで、経済メディアやマネー雑誌で、高配当株投資の特集が組まれている肌感覚がある。

 確かに全世界株式(通称:オルカン)や、S&P 500をはじめとする米国株式ばかりに人気が集中してしまうと、日本円を売って外貨を買う流れとなり、円安傾向が加速する可能性がそれなりに高いと考えられるため、バランスを取って日本の高配当株を紹介しているのだろう。

 しかし、新NISAの成長投資枠の上限である240万円/年が埋められる資金が既にある人や、何が何でも定期的にインカムゲインが欲しい人でなければ、日本の高配当銘柄は課税口座で運用し、成長投資枠でも、つみたて投資枠で購入できる、分配金再投資型のインデックスファンドで運用するのが、現時点ではベストな選択ではないかと私は考える。

 というのも、同じ配当金が発生しても、個別銘柄をNISAで保有している場合は、非課税で分配金を受け取り、それから生活資金に充てるなり、再投資するなりを判断する。

 資産を長期で運用して、複利効果で雪だるま式に増やそうと考えている前提だと、個別株の場合は受け取った配当を原資に、NISAの非課税枠を消費する形となるが、分配金再投資型インデックスファンドであれば、ファンド内で勝手に再投資されて基準価額が上昇するため、NISAの非課税枠は消費されない。

 そのため、自分年金的な立ち位置で、定期的にインカムゲインが欲しい訳でなければ、再投資で非課税枠を消費しない、再投資型のインデックスファンドの方が、つみたて投資枠を限界まで活用する観点では理にかなっており、恐らく徴収される運用コストを差し引いても資金効率は良い。

たかが信託報酬。されど信託報酬。

 イメージとしては、上限である1,200万円に達した際に、高配当株投資で配当利回り4%の場合、年間配当48万円となるが、既にNISAの枠は埋まっているため、新規で運用することはできない。

 しかし、インデックスファンドであれば、同じ48万円の配当がファンド内で再投資されるため、基準価額が4%増え、1,248万円となる。

 勘の良い方はお気付きだと思うが、同じ48万円の利益でも、前者の個別株は毎年48万円の配当が定額で受け取れる単利なのに対して、分配金再投資型の投資信託は複利運用で、1年後に増えた48万円部分にも4%の利息が付く。

 そのため、2年後には1297.92万円と、配当金として受け取るよりも理論上19,200円リターンが多くなる。厳密には信託報酬(オルカンは0.05775%)が運用利回りから差し引かれるため、4%複利ではなく3.94225%複利となる。

 運用1年目は手数料が掛からず4%きっちり貰える個別株の配当が有利だが、それでも2年目には単利と比べてリターンが4,789円多く見込め、その差は10年、20年…と時間が経過すると共に開いていく。

 数字で記すと、いかに運用手数料は低水準に越したことはないかがお分かり頂けると思う。たかが信託報酬。されど信託報酬。銀行窓口で勧められる信託報酬1%のファンドだと、仮に運用成績が同じ年率4%でも、そこから1%差し引かれた3%複利に成り下がるのだから。

実効税率7.2%で高配当銘柄に投資妙味。

 つまり、1800万円の非課税枠が埋まる未来まで考えるなら、NISAの非課税枠はつみたても成長も、つみたて投資枠で購入できるインデックスファンドで埋めるのが、数理上は合理的であり、そこに日本の高配当株が入る余地はない。

 排他的に課税口座で運用する他ないが、それでは投資妙味がないと思った方は、日本株だけが確定申告で適用できる「配当控除」を活用するのが、現行制度では最適解だと個人的には考える。

 通常、株取引で利益が得られると、20.315%の税金を納める必要がある。口座開設時におすすめされる、特定口座(源泉徴収あり)を選択していると、利益(源泉)から天引き(徴収)されるため確定申告は不要となる。

 簿記の概念を知っていると理解しやすいが、そもそも配当金は「税引後当期純利益」→「剰余金の配当」の流れで仕訳されることから、企業が利益を出し、然るべき税金を納め、残った利益の何割かを株主に配当している訳である。

 既に企業が税金(法人税、住民税及び事業税)を納めているにも関わらず、そのお金の一部が株主の懐に入った瞬間に、また20.315%の税金が召し上げられる。つまり配当に関してはデフォルト設定だと二重に課税されている。

 これを是正するのが「配当控除」であり、確定申告によって個人の税率に置き換わり、所得税は−10%、住民税は−2.8%となる。(J-REITの”分配金”が配当控除の対象外なのは、出資者に利益の9割以上を還元することを条件に、法人側が非課税となるため。)

 所得税は課税所得が330万円(会社員の年収600万円目安)以下だと10%のため10−10=0%,つまり、源泉徴収された15.315%の所得税部分が、確定申告によって全額戻ってくる。

 住民税は7万円給付で話題の非課税世帯でもなければ、一律10%だから10−2.8=7.2%と、源泉徴収された5%では微妙に足りず、6月の税額切り替え時に2.2%増となる。

 これにより、日本の高配当株投資に限り、実効税率7.2%という、NISAの次に魅力的な環境が実現し、NISA口座でないが故に、損益通算も行える。一般的に投資信託よりもリスクが高いとされる個別株投資では、強力なメリットと言えるだろう。

 ただし、これはあくまでも課税所得が330万円以下の、しがないパンピー向けの戦略であって、上位21%に位置するハイスペリーマンは別の戦略を考える必要があるが、裏を返せば、8割弱の方に有効な戦略とも捉えられる。

 だから私はXperia現行の税制が維持される限り、新NISAで高配当銘柄は買わない派である。


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