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危機との向き合い方。

危機=危険+機会(好機)

 これは松下電器(現パナソニック)の創業者である松下幸之助さんの考え方である。

 生きていれば何度か危機に直面する。進学の失敗、就職の失敗、大きな病気や事故、離婚、愛する者の死。こんなはずではなかったと、いくら悔やんでも事実は変えられないし、心や身体の傷はそう簡単に癒えない。

 だから私は傷を無理矢理癒すようなことはせず、ありのままを受け入れられるときまでは、ただただ時間経過に身を委ねるようにしている。そして、人生を振り返った際に、自分が経験した危機は必要な要素のひとつだったと思えるように、これからをどのように生きていくかを、ゆっくりとで良いから、本心と向き合いながらじっくり、腹落ちするまで熟考して、それを実行するようにしている。

 もちろん、実行したところで思い通りには行かず、望んだ未来とは離れることもある。むしろ、離れることの方が多い。過去の自分が考え抜いた時とは、時代や前提条件が変わっていて、時代に最適化する過程で差異が生じるためである。

 そんな時は、過去の自分が考え抜いた方針に固着せず、流れに身を委ねた方が結果として上手くいく気がするのは私の経験則である。過去に一度熟考していれば、自分の本心とかけ離れるような選択は無意識下で行わなくなるので、時代に応じて考え方を変えたとしても、結果として芯はブレてない。逆に過去に考えた方針の全てを、時代に逆らってまで忠実に実行するのでは、単なる頑固者と変わらない。フットワークは軽い方が良い。

 さて、ここまで長々と危機に直面した時に、時間経過に身を委ねることに重きを置いているのは、機会が巡って来るまでは、どんなに足掻いても徒労で終わることが多いからである。人間はマグロではないのだから、動き続けなければ死に至る訳ではない。機会が来るその時まで、体力を温存しながら、じっと待つことも大切なのである。

21世紀らしからぬ、疫病の危機。

 最近の戦争によって影が薄い疫病も、2年前の今頃は、どれほどの毒性を有しているのかも、情報が十分ではなく、感染して命を落とす危険、後遺症を患う危険により、今までの行動様式が制限された。多くの人にとっては危機的状況だったと思われる。

 危険な状態が生まれたのと同時に、機会も生まれている。政府のお願いベースではあるものの、行動制限のお陰で無駄な宴会がなくなり、在宅時間が増加したことで、自分を見つめ直す機会が生まれた。

 私はこの機会を逃さなかった。すぐさま状況が類似していると言われていたスペイン風邪や香港かぜについて調べて、収束まで最低2年は要すると考え、2年間のうちに在宅で出来ることは何かを考えていた。

 そして、通信制の短期大学で短期大学士ではあるものの、大卒資格が取得できると考えて出願した。仮に仕事と学業の両立が辛くても、4年ではなく2年なら乗り切れる覚悟でいたし、案ずるより産むが易しと思ったなら、感染状況に応じて4年制大学の3年次に編入して、もう2年かけて学士を取得することも出来て、どちらにも転べると思ったからだ。

 結果は後者で、1年3ヶ月で卒業に必要な単位は修得。その2ヶ月後にも履修登録した科目を全て修了して、あとは卒業の手続きをして諸費用を納入するのみとなった。

 周囲が政府主体の旅行業や飲食業を潤すだけの二転三転した政策に翻弄される中、それらに見向きもせず愚直に単位を積み上げて、非大卒と言う学歴社会下でのサラリーマンには不利なレッテルを外すことに成功したのである。

 現在も疫病の状況がワクチンによって重症下リスクが低減されている以外、対して変わっている感がないため、3年次編入して学士を取得しようと思っている。

どっちも自分が正しいと思ってるよ。 戦争なんてそんなもんだよ。

 これはドラえもんの本質を突いた名言として有名である。

 執筆時点では東ヨーロッパにおいて戦争が続いている。私からすれば、これまで人類が築き上げていた平和の配当は一体何だったのかと思うくらい衝撃的な状況である。

 私はテレビを所有していないため、マスメディアでは2つの国の衝突している出来事のように報道されている側面しか知らないが、米中対立における新冷戦が、親米派と親中派の国で衝突して実戦に移行している感が強い。

しばらくグローバル社会には戻らない可能性。

 今回、親中派の国は経済制裁としてSWIFTから排除された。しかし、中国は自前の決済システムであるCIPSを有しているため、経済制裁としての効果は限定的である。

 親中派の国が実行されるとキツいのは、どちらかと言えばGAFAによる情報制裁と言えるだろう。Googleの検索エンジンや、スマートフォン、SNSを特定のIPアドレスだけ使えなくすることは技術的には可能である。情報通信機器日常生活に根付いているだけあって、米国側が制裁を実行した際に、政権の支持率には何かしらの変化が出るのではないかと考えている。

 しかし、米国のGoogle,Amazon,Facebook,Appleに対抗して、中国はBaidu,Alibaba,Tencent,Huaweiと、検索エンジン、ECサイト、SNS、スマートフォンの全てを自前で有している。親中派がSWIFTから排除されたらCIPSを使うように、仮にGAFAが制裁をしてもBATHを使うような流れが形成されると、今後は米中でブロック経済のような形で対立する構図となる可能性もある。

 疫病は克服することで元の日常が戻る希望があったが、戦争はどちらに転んでも親中派の国は米国を中心とする世界経済からは隔離される可能性が高く、そうなるとITとコンテナによって成立していた、今までのグローバル社会の根底が崩れる可能性がある。

 世界一周航空券のような商品はなくなるかも知れないし、Apple製品は中国の工場で作れず、値段が上がるかもしれない。世界中からコスパの良いものを選ぶことが出来なくなるかも知れないが、米中が対立することで、人件費の安い日本が再びモノづくり大国として返り咲く可能性もある。

 どんな危機でも、体力を削らずに忍耐強く待つことや、機会が巡ってくるその時に即座に行動に移せる身軽さが、現代では大切なのかも知れない。

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