車輪の再発明。
教養があると遠回りせずに済む。
人生の中でぶつかる壁は人それぞれだが、恐らく共通しているのは、過去に類似の事例があり、先人たちが何かしらの対処方法を体系的にまとめてくれている場合が多いことだ。細かい内容は時代や状況によって多少なりとも、姿かたちは変わっているかも知れないが、本質的な要因となるものは変わっていないはずだ。
つまり、我々の悩みの種の殆どは、人類で初めて困難に直面している性質のものではないため、既に80点位は狙えるであろう対処フローは確立されており、本来であれば悶々と悩む必要はない。
しかし、適切な学知を引き出せないが故に堂々巡りを繰り返してしまう。いくらインターネットと言う便利なツールがあっても、ヒトは存在すら知らないものを検索することはできない。
そうして独力でどうにかしてドヤろうとすると、車輪の再発明だと揶揄されてしまう。無駄な時間や試行錯誤する労力を省くために、大学で教養を身に付けることが重要なのかも知れないと、一度高卒で社会に出てから、大学で学び直しているからこそ感じる部分はある。
駅員時代に半年に一度ある備品や消耗品の在庫管理を担当した時に、小難しい計算をして請求すべき数量を算出した記憶があるが、工業簿記で多用するボックス図の概念を知っていれば、計算過程でこんがらがったり、発注時に説明するのも単純化できていたと今更ながら思う。
本来、この手の業務は管理職がやるべきだが、人員削減で途中から管理職が不在になったため、弱冠の新米が、先述の管理業務に留まらず、金庫の鍵を持たされて売上金を警備会社に引き渡したり、人身事故の現場責任者の対応をしたりと、職責と賃金が見合っていない労働をしていた時期があった。
ちなみに消耗品の発注には珍事があって、私が融雪剤を1袋(20kg分)頼んだのだが、何かの手違いで20袋届いてしまい、後日、400kgの粒状尿素を雪崩が起きないように倉庫に仕舞い込む罰ゲームと化した。
大事なものに限らず、誤るとヤバそうなやり取りは書面が絶対であることは、大航海時代に公証人という職業があったことからも明らかなのに、工業高校を出て社会に出たばかりの私は、そんな知識すら有しておらず、これもまた車輪の再発明だろう。
とはいえ、人生そのものが非効率。
試行錯誤の過程が全て悪だと言いたいわけではない。自ら気付いて考えた上で行動に移した時に、人間は最も学習する生き物だと思っているからだ。そのため、何事も巨人の肩に立てば確かに効率的ではあるが、人生で効率性を重視するなら、生まれて直ぐさまお墓に入るのが最も効率的である。
人生そのものが非効率的なのだから、何かしらの気付きが得られれば、端から見たら車輪の再発明でも、本人にとっては有意義なものとなっていて、その後の人生を左右する潜在価値を秘めることはそれなりにある。
時には大人が言う真っ当な意見に対して、やって見なければ分からないと反骨精神全開で突っぱねて、独自路線を突き進んだ代償として、痛い目に遭って青二才であることを思い知る経験もするだろうが、それも味わいであり、人生に無駄なことなどない。
親友のひとりが、両親の金融リテラシーの低さから、将来、自分がお金に困らないために、お金について独自で考えて、親族の踏襲でも真逆でもない、オリジナルの金銭感覚を身に付けたと、私と似たような境遇で、子供にはしっかりと金銭教育を施さなければと、生まれる前から私に話していた。
自分が金融リテラシーを身に付けるのに苦労したからこその思いなのは重々承知しているが、先述の「気付き」の大切さの話を踏まえて、私なら致命傷にならない失敗は成人になる前に一通り経験させてあげた方が、自立するのではないかと、子供がいる訳でもないのに、それっぽく答えては議論しあった。
子育ての悩みにも学問は有効?
子育てに正解などないとよく言われるが、児童学や教育心理学辺りの学問を学んでみると、80点位の正解には辿り着けるのかも知れないが、私は子育ては出来ることなら避けて通りたい下劣な輩なので、その手の学問に興味がなく、本当に求めている答えが、その学問で見つけられるかは定かではない。
一応、教育心理学の世界で、早生まれと遅生まれ(定義上は4〜6月)では、学業成績や最終学歴に違いをもたらすのかを、一橋大学が研究していて、遅生まれに優位差があることが明らかになっている。
これは遅生まれの方が、早生まれよりも早期に肉体や脳細胞といった器が成長する分、体格差が有利に働いて成功経験を積みやすいことから、自己肯定感を育みやすく、学業成績も最終学歴も高い傾向にあるとの結論に至った。
日本のプロスポーツ(主に野球、サッカー)選手が4〜6月生まれに多いのも、アメリカの大リーグ選手に8月生まれが多いのも、日本の新学期が4/2区切り、ジュニアリーグが8/1区切りであることを考えれば答えは明白だ。
国立や私立中学の在籍率も明らかに遅生まれに偏っており、早生まれは少なく、偏差値で2〜3、大卒率で2%ポイント程度の差があり、早生まれの私としては穏やかでない。
一方で研究には明記されていないが、文化人は早生まれに多いという、エビデンスの定かではない情報も調べると出てくる。私の実体験を踏まえて推察すると、確かに早生まれは成功経験は積めず、自己肯定感も低い傾向にある。
だからこそ、周囲と比較されない道を突き進み、結果として起業家や文化人として大成するのだと、今春に社会の枠組みを逸脱する自身を正当化する意味でも、そう思っている。
一定期間で区切る中で、序盤に生まれたか、終盤に生まれたかで、子どもがどのように育つ傾向にあるのかと、概要を知るだけでも、子どもにどんな人生を歩んで貰いたいか考え、その期待値が高そうな誕生月になるよう、逆算して家族計画を立てると、多少は悩みも軽減するかも知れない。
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