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最近の金融市場動向(2022年5月)

 大事なことなので、初っ端から正直に記すと、

今後の市場がどうなるかは分からない。

 分かると豪語するのは未来人と詐欺師だけだが、これだけで終わってしまっては味気ないので、私なりの考えを記そうと思う。

S&P500が年初来で20%超の下落。

 円建てで外国株式の投資信託などを保有している人からすれば、円安で多少下落幅が抑えられている側面もあり、年明けから2割も下落した感覚は薄いかも知れないが、日本円の価値が対外的に1割前後下落しているのは紛れもない事実である。

 そんな疫病程度では下落しても金融緩和でV字回復だった天下のS&P500が、年初来でマイナス20%超のリターンを記録し、ここ数年の強気相場とは打って変わった弱気相場で、半年前までブイブイ言わせていたレバナス勢は今頃、泡を吹いていることだろう。

 3ヶ月前の記事で、そろそろ米国株式がマイナスリターンとなる年が来てもおかしくないと書き綴ったが、それが現実となるのか、残り7ヶ月で巻き返しを図るのか、引き続き動向を見届けたい。

 因みに過去半世紀の間に年初来リターンがマイナス20%を超えた年は、リーマンショックの2008年、ITバブル崩壊の2002年、第一次オイルショックの1974年の3度しかなく、このまま戦争がズルズル続き、マイナスリターンのまま推移すれば、歴史の1ページとして将来、若手の投資家に疫病、戦争、利上げ、円安の四重苦で防戦一方の2022年だったと語る日が来るかもしれない。

 出来ればそんな年にならないのが一番良いのだが、起きてしまった事態は仕方がないものとして割り切り、話のネタがひとつ増えたと内心ほくそ笑む程度の温度感が、投資を長く続けて複利の恩恵を受けるにはちょうど良いと個人的には思っている。

無視できない程の物価高。

 月初の朝方にコメダ珈琲店を利用した。コンビニなら100円でそこそこのコーヒーが飲める時代に、1杯500円は値段だけ見ると、喫茶店の中でも強気な価格設定のように思えるが、コメダ珈琲店はモーニングサービスで半切りのトーストとゆで卵が付いてくるため、軽食のフードを加味するとスタバより安く、ドトールのモーニングに肉薄する。

 おまけに、ドトールは回転率を上げる為に、椅子を固くして長居できない造りなのに対して、コメダは座り心地の良い椅子でゆったり寛げる上、昔ながらの喫茶店方式で注文がセルフではないし、新聞や雑誌が置いてある。ワンコイン程の上乗せが、そのサービス料だと割り切れば、費用対効果は群を抜いているため、大衆から支持を得ているのだろう。

 そんなコメダのモーニングを利用した際、都内では一杯490円のイメージが強かったが、渡された伝票には540円と記載されていた。そのため、誤ってたっぷりサイズを注文してしまったと思ったら、単に4月に50円の値上げしていただけであった。

 一見大した額ではなさそうに思えるが、元値が490円だったことを考えると、実に10%の値上げである。もちろん、昨今の原油高や円安による物価高を織り込んだもので、価格据え置きで量を減らすよりは潔くて好感が持てるものの、賃金が上がらない物価高では、スタグフレーションを感じずにはいられない。

 そんな状況下だからこそ、円安でドル建てで見た日本株は割安な水準であるにも関わらず、売上原価の高騰が懸念されて、小売業の銘柄は売り圧力が強くなっているものと思われる。

 セリア(2782)、良品計画(7453)などは典型で、一昔前であれば小売の中でも一人勝ちに近いような、高い利益率を叩き出していた人気銘柄が、現在は売上原価高騰に伴う利益の圧迫を織り込んでいるのか、株価は振るわない。

 原材料費の高騰が一時的なものであれば、それらが落ち着いて元の状態に戻った際に、株価も元の水準まで戻る可能性が高く、買いと判断するが、この状況が長期的なものと推察する場合、判断は真逆となる。現状、機関投資家は後者を選択しているような値動きに感じる。

NISA・iDeCo改革なるか。

 検討使と揶揄されている某国首相が、「所得倍増プラン」から「金融所得倍増プラン」にしれっと変えたものの、金融市場には何ら影響がなかった。年明けで戦争なんて想像もしていなかった頃には金融課税強化を豪語していたためである。

 金融課税強化と金融所得倍増が相反するとまでは言わないが、それが可能な状況は株価が長期で右肩上がりで、大半の人が投資した銘柄が上がるような時であり、経済が30年間以上もの間、停滞している国のトップが今更金融所得倍増を掲げたところで、ズレていると思わざるを得ない。

 我々20代単身者は国全体の割合で見ると少数派なものの、余命を考えれば最も複利が利かせられる世代とも言える。しかし、その世代の半数は保有資産額が10万円にも満たない状況が統計で明らかになっており、10万円に満たない預金しかなければ、そのお金を投資に充てるはずがない。ゼロをいくら乗じたところで、ゼロのままなのは小学生でも分かることだ。

 逆に国民の半数以上を占める50歳以上は、バブル崩壊を肌で感じていた世代である。今更元本割れのリスクを取ってまで投資しようとは思わないことだろう。

 つまり、金融資産倍増は口先で検討するだけで、実現しない可能性が高いと見ている。可能性があるとすれば、NISAやiDeCoの抜本的な改革程度だろう。個人的にはNISAで損益通算できないのがリスクと感じてしまい、個別銘柄には手を出せないでいる。本家ISAにこの仕組みはない。

 損益通算が出来ない以上、最適解となるのは運用期間が最大で20年のつみたてNISAで全世界または米国株式の優良インデックスファンドに投じる形となる。これらは15年以上運用することで、リターンがマイナスにはならないことが統計で明らかになっている。とは言え、統計はあくまでも過去のデータであり、未来を保証するものでは無い点は留意されたい。

 しかし、つみたてNISAの場合、運用の上限額が毎年40万円と、資産形成には些か物足りない。40万円を全世界や米国株式の長期的なリターンである年率6%でシミュレーション通りの結果であれば、20年後におよそ128万円となる。

 仮に20歳から40歳までつみたてNISAで毎年40万円ずつ投資して60歳まで放置した場合、元本800万円に対して、128万円×20の2,560万円が特定口座に移管されている計算になる。老後資金としては十分かも知れないが、NISAが利用できる20歳から毎年40万円、40歳まで積み立て、60歳まで運用してようやくこの数字と、とにかく少額のため時間を要する。

 制度の恒久化や非課税枠の強化など、ISAに準じた制度改革を行って欲しいものである。


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