節税は手段。
トーゴーサン。
この言葉がピンとくる方は、かなり金融リテラシーが高い。内容としては会社員は給与の10割が税務署に把握されているのに対して、経営者・自営業者は5割、農家や漁師は3割程度しか把握されていないと言われている。
何故こんな不思議な現象が起きるかと言うと、経費の存在である。
サラリーマンは税金や社会保険料が差し引かれた手取りが可処分所得であり、その範囲で家賃や食費などを支払って生活している。しかし、自営業者などは、住居を事務所と兼用することによって、家賃や水道光熱費を一定の割合で経費として費用処理することができる。
例えば収入が30万円のサラリーマンは2割の税金・社会保険料を差し引いた24万円の手取りから10万円の住宅関連費用を支払い、残りの14万円で生活する形だが、自営業者の場合、収入が同じ30万円でも経費として住宅関連費用が計上出来る。
仮に半額の5万円が費用計上された場合、25万円に対して税金や社会保険料が課せられるため5万円となり、手元には15万円が残る。収入、支出、税率は同じにも関わらず、住宅関連費用だけで1万円の差が生まれている。
こうした公私兼用できる性質の費用は住宅に限らず、パソコンなどの事務用品や携帯代など、挙げ出したらキリがない。これらを経費として積み重ねることで、実質的にはサラリーマンの半分程度の税金・社会保険料しか差し引かれていないのである。
農家や漁師となると、経費によって費用を操作できるだけに留まらず、収益の操作も可能である。会社員や自営業者の売上は数字でキッチリ出せるのに対して、農作物や水産物は卸売業者に売らなければ売上として計上しようがないからである。
自分用に収穫した食料を自分で食べるだけであれば、費用も収益も発生しない。それだけでなく、以前にも記したが余剰を贔屓にしている相手にお裾分けすることによって、村社会の相互扶助的性質による物々交換が機能し、市場経済を介さずに、自分では作れ(ら)ないモノを手にするとが出来るのである。
費用と収益の双方がコントロール可能で、収穫量を証明する手立てが無い以上、税務署は性善説のもとで確定申告の内容を信じて課税する他ない。結果として、全体収入の3割程度にしか課税されていないとされている。
いかに雇われの身が税金や社会保険料から合法的に逃れる術がないか、お分かり頂けただろう。社会的立場としては一般的に安定していると言われるサラリーマンは、行政機関からしても安定的かつノーガードで財源を徴収することの出来る体の良いカモなのである。
だからこそ、義務教育で9年間もの間、社会人になるための基礎訓練を無償で行っているのだ。普通教育を義務付け、サラリーマンとして勤労して、安定的に納税して貰うために。
節税が目的化していないか。
そんな収入が完全把握されていて、税金や社会保険料をノーガードで徴収された手取りの範囲でしか、何かを買うことが出来ない哀れなサラリーマンにも、課税所得を差し引ける控除が複数存在する。
ふるさと納税は寄附金控除だし、iDeCoは掛け金の全額が所得控除に、生命保険料控除や扶養控除など、細々としたものが案外存在している。
金融リテラシーが高い友人の中には、控除を使えるだけ使っている者も居るが、個人的には節税は手段であり、目的化してしまうと、手元に現金が残らないのではないかと感じてしまう。
生命保険料控除が典型例で、今の20代の大半は平成24年以降の新契約に該当するだろうから、控除の上限は生命保険・介護保険・個人年金保険がそれぞれ4万円となる。
ここで注意して頂きたいのは、税金が4万円×3の12万円安くなるわけではなく、あくまでも課税所得から最大で12万円が差し引かれるだけであり、節税額は思ったほど大きくないと言う点である。
つい最近、年収400万円サラリーマンの前提で、課税所得をガチでシミュレーション※した結果、所得税は5%だった。
※先日トレンド入りした給与の半分近くが税金と社会保険料のデマに異を唱える記事で所得税5%の根拠を説明しているため、本記事での細かい数字遊びは割愛させていただく。参考にしたい方は別途参照されたい。
15%の税金をケチるのに、死に金を払うのはバカバカしい。
課税所得が最大で12万円差し引かれるということは、年間で所得税が6,000円、住民税が12,000円の計18,000円が節税される計算である。
とは言え、保険料控除も2万円までは掛け金の全額が計上されるが、2万円を超えてからは計上される割合が徐々に低下して行き、上限の4万円に達する場合は、掛け金の半分以下しか控除対象とならない。
つまり、3種類の保険を年間2万円ずつ、計6万円支払った場合は全額が控除対象となり、合計9,000円の節税になるが、上限の18,000円を節税したい場合には年間で24万円以上の保険料を支払う必要があるのだ。つまり、各々2万円を超えた分に関しては何割か自腹を切っていることになる。
私は車も妻子も持っていないため、火災保険以外の保険料は1円たりとも支払いたくないのが本音だが、御用組合のしがらみから、全労済の50口2,550円(最近値上がりしたらしい…)のセット共済を契約させられている。
保険料控除はこれの一般生命と介護のみで、割戻金の還付を差し引けば2種類で3万円にすら届かず、全額控除の対象となり、3万円分の所得がなかったことにされて4,500円程度の節税になっているが、そもそもこの保険を契約しなければ、掛け金の3万円が浮いて、15%の税金を差し引いても25,500円が手元に残っているのである。文句を言っておきながら、入院手術で保険金を受け取り、およそ4年分は回収しているのだが。
必要な保険は火災保険、子育て中のみ掛け捨ての生命保険、車持ちのみ自動車保険と、たったの3つしかないことは以前にも記している。これ以外の不要な保険に自腹を切って節税したところで、手元にお金が残るわけではないのだから、お金をドブに捨てているに等しい。
利益を相殺した結果として、税金を安くしているのだから、税金がゼロになったときは、利益もゼロなのである。手元にお金を残すには、ある程度の利益を出す必要があるため、結果として納税しなければならないのである。
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