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日本株配当、控除にするか損益通算するか。

NISAも万能ではない。

 年金財政の悪化に伴い年金は当てにせず、老後資金を各自で用意するようにと暗に示した老後資金2,000万円不足問題は記憶に新しい。この問題は数字のマジックによって、老後資金55万円不足問題となったことは、以前に記しているため本記事では割愛させて頂く。

 そうして、「貯蓄から投資へ」をスローガンに、少額投資を優遇する国策として、NISAやiDeCoの非課税制度を、形はどうあれ拡充して投資を促しているのがここ数年の日本における投資環境とも言える。

 ただ、せっかく国策で用意した非課税枠を、金融リテラシーが低い人ほどギャンブルと混同して口座開設すら行わず、金融リテラシーが高い人ほど長期的に右肩上がりな全世界株式や米国株式のインデックスファンドを購入する傾向にある。

 日本株は、失われた30年の名の如くベンチマークが横ばいで、全くと言っていいほど経済成長していないことから、インデックスファンドも存在しているものの、見向きもされていないのが個人的な印象である。現に私も一般NISAの非課税枠は米国株式の投資信託に利用している。

 一般NISAにある年間120万円の非課税枠は米国株式で使い切ってしまっているため、日本株は特定口座で運用し、利益が出ると課税されることになるが、これは税制上、優遇措置のオプションが豊富であることから、わざわざ損益通算できないNISAで運用するメリットを感じていないが故の特定口座による運用なのである。

 NISA口座では、利益が出た時になかったものとして課税されない代わりに、損失が出た時もなかったものとして扱われる諸刃の剣的な側面を有しているため、長期的に右肩上がりな市場に資金を投じたくなるのはリスクヘッジを考えれば自明の理である。

 しかし、だからといって日本株がオワコンとは思っておらず、ポートフォリオの半分は日本株で運用している。

課税所得330万円以下に有利な日本株。

 なぜポートフォリオを日本株と米国株の半々にしているかと言えば、日本株は低所得者であれば、税制上の優遇措置が受けられる点と、我々日本人は日々の生活を日本円で決済しており、配当や売買益を日本円で直接受け取れた方が、ドル建て資産に依存するよりも為替リスクが低減されるからである。

 日本株を特定口座で運用する場合、配当金や売買益に対して20.315%の所得税、住民税が徴収され、利益の79.685%が手取りとして、口座に入金される仕組みとなっている。

 せっかくリスクを取って利益を出したのに、そこから2割超の税金を徴収されるなんて溜まったものではない。だから非課税となるNISAを利用することを国が推奨しているのだが、実は日本株の配当金に限り、所得の少ない方は確定申告を行うことで減税される。

 具体的には課税所得が330万円以下の場合、詳細は省くが住民税率が2.2%増となる代わり、所得税率はゼロになるため、源泉徴収された15.315%は全額還付され、実質的な税率が7.2%、手取りが91.8%となる。

 因みに年収400万円会社員の課税所得は、計算そのものが複雑怪奇で扶養者の有無など、個人の置かれている状況によって変動するものの、一般的な単身者であれば173万円程度と330万円には程遠いため、確定申告によって源泉徴収された所得税は全額が還付されると考えて良い。

 つまり、確定申告を行うという手間は増えるものの、日本株配当は配当控除を活用することにより、20.315%の税金を7.2%にまで圧縮することができるため、どんなに頑張っても20.315%課税される外国株式を非課税で運用して、日本株は控除を活用するのが税制上、賢い選択と言える。

損益通算はキャピタルで行いたい。

 もうひとつの損益通算は、仮にキャピタル・ロスが発生した時の損失を、配当金の利益と相殺する形で、源泉徴収された税金を還付することが可能である。

 インカム・ゲインである配当金は、キャピタル・ゲインと比較して、安定して利益を積めるため、トレードによる損失と通算できる点で、精神的に安心して売買ができる側面もあるが、注意しなければならないのは、配当金でキャピタル・ロスとの損益通算を行った場合、配当控除の恩恵は受けられない点である。

 そのため個人的には、売買益の利確と損切りを同時に行い、キャピタルの範囲内で損益通算を行い、利益に対して20.315%の課税を回避しつつ、配当金は配当控除によって7.2%の住民税を納めて、92.8%の手取りで頂くことを心掛けている。

 日本株は安定的に配当ことを目標として個別株で運用していることから、バリューかつ高配当株が主軸で、生涯保有を前提としているものの、先の疫病や戦争のような、これまでの価値観の根底が覆られる事態に直面した際に、従来の投資方針では利益が得られなくなる可能性もある。

 その際、保有銘柄に固着して時代の変化にポートフォリオが順応できなければ、悲劇的な結末を迎える可能性が高いのは想像に難くない。

 そのような事態が発生した時に、適切に損切りと、それをカバーする最低限の利確を行うことにより、最小限の税金でキャッシュポジションを増やすことができ、新時代に適合する銘柄の資金に充てられるのではないかと考えている。


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