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最近の金融市場動向(2022年12月)

NISA、大幅拡充。

 私は報道番組はモーサテ以外観ていないし、SNSでは株クラの情報を見ているなど、アンテナが偏っている影響から、既に多くのメディアやSNSで話題となっているように錯覚しているが、正直なところパンピーがどの程度の温度感なのかが分からない。

 とは言え、細かい内容はプロの方が執筆した記事が優れているため、割愛させていただくとして、ざっくりポイントを抑えるなら、生涯投資枠1,800万円の範囲で非課税期間が恒久化され、売却したらその分だけ枠が空く形で再利用できそうな雰囲気など、本家ISAに近づいた内容で好感が持てる。

 とは言え、現行のNISAが登場した時は、上場株式の譲渡損益や配当に掛かる税率が10%から20%に上昇した経過もあって、非課税枠からはみ出した分の税率が30%程度まで上昇する可能性は否めないため、評価はNISA拡充とセットで行われる税制改正次第だろう。

 なぜ税制を気にするのかといえば、改正内容によって運用方針が変わってくるためである。

 2022年時点での従来型NISAでは、非課税期間が定められており、売却しても枠は復活せず、損益通算も出来ないという制約から、全世界株式や米国株式に連動するインデックスファンドで、分配金再投資型のものを選択するのが個人的な最適解となっている。

 そして、日本株は低所得者であることを活用して、配当控除で所得税を全額取り戻し、実質的な税率を住民税の7.2%にまで圧縮できる点で、高配当株投資でインカムを重視して、キャピタルゲインは狙わない二刀流でやってきた。

 しかし、新NISAで期間が無期限かつ非課税枠が復活するのであれば、運用総額が1,800万円を超えるまでは、海外株式の高配当ETFや、日本株もNISAで保有するなど、運用の幅が広がるため金融市場の活性化に一役買う可能性はあるだろう。

 とは言え、NISA口座の利用者は高齢者に偏っているなんてデータもあり、若年層は20代単身者の貯蓄額(中央値)が8万円と、雇用の不安定化やその煽りの高学歴社会化に伴う貸与型奨学金の影響から、そもそも投資の種銭が作れるだけの経済的ゆとりがないことは、同世代を見ている肌感覚として感じる部分である。

 シュリンクフレーションではない形で日本経済をまわそうとしなければ、非課税制度があっても、貯蓄から投資へ十分には促せない可能性が高く、付随して何かしらの対策は必要だろう。それが賃上げなのか、ジョブ型雇用への移行なのか、AIを活用した生産性の向上なのかは現時点でははっきりしていないように思える。

日銀が金融緩和縮小。

 20日の後場が急落する要因になった緩和縮小への方針変更により、長期金利の変動許容幅がこれまでの0.25%から0.5%に引き上げられたことで、日米での金利差が縮小し、為替相場は137円台から131円台と、急激な円高方向に振れる展開となった。

 これにより、日本株市場は全体的に下落したものの、金利上昇や円高の恩恵を受ける銘柄の一部は上昇していたため、総悲観ではなかった印象がある。

 とは言え、何も年末のタイミングでなくても良いのではないかと感情的には思う反面、既に発行されている10年物国債の半分以上を日銀が保有している状況であり、連続指値オペを控えたい現状のため、今後の介入は限定的なものになると思われる。

 しかし、これまでの買いオペで購入してきた有価証券は、どこまでも買い続けられる訳ではないため、どこかで売却しなければならない局面となるだろうが、未だにその出口戦略が見えていない。

 少なくとも現総裁が具体的な出口戦略を立てることなく任期まで逃げ切るのは間違いないが、引き継ぐ側はたまったものではなく、現状路線から方針転換となっても何ら不思議ではない。

 これは、株式投資家にとって追い風だった、アベノミクス路線は踏襲しない可能性が高いことを意味する訳で、「貯蓄から投資へ」でISAに近付いた新NISAを前に逆風となるかも知れない。

 NISAは損益通算ができないデメリットがあるため、相場が右肩上がりだと思い込める状況でなければ、市場が閑散として横ばいかジリジリと下落する嫌な相場となり、耐えきれなくなった初心者から順に損切りして、せっかく盛り上がっている投資熱に対して冷や水を浴びせかねない。

 また、住宅ローン金利に関しても、事実上の利上げにはなっているものの、10年物国債に影響するのは固定金利であり、変動金利は短期プライムレートであることから、今のところ変動金利でローンを組んでいる人の影響はない。

 この利上げで影響が出るのは、これからフラット35などの固定金利で住宅を購入しようと思っている人で、その煽りを受けて20日は不動産セクターが軒並み下落している。

 余談になるが、住宅ローンの固定金利と変動金利は、金利変動リスクを金融機関が負うか、個人が負うかの差であり、金融機関にリスクを持ってもらう固定金利は保険が掛けられている分、割高になる構造となっている。

 そのため、ここ数年の変動金利は安定した低空飛行で殆ど変動していないのに対して、固定金利、それもフラット35のような35年固定のローンは、先行きが不透明であるここから利率が頻繁に動いているのは何とも皮肉である。


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