知れば知るほど断言できなくなる株式投資。
資産運用への関心が高まる昨今。
昨今のインフレと、年初からの新NISA制度が呼び水となり、パンピーにも資産運用した方が良いのではないか?的な雰囲気が醸成されつつある。
経済メディアでは株主優待や高配当銘柄などをテーマにした特集が組まれ、書店には投資関係の本が平積みされ、金融機関の窓口にはNISAの幟や張り紙が並んでいる。
コロナ禍による巣篭もりで実体経済は大打撃。市場経済が麻痺して実体経済にまで影響を及ぼした、リーマンショックよりも事態を重くみた世界各国が、市場経済をクラッシュさせないために異次元金融緩和で金余りに。
そんな矢先に、きな臭い時代へと移り変わったことで、これまでのグローバル経済で機能していたサプライチェーンは崩壊。お金は余っているのに、物が足りないのだから価格は否応にも釣り上がる。そうして世界中で深刻なインフレが生じ、30年間デフレ経済だった日本社会も例外ではなかった。
上がらない賃金。それにも関わらず上がり続ける物価。大企業の賃上げを以てしても、インフレには追いつかず、直近2年間、実質賃金は下がり続ける一方で生活は苦しい。
トヨタと経団連が終身雇用のギブアップ宣言をして、大企業の正社員とて安泰ではない。しかも、年金だけでは老後資金が2,000万円不足すると、テレビで騒がれていたではないか。そのくせ退職金は理屈をこしらえて徐々に減っていくためアテにならない。
もはや大企業で真面目に定年まで働いて、コンスタントに銀行預金だけしていれば、年金と退職金と貯蓄型保険のフルコンボで、つつがない老後生活を謳歌できる時代ではなくなった。
だからこそ、自分が働けなくなった時のためだったり、預金ではインフレに対処できないことから、お金に働いてもらう必要性がここ数年で意識され、資産運用への関心が高まっているのだろう。
回答が抽象的な時は、質問も抽象的。
手前味噌だが、私は株式投資ガチ勢である。しかし、リアルでそう公言しても、単なる頭がおかしい奴か、胡散臭い詐欺師にしか映らないため、2級FPの有資格者とだけ伝えて、相手の反応を伺いながら、どこまで話すか考えられる程度に、私は自分自身を客観的に見ることができるんです。あなたと違うんです。(ついでに中○新聞の体質もこの頃から変わっていな…おっと、誰か来たようだ。うわなにをするやめr
さて、FPの資格を持っていると、相手から漠然とお金に強い人的なイメージが醸成されるのと、余計なことをベラベラ喋らない、他言無用なパーソナリティと相まって、今までは年末調整や確定申告の便利屋として使われることが多かった。
しかし、世間が資産運用=株式投資へと関心が変わったことで、どの株が儲かるのか?的な質問をされる機会が増えたように思う。
ここでタイトル回収にもなるが、株式投資の深みに嵌り、市場経済を知れば知るほど、その複雑さと、未来予想をする不毛さから、先の状況など断言できなくなるため、抽象的な意見を述べては、結局何が言いたいのか分からん。日本語でおk的な空気感となる。
往々にして回答が抽象的な時は、質問も抽象的である。例えば、トヨタってどう思う?と問われても、日本一の自動車メーカーみたいな、ざっくりとした返答しかできない。
しかし、トヨタGR86のAT車とMT車、どっちが良いと思う?と聞かれれば、86は走る楽しさを追求して、スバルと共同開発した経緯があるから、MT車の方がそのコンセプトが味わえると思う。姉妹車のスバルBRZも視野に入れてみたら?と明確な回答ができる。
だからこそ、どの株が儲かるのか?という漠然とした問いよりも、この銘柄が気になっているんだけど、懸念材料はある?と問われた方が聞かれる側としても答えやすい。
現に、ある程度のリテラシーがある人からは、後者のような質問が多いため、出来る限り中立的に、自分自身が想定するであろうリスクとリターンを述べるよう心掛けている意味で、質問力は大事だとつくづく思う。
自分の頭で理解した上で判断する大切さ。
とはいえ、中央値的な日本人の金融リテラシーは、諸外国と比べても決して高い水準とは言い難く、ことお金の話になると、金融機関や保険屋、不動産屋の説明がちょっと何言ってるか分からなくても、その場の流れで言われるがまま契約に至り、自分が契約している金融商品の中身もよく分からぬまま、料金を支払っていることが多いように感じる。
金融機関からiDeCoを「非課税or節税になりますよ」の常套句で勧められた際に、「確かに掛金は税引前の所得から拠出でき、運用益も非課税ですが、受取時に所得計上され、結局課税されるわけですから、課税を繰り延べているだけですよね?非課税で運用したいだけなら、資金拘束のないNISAがありますから、私にiDeCoは不要です。」と言い返されれば、営業マンも人間である。面倒くさそうな奴には、積極的に勧めようと思わない。
賃貸などで重要事項説明をされる時も、FP2級程度の知識は有していても驕らず、契約に関して分からない部分があれば、判子を押したり、お金を支払う前にガンガン質問するようにしているのは、相手を牽制しつつ、自分が騙されないための防衛手段でもある。
株式投資の世界に長く居ると、いつか必ず暴落に巻き込まれる。そうなると、地合いが良い時に尤もらしい理由を付けて〇〇がアツい、次に来る業種、銘柄は〇〇です的なことを名言していた著名人や、自称経済アナリストはダンマリしているか、ひどいと株式市場はオワコンとか手のひらを返していたりする。
経済や株式市場の動きを、100%正確に先読みできる人が居ない。それくらい複雑なのだから、投資の世界に絶対はない。だからこそ、知れば知るほど断言できなくなる。
実際問題、本質的な企業価値は変わっていなくても、別の要因で株価が大きく変動して、やれバブルだ、今度は〇〇ショックだ、などと定期的に騒がれる。
大事なのは、キャッチーで単純明快な、尤もらしい他者の意見を鵜呑みすることではなく、自分の頭で咀嚼しながら理解し、よく考えた上で判断することだ。自分の頭で理解できる金融商品だけを保有するよう努めれば、詐欺の被害に遭うこともないのだから。
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