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最近の金融経済動向(2024年7月)


長期金利が異次元緩和前水準も…

 昨今の急激な円安の影響もあってか、長期金利に影響する10年物国債の利率が異次元緩和前の水準となり、金利のある世界へと戻りつつある。消費者目線で金利の影響が大きくなるのは、住宅ローンだろう。

 住宅ローンを大別すると、固定金利と変動金利に分けられるが、両者の利率を決定づける指標は異なり、10年物国債の利上げは、固定金利に影響することを意味する。

 では、変動金利は影響を受けないかと言えば、その可能性は低い。一般的には長期金利が利上げされると、貸出期間が1年以内の短期プライムレートも上げられる傾向にあるため、長期→短期の順で波及するイメージを持っておくのが妥当だろう。

 長期プライムレートが先に上がることで、住宅ローンを組む際のリスクヘッジで考えがちな、当初は利率の低い変動金利で借りて、利率が急激に上がるようなら固定金利に切り替えることが、いかに現実的ではないかが理解できるだろう。

 世界の住宅ローン事情を鑑みると、これまでの日本は、異次元金融緩和の影響で、安定した低空飛行を続けており、概ね変動金利+1%の固定金利だとしても、諸外国とは比べ物にならないくらい低金利なのだから、将来的な利上げの心配をするくらいなら、最初から固定金利で買える範囲の物件を買うべきだと、個人的には思ってしまう。

 しかし、主に東京都区部では、円安に伴う投資マネーの流入により、マンションは億ションの域に達しつつあり、夫婦共働きのパワーカップルですら、1億円弱の子育てには向かないであろう狭小物件を、ペアローンを組んで無理して買っている。

 東京都区部は極端な例だとしても、若年層全体が大して稼げない社会構造となっていることから、ペアローンや、フラット35に留まらず、フラット50が登場するなど、金融機関から限界までお金を借りないと、マイホームが購入できない現状となっている。

 かつて米国で、住宅市況は右肩上がりで推移し続ける前提のもと、低所得者に返せっこない金額の住宅ローンを組ませまくったことで、サブプライムローン問題を引き起こし、かの有名なリーマンショックに繋がったことは、リスク資産に投資して、資産形成する者として、知っておいても損はないだろう。

 つまり、目先の原材料費高騰の諸悪の根源である円安を抑えるために、利上げに踏み切っている現状は、負債を抱えていない身であっても、「お前ら、正気かよbyガウマン・ノビル」と思ってしまう。「お前ら」が誰を指しているかは、勘の良い読者の想像にお任せする。

成長率<物価高、GDP見通しを下方修正

 しかし、幸か不幸か、内閣府がGDP見通しを下方修正したことで、これ以上の利上げは心理的に憚られる状況となった。

 「賃金と物価の好循環」を理由に、日銀は事実上の利上げに踏み切れた側面があったものの、蓋を開けてみると、庶民は薄々気付いていたが、物価の上昇に対応するほど、賃金が伸びていない。

 先月には実質賃金25ヶ月連続マイナスで過去最長である旨を記し、一発目に「内需が死ぬのは時間の問題」と銘打ったが、内閣府の試算がこれを裏付ける結果となったことからも、現在起きているのはインフレではなく、スタグフレーションに他ならないと、忖度ばかりのマスメディアに代わって主張しておく。

年金、経済が横ばいでも2割減

 そして、GDP見通しが下方修正されることは、経済成長が横ばいであることを意味し、日本経済が右肩上がりで推移し続ける前提で制度設計されている、賦課方式の年金制度が、将来的に減額されることを意味する。

 因みに工業高校の出自かつ20代の私の周りでは、厚労省に騙されていて、厚生年金は平均寿命まで生きれば、支払った金額以上に貰えると信じて疑わず、悪戯に標準報酬月額を引き上げては、割高な社会保険料を天引きされている同級生が後を絶たない。

 しかし、これは労使折半されている社会保険料の、使用者負担分が計算から除外されていることによる数字のマジックであり、使用者負担分を本来であれば、労働者が貰えるべき賃金として計算に含めると、現役世代のほぼ全員が払い損となることが有識者が出した結論で、「嘘つきは数字を使う」の典型例である。

 よって、ここでは厚生年金よりはマシな、国民年金を基準に将来の年金額に関する私見を記す。令和6年度時点で、国民年金の年間受給(満)額は816,000円(6.8万円/月)となっている。

 これが、現在の経済停滞のまま推移すると、今の若者が年金を貰える側になる頃には、月額換算で5.4万円に、いくら貰えるのか定かではない厚生年金が加算されるが、これでも楽観的なシナリオだろう。

 マネー雑誌で取り上げられるこの手の話題を複数読んでいると、日本経済が低迷した際の年金受給額は、現在の半分程度まで落ち込むと試算されている。つまり、月額換算で3.4万円。森永卓郎先生の、公的年金夫婦で月13万円が現実味を帯びてきた。

 我々現役世代が支えられる立場になる頃には、昨今の出生率の低下で、ますます支える若者が居なくなっているのだから、無理もない。そうした不都合な事実を有耶無耶にするために、定年延長の義務化とセットで支払いを5年延長させる暴挙を許したら、パンピーは一生労働し続ける人生となるだろう。

 それが嫌なら、腐敗した行政システムを一掃するために、選挙で変えることは不可能なシルバー民主主義である以上、革命でも起こして、多少身を切ってでも、本来あるべき個々人での積立方式に戻す他ないだろう。

 それも無理なら、経済的弱者として、合法的に社会保険料の免除や減免を駆使して、重い税負担から逃れたお金を、自前で運用して、老後資金を形成する形で、個人の財布を守る程度しか、遣り口が思い浮かばないのが、現役世代の悲しい部分でもある。

円高、株安で投資家に逆風?

 17日以降、これまで円安一辺倒だった為替市場が一辺し、円高方向に触れている。政府・日銀の為替介入や、日米の要人で円安懸念や、是正の発言があったことも相まって、かつて1円変動しただけで死人が出ると言われたドル円の為替相場が乱高下する展開となっている。

 それにより、新NISAでオルカンやS&P 500を全力買い民が、悲鳴を上げるに留まらず、日本株でも日経平均に寄与する輸出企業が軒並み下落したため、連日1,000円安をつけるなど、円高かつ全面株安と、投資家にとっては逆風の展開となった。

 とはいえ、狼狽売りして退場する愚者が大多数とならない限り、NISAで個人の現預金が投資マネーとして流入する前提は崩れず、毎月1兆円規模の円売りで、円安方向に圧力が掛かることを鑑みると、調整局面で一時的に円高方向に触れることはあっても、超長期目線では円安方向に進むのが妥当なように思う。

 そして、この記事を執筆している段階では、未来の話となるため賭けとなるが、30〜31日にFOMCと日銀の金融政策決定会合が開かれることから、市場が織り込むほど日米の金利差が縮まらなければ、再び円安方向に転換する可能性が高いと見ている。

 いずれにせよ、地合いが悪くなった時でも続けられる投資手法でなければ、どれほど期待値が高くとも、稲妻が輝く瞬間に居合わせることが出来ず、リターンの過半を逃すことは「敗者のゲーム」を読んだ方にはお馴染みのロジックだろう。

 急いでお金持ちになろうとするあまり、地合いが良い時にリスクを過小評価して、リスク許容度を見誤るのは愚の骨頂なのだから、今、意気消沈している方は、自身の投資方針を見直すべき時期に来ている。


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