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ダイナミックプライシングは誰のため?あらましやメリットとデメリット、実践事例を解説

「ダイナミックプライシングが増えているけど、本当に支持されているの?」

ダイナミックプライシングという言葉を耳にする機会が増えていますが、その正体は良くわからないですよね。
文字通り価格が変動することを踏まえて、安くなるのを待っていたら、逆に予定よりも高い買い物をすることになる場合もあります。

結論から言うと、ダイナミックプライシングは、需要変動に合わせて価格変更することで企業が収益を最大化することを目的とする価格戦略です。
ダイナミッププライシングの狙いは、売り時に高く売り、そうでない時には安く売ることで、売上最大化を図る価格の設定手法だからです。

この記事では、ダイナミックプライシングのあらましとともに、企業と消費者におけるメリット・デメリット、ダイナミックプライシング実践事例を順序立ててお伝えします。
この記事を読み終わるころには、ダイナミックプライシングを導入しようとする企業の思惑が理解できるようになります。

1.ダイナミックプライシングのあらまし

ダイナミックプライシングは、企業の収益を向上させるための価格戦略の1つです。
需要の変動に応じた価格設定ができると、販売機会の損失を防止できる可能性が高まるためです。

ダイナミックプライシングは今後の企業による価格戦略の重要な取り組みの1つとされています。
そのため、その正体を知っていると、家庭の支出抑制につながる賢い買い物もできるようになります。

そこでここからは、ダイナミックプライシングの定義や価格戦略の位置付け、対応ステップと言った基本情報を順番にお伝えします。

1.1ダイナミックプライシングの定義

ダイナミックプライシングとは、商品やサービスの価格を需要と供給の状況に合わせて変動させる価格戦略を意味し、「動的価格設定」「変動料金制」「価格変動制」とも表現されます。

引用:日本電機工業会「ダイナミックプライシング」

ダイナミックプライシングは、提供するサービスや商品の需給バランスを見ながら価格を変動させる値付け方法です。
昔から旅行業界では、同じ旅行サービスでも繁忙期には高く、閑散期には安く価格設定していました。
この需要に応じて価格設定する考え方が、より多くの業界で取り入れられ始めています。

1.2プライシングに関する2つの考え方

同じ製品やサービスに異なる価格を設定する方法には、在庫削減を重視する方法と、需要への対応を重視する方法があります。
2つの価格設定方法は、目的が異なります。

在庫重視の価格設定は、これまで飛行機やホテルなどで用いられていた方法です。
例えば、飛行機だと座席の予約状況に関係なく時間がきたら出発しなければならないため、ある程度座席を埋めて売上を確保しないと便単位では損失が出てしまう場合があります。
そのため、航空各社は早めに座席の予約率を高め損失発生を回避することを目的に、早期割と言った在庫削減に重きをおいた価格設定したチケットを販売しています。

一方、需要重視の価格設定、つまり、ダイナミックプライシングは、繁忙期に値段を上げて売上増加だけでなく、閑散期に値段を下げて需要を呼び込んで売上確保を狙います。
テーマパークのように、繁閑の差が激しい業態では、お客様が少ない時期のチケットを安くすることで、来場者数を増やし売り上げを底上げするために活用されます。

価格設定には在庫削減と需要対応の2つのアプローチがあり、ダイナミックプライシングは需要に応じた値付けをして、売上増を狙った価格設定の手法です。

1.3ダイナミックプライシングの対応ステップ

ダイナミックプライシングは経験や勘ではなく、過去や現在の様々な情報から予測される需要から価格を決定します。
具体的には、ダイナミックプライシングは3つのステップで構成されています。

ダイナミックプライシングでは、大量の情報から需要を予測し、最適な価格を検討する工程までシステムが対応します。
しかし、最後の価格決定については、人間が価格を決める点がポイントです。
システムは計算上の価格案を提示しますが、その価格が人間が受け入れられる価格ではない場合があるためです。

また、膨大な情報の集計・分析を通じて、ダイナミックプライシングが行われます。
そのため、ダイナミックプライシングは、多くのデータを利活用しやすくなった現在ならではの価格設定の方法です。

ダイナミックプライシングは大量データの利活用を実現するシステム環境がもたらす価格設定方法ですが、最後は人間の判断により価格調整される点が最大の特徴です。

1.4ダイナミックプライシングの採用業界

ダイナミックプライシングの採用を公表している業界は拡大傾向です。
例えば、航空業のJALは飛行機利用需要に合わせて同じ路線でも価格を変動させています。

引用:JAL 羽田ー那覇線 航空運賃

JALの価格設定は、従来から実施されている早期割引に加え、需要の増減に応じた価格設定を組み合わせたものです。
まさに、在庫削減と需要対応の両面から価格設定を行うことで、収益の最大化を狙っています。

ITの発達を契機に、ダイナミックプライシングを行う環境が整いやすくなっています。
そのため、需要の変化により、業績が左右されやすい業界を中心にダイナミックプライシングの採用が進んでいます。

2.ダイナミックプライシングのメリットとデメリット

ダイナミックプライシングは、商品やサービスを提供する企業も、購入する消費者にもそれぞれメリットとデメリットがあります。

そのため、ダイナミックプライシングを提供する場合も利用する場合も、メリットを十分に活かすためには、その特徴を把握していることが重要です。

そこで、ここでは、企業と消費者のそれぞれの立場から見たダイナミックプライシングのメリットとデメリットを順番にご紹介します。

2.1企業におけるメリットとデメリット

企業がダイナミックプライシングを採用する場合には、メリットが目立ちますが、一方で見逃せないデメリットもあります。

ダイナミックプライシングが適切に行われ、顧客に受け入れられると収益の向上や経営資源の生産性向上が期待できます。
一方で、変動させた価格の顧客に受け入れられないと、顧客離れする可能性は否めず、収益悪化する場合もあります。
そのため、人が最終的に価格決定して、顧客に受け入れてもらえるように調整することが、予期せぬ顧客の反感や減少を防ぐためのポイントです。

ダイナミックプライシングのデメリットを踏まえた準備や運用が、メリットを最大化するための重要な要素です。

2.2消費者におけるメリットとデメリット

消費者の視点で考えても、ダイナミックプライシングによる恩恵と不利益は背中合わせの関係です。

需要が小さい時期に値段が安くなるものを買ったり、サービスを利用したりできると、お買い物のコスパが上がります。
例えば、閑散期に飛行機で旅行する場合、宿泊費用も航空費用も繁忙期に比べて安価です。
しかし、繁忙期のお盆や大型連休しか休めない人にとっては、以前よりも旅費が高くなり、金銭面で旅行ができない人が増える可能性は否めません。
そのため、ダイナミックプライシングによる利益を受けるためには、今まで以上に計画的な行動が必要です。

消費者全員がダイナミックプライシングの恩恵を同時に受けることは困難です。
しかし、見方を変えると、何かの商品やサービスについては、価格変動のメリットを受けられるチャンスが必ずどこかであります。
ダイナミックプライシングの恩恵を受けるためには、価格を用心深く確認し続け、変化の傾向を掴むことが大切なポイントです。

3.ダイナミッププライシングの実践事例

ダイナミックプライシングの導入が成功する場合もあれば、失敗する場合もあります。
ダイナミックプライシング導入の成否を見極める上で、先行して導入した企業の取り組みがヒントになります。

なぜなら、ダイナミックプライシングによる価格変更はあくまで企業都合であり、顧客や消費者がその変化を受け入れなければ、無意味な価格設定になるためです。

先行企業の成功事例と失敗事例を確認して、ダイナミックプライシングの導入成功のポイントを掴みましょう。

3.1成功事例

ダイナミックプライシングを有効に利用できると、売上増加できることが実証されています。

Amazonは2013年にダイナミックプライシングによる価格変更を毎日250万回以上実施したこともあり、前年比で売上高が27.2%増加しました。
同時期の同業他社は1ヶ月で5万回程度の価格変更しか行っておらず、Amazonの価格変更回数は同業他社の約1,500倍と圧倒的な頻度です。
Amazoの事例は、需要に合わせて何度も価格を変更し続けることが、売上増加に貢献することを示す典型例と言えます。
参照:JETRO「米国の小売・流通分野における IT をめぐる動向」
参照:Profitero Reveals That Amazon.com Makes More Than 2.5 Million Price Changes Every Day

やみくもに価格変更をしても売上増に繋がるとは限りません。
需要の変化に合わせて適宜かつ適切に価格変更を行う「ダイナミックプライシング」を実現できると、収益向上を期待できます。

3.2失敗事例

ダイナミックプライシングは、どんな製品やサービスにも適用できる価格設定方法でないことを理解しておかなければなりません。
商品やサービスの特徴によっては、ダイナミックプライシングによる価格変動を顧客が許容しない場合があるからです。

1999年、コカ・コーラは米国の自販機の販売価格を変動させる試みをしました。
しかし、この取り組みは消費者に受け入れられず、自販機へのダイナミックプライシングの適用は撤回されました。
その原因は、汎用品の代表であるジュースは固定価格が周知されており、価格上昇しても品質が変わらない点を消費者が受け入れられなかったためとされています。
参照:ニューヨークタイムズ「Variable-Price Coke Machine Being Tested」

コカ・コーラの取り組みから、ダイナミックプライシングの導入において、顧客が価格変更を受け入れることがポイントだとわかります。

ITの発達で、需要の変化をリアルタイムに把握可能になりました。
その情報を価格に反映させることが、ダイナミックプライシングの特徴です。

しかし、価格に見合った価値を消費者に認めてもらえなければ、机上の空論です。
ダイナミックプライシングの成功の鍵は、購入者に変動する価格が妥当であることを理解してもらうことに尽きます。

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本記事にて、皆様の理解、そして行動のお役に立てていました幸いです。

以上、Shuntaroでした!

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