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ハプティクスって?概要や注目される理由、今後の動向を解説

「ハプティクスってなんだ?」
「ハプティクスはどのように活用するのだろう?」

ハプティクスという単語、聞き慣れませんよね。
実は、ハプティクスは擬似的に触覚を再現する技術であり、2050年には80%以上の普及率になると予測されて注目され始めています。
なぜなら、近い将来に予測されている現実世界とサイバー世界が一体化した世界において、2つの世界の橋渡しを担う技術の筆頭がハプティクスであるためです。

そこで、今回は、ハプティクスのあらましと共に、ハプティクスが注目される理由や今後予測される動向について順を追って紹介します。
この記事を読み終わる頃には、ハプティクスに関連するニュースを通じて、世の中の新たな技術動向が理解しやすくなります。

1.ハプティクスのあらまし

ハプティクスは、触覚を再現する技術であり、目や耳以上に仮想的にモノを感じやすくする仕組みです。

ハプティクスは既に日常的に利用する機器で、気付かぬうちに利用されており、我々も自然に受け入れています。
IT技術の発達で、様々なリモート化が増えていますが、ハプティクスが発達すると、リモートから現地をリアルに感じ取れるようになります。

2050年の主流技術と予測されるハプティクスに乗り遅れないよう、ハプティクスの基礎情報を把握しておきましょう。

1.1ハプティクスとは?

ハプティクスとは、実際にはモノに触れていないのに、触れたような感覚を得たり、感覚をもたらす仕組みを指します。

学術的には以下のように説明されています。

力覚や触覚など体性感覚に何らかの刺激が与えられたときの感覚やその感覚を与えるための技術的な枠組み

引用:精密工学会誌 85 巻 (2019) 5 号「はじめてのハプティクス」

視覚や嗅覚に関しては、あたかも実物があると感じられる体験や仕組みが身近に広がってきました。
仮想的にモノやコトを感じる技術が触覚においても広がり始めようとしています。

1.2ハプティクスの役割

参照:精密工学会誌 2019 年 85 巻 5 号「はじめてのハプティクス」

ハプティクスの役割は、実物がない状況でも、利用者にあるように感じさせる没入感の増幅です。
ハプティクスが実現しようとしている仮想的な触覚は、3つの領域に整理されます。

触覚は、実体感や臨場感、モノとの一体感を感じるために重要な知覚能力であり、視覚や聴覚では代替できない能力です。
そのため、ハプティクスが広く利用されるようになると、物理的な距離や時間に制約されないリアルな体験ができるようになります。

1.3身近にあるハプティクス

ハプティクスは、既に日常生活の一部として取り入れられています。

例えば、ゲームやスマートフォンなど、日常的に触れる機器ではハプティクスにおける役割の一部が取り入れられています。
スマホの画面に表示されたボタンは実物でないのに、押下した際に出てくるボタンの感触はまさにハプティスクです。

現在はデバイスから触感を得るため、モノに触れている感覚の延長線の位置付けですが、私たちは既にハプティクスを利用しています。

2.ハプティクスが注目される理由

ハプティクスが注目されやすくなった背景には、ハプティクスを支えるIT技術の発達と、利用ニーズの高まりがあります。
人口減少に加え新型感染症の拡大で、以前のような現実世界での活動の維持が困難になり、デジタル環境の活用が不可欠になったためです。

今までのデジタル環境は現実世界における代替の位置付けでしたが、現在は現実世界の一部として見なされるようになっています。
そのため、デジタル環境に現実性を持たせるために、触覚のデジタル化、つまり、ハプティクスの重要度が高まっています。

2.1デジタル環境の浸透が加速

デジタル化が社会全般で強力に進み、デジタル環境への抵抗感が低くなっています。
コロナ禍を経て、物理的に接触が困難な状況は数年間続き、人手による行為からデジタルに置換が不可欠であったためです。

スマホの世帯保有率は90%を超え、インターネット利用率も60歳代までの世代が80%以上で、デジタルなやり取りが標準化しつつあります。
参考:総務省 令和5年情報通信白書

また、VRやARといった仮想現実技術も普及し、デジタル空間をビジネス空間の1つにする活用方法も一般化し始めています。
しかし、現在のデジタル環境はリアル世界には連続性に乏しく、現実感は十分に高まっていません。

そのため、デジタル環境と現実世界の一体感を持たせ、現実味ある環境にするべく、触覚に訴えかける仕組み作りの必要性が高まっています。

2.2IT技術の更なる発達

2050年までには、2023年よりも処理能力が高く、大容量の情報を効率的に伝達するIT環境の整備が期待されています。

例えば、次世代ネットワークと超高速処理システム、高性能デバイスが組み合わされれば、繊細なハプティクスの実現も夢ではありません。
実際、2023年時点の技術でも、実際に体が感じる内容の96%を再現できたケースも出ています。
参考:NTTドコモ「5G の高信頼低遅延通信 URLLC を活用し、ヒトの手を動かして感じ取れる手応えをロボット上で再現することに成功」

それゆえ、ITの技術発達の速度を考えれば、2050年までにはハプティクスが誰もが利用できる標準技術になっていてもおかしくありません。

2.3ロボットによる人手不足解消の必要性

少子高齢化による労働人口の減少により、人による仕事をロボットに代替させる流れを国としても加速しようとしています。
参考:経済産業省「ロボットを取り巻く環境変化と今後の施策の方向性」

一方で、画一的にロボットへの置換は難しく、特に、人間の感覚が重要となる作業については、ロボット化が難しいとされていました。
しかし、ハプティクスが発達し、遠隔の人が細かな感覚に基づいてロボット操作できれば、ロボットでも高品質な作業が可能になります。
例えば、危険で難易度の高い工事作業にハプティクスを活用した無人対応の検証など、人材不足が加速している業界で検討が進んでいます。
参考:国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「山岳トンネル掘削作業における自動火薬装填システムの開発」

作業で重要となる触感を再現するハプティクスは、ロボット活用を進める上で重要な要素の1つです。

3.ハプティクスのこれから

ハプティクスは、近い将来に幅広く用いられる、生活の一部に取り込まれる標準的な技術になる可能性が高いです。

世界全体で産官学が注目する技術の一つであり、既に製品やサービスとして展開され始め、実用性の高い技術になり始めているためです。
日本でも国がハプティクスに必要な技術環境の整備を後押しし、企業が関連システムの研究開発を進めています。

具体的に国や企業がハプティクスに対して、どのように向かい合おうとしているか確認してみましょう。

3.1国の予想するITにおける未来の姿

国は、2030年頃には、サイバー空間と現実空間が一体化する時代になると予測しています。
参考:総務省「2030年頃を見据えた情報通信政策の在り方」

例えば、仮想空間上で現実空間と同じ体験が再現されるレベルのメタバースが日常生活に普及するとしています。
そのため、予測する未来を実現できるよう、5Gの次の世代のネットワーク開発など、ICT環境の高度化に国は主体的に関与する方針です。

国は現実に近似した仮想空間の一般化を想定しているため、ハプティクスの高度化も推進されやすい環境整備が進むと見込まれます。

3.2接触型から非接触型へ

デバイスを持たなくても、リアルな触覚を感じられる世界が近づいています。

デバイスが不要な非接触型ハプティクスを実現する仕組みは、空中ハプティクスと呼ばれています。
例えば、操作する手などの動きをカメラが捕捉し、その動きに合わせて専用機器から超音波が空気を振動させて触感を再現する仕組みです。

すでに、一部企業では、関連製品が市場展開されており、空中ハプティクスは夢物語ではなくなり始めています。

3.3ハプティクスの活用が見込まれる分野

ハプティクスが普及して、安全性や確実性が高まると幅広い業界に取り入れられると見込まれています。
現実世界では物理的な距離や生成の難易度の高さで実現が困難な事象も、仮想空間を活用すれば容易に解決できるようになるためです。

すでにハプティクスの導入検討が進んでいる業界では、具体的な用途からハプティクス導入による効果が期待されています。

ハプティクスによって、現実世界では実行困難だった取り組みが容易に実行され、快適性や安全性の高い世界が実現できるようになります。

まとめ:ハプティクスで現実世界と仮想世界の融合が加速

この記事では、ハプティクスの概要とともに、注目されている理由やハプティスクの将来について紹介しました。

  • ハプティクスは、仮想空間を現実世界と同様に感じられるようになる、触覚を再現する技術である

  • IT技術の発達と利用ニーズが高まりで、ハプティスクの需要と供給がマッチする世界が近づいている

  • スマホのように日常生活に不可欠な技術の1つになり、幅広く活用されるようになる

ハプティクスは、触感により臨場感を持たせて仮想世界と現実世界を一体化させる、今後の発達が注目されている技術です。
現実世界では、物理的な移動が困難だったり時間的な隔たりにより実現できなかった問題も、仮想世界では解決できる可能性があります。
ハプティクスで触感を精緻に再現できると、現物がなくてもモノがある感覚に没入できて、現実世界と同様に振る舞えるのが特徴です。

ハプティクスの発達と普及により、今までの現実世界における限界がなくなる未来が実現されようとしています。


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