山本太郎れいわ新選組代表の被災地視察の何が問題だったのか?

 元日に能登半島で発生した震度7の地震から僅かその4日後の1月5日(金)に、れいわ新選組の山本太郎代表が、最も被害の大きい自治体の一つである能登町に、国会議員として視察に訪れていたことが物議を醸し出している。
 れいわ新選組支持者からすれば、被災してすぐに現地に駆け付けた山本太郎代表の行動を英雄視して称賛コメントで溢れる一方、アンチれいわ新選組の人々からは、まだ被災地は救助活動中であり、石川県側からも来ないで下さいと言われているのにも関わらず、即座に国会議員として現地視察に訪れたことに対して批判の声が高まっている。
 このように、れいわ新選組、取り分け山本太郎代表の行動に関しては、支持者による“是々是々”のコメントと、アンチによる“非々非々”のコメントで二分されているのがネット界隈の現状である。そこで今回は、れいわ新選組に対しては稀少な是々非々の立場に立っている私の方から、今回の山本太郎代表の被災地視察の行動について検証し、どのように振る舞うのが好ましかったのかを述べて行きたい。

 まず、今回の山本太郎代表の行動で拙かった点について、大きく3つの点を以下の通り挙げたい。

①足を怪我して松葉杖をついているにも関わらず現地視察したこと
②謎のNPO法人の勝手な判断で現地視察したこと
③与野党の国会議員が現地視察を自粛している中、我先にと視察に訪れたこと

 最初に①の足を怪我しているのにも関わらず、現地視察をしたことであるが、私はこれが一番の問題であると思っている。何故ならば、被災地において医療というのは非常に貴重なリソースだからである。もし、被災地の視察において、山本太郎代表の怪我が悪化してしまった場合、その貴重な医療のリソースを被災者ではなく、外部からやって来た山本太郎代表のために割くことになってしまう。そうした被災地のリスク管理を考えた上で、最も来てはいけない状態にも関わらず、被災地に来てしまった点に関しては強く非難をしておきたい。
 また、れいわ新選組という国政政党において、どうしても現地の被災地の情報を取りたいのであれば、何も怪我をしている山本太郎代表がトップダウンで来る必要は無かったのである。山本太郎代表の代わりに、例えば今は非国会議員である高井たかし幹事長や、国会議員の中で言えば、震災と関連のある国土交通委員会に所属するたがや亮衆議院議員が、被災地の視察に訪れれば良かったのである。
 山本太郎代表の視察報告文書を見るに、こうした報告書は何も山本太郎代表が現地を訪れなくても、国会議員経験者であれば党本部に上げられる内容ではなかったかと思う。内容としても、山本太郎代表が現地を訪れた1月5日(金)には、他の政党でも被災地の地方議員から既にヒアリングされているような内容であり、既に政府や石川県側で対応済みのものも多く散見された。わざわざ山本太郎代表が上記のリスクをおかしてまでする内容ではなかったように私には感じられる。
 山本太郎氏が被災地に来ることに意義があるとすれば、それは国会議員としてではなく、元俳優・タレントの有名人として被災地を励ますという点ぐらいではなかろうか。つまりは、元ジャニーズで現在は芸能事務所TOBEのタッキーこと滝沢秀明社長が、所属タレントを連れて被災地で炊き出しをするのと同じような効果ということである。

 ②に関しては、山本太郎代表はもとより、受け入れ先のNPO法人の判断も問題視されるべきだと考える。1月5日(金)現在において、石川県の災害対策本部は交通渋滞を巻き起こす観点から、県外から人が来ることをお断りするアナウンスを行っていた。そうした災害対応に当たっている石川県側の意向に背いて、東京から山本太郎代表を招いてしまったのが、このNPO法人である。このNPO法人はちゃんと石川県の災害対策本部や能登町といった行政に対して、れいわ新選組の山本太郎代表が現地視察に訪れる旨の報告を上げていて、承諾を得たのだろうか。報告・連絡・相談といった鉄則を行政に対して行わず、独断で国会議員を招いてしまったのであれば、被災地で対応に当たっている団体として、その判断は好ましくなかったと言わざるを得ない。責任の所在を明確にする上でも、このNPO法人名も公開するべきではないかと思う。
 また、山本太郎代表もNPO法人に呼ばれたから行ったというのは、自己の行動を正当化する理由にはならないということを認識しておくべきだ。NPO法人の判断よりも、災害対策本部の判断が上位に位置することを理解するべきである。
 もし、国政政党のれいわ新選組がどうしても現地視察を行いたいのであれば、しっかりと行政にも連絡を入れて、視察の許可を得てから行うべきではなかったか。今回の件で、れいわ新選組は行政とも連携せず、独断で行動する政党という悪い印象が付いてしまったことは否めない。国政政党として行政組織を蔑ろにすることは慎むべきではないかと思う。

 ③の与野党の国会議員が被災地入りを自粛している中、山本太郎代表が訪れてしまったことに関しては、れいわ新選組に対してもやや同情的な面もある。こうした申し合わせは、1月5日(金)に岸田文雄首相が行った与野党の党首会談の席で行われたことであるが、この与野党党首会談には、れいわ新選組の山本太郎代表は呼ばれなかったのである。この点については、岸田文雄首相の大きなミスであったと言えよう。この与野党党首会談には、れいわ新選組の山本太郎代表も呼ぶべきであった。そして、その席で政府や他の野党の災害支援の方針について、れいわ新選組の山本太郎代表にも情報を共有させるべきであった。そこで情報共有させておけば、怪我中の山本太郎代表がわざわざ現地入りしなくても、多くの情報を得られ、政策的な提言も出来たのではないかと思われる。
 山本太郎代表がその与野党党首会談に招かれなかったから、結果的にその会談で話し合われた内容を、わざわざ3日間もかけて、代表自ら現地から取って来たような格好になってしまった。山本太郎代表が得た情報が鮮度の低い、もう既に認知されて対応済みの内容であった背景には、与野党党首会談に招かれなかったことが大きく起因しているように思える。
 共産党の志位和夫委員長が自身の記者会見で、岸田文雄首相は今後もこうした与野党党首会談を行いたいという意向を示していたことを明らかにしていたが、次に開催される際には、れいわ新選組の山本太郎代表も招くべきなのである。
 れいわ新選組の山本太郎代表の行動が例え非常識で無茶苦茶であっても、国政政党として比例票で4~5%程度の民意を得ている政党なのだから、民主主義国家の首相として、この4~5%の民意を岸田文雄首相は重く受け止めるべきなのである。この点に関しては、私はれいわ新選組サイドに寄り添って主張していきたい

 以上の点を踏まえて、れいわ新選組にとって世論に反発されない、取るべきだった最適化の行動としては、まずは与野党党首会談にれいわ新選組の山本太郎代表も入れることを岸田文雄首相に申し入れることであった。
 次に現地に地方議員が1人も居ない国政政党として、どうしても現地視察に訪れて、情報を取りに行きたいのであれば、それはNPO法人に連絡するのではなく、石川県の災害対策本部に連絡して承諾を得るのが正しい手順であった。
 またその際に現地視察に訪れるのは、足を怪我している山本太郎代表ではなく、高井たかし幹事長か、たがや亮衆議院議員が適任であった。
 以上の3点をしっかり踏まえておけば、被災地の視察に関しては、これほどまでに、れいわ新選組や山本太郎代表の行動が世間的に非難に晒されることもなかったように思える。裏を返せば、こうした手順を踏めない野放図な国政政党だから、れいわ新選組や山本太郎代表は、多くの国民からは支持されないのである。

 れいわ新選組の山本太郎代表の今回の行動は、5%の支持者からは称賛される行動であり、「ニッチャー政党」として、今年50歳を迎える山本太郎代表が30年後の80歳まで国会議員を務める上では良いかもしれない。しかし、小選挙区制の日本の選挙制度下において、自民党に勝って政権交代を成し得ることを目標とする政党としては、大よそ過半数以上の国民から称賛される行動ではなかったように思われる。こうした行動を続けていては、山本太郎総理大臣なんて、夢のまた夢で終わってしまうであろう。
 今こそ、れいわ新選組支持者は「信者になるな。山本太郎も疑え。」という、山本太郎代表による“教典”をしっかりと胸に刻むべきではなかろうか。最後に、山本太郎代表に対しては、今はしっかりと足の骨折を治して、静養に努めて欲しいと願う限りです。

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