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Human-city interactionとは?Woven CityでのUXリサーチの試み(Yuki Houseさん, Sabrina Leeさん)【RESEARCH Conference 2022 レポート】

「RESEARCH Conference 2022」はデザインリサーチ、UXリサーチをテーマとした日本発のカンファレンスです。近年、より良いサービスづくりのための手法としてデザインリサーチやUXリサーチへの注目が高まっています。RESEARCH Conferenceは、リサーチの価値や可能性を広く伝えることを目的に「デザインリサーチの教科書」著書の木浦幹雄と「はじめてのUXリサーチ」著書の草野孔希・松薗美帆の3名が共同で立ち上げたものです。

2022年5月28日に初開催となったRESEARCH Conferenceのテーマは「START」。東京都副知事・宮坂学さんをはじめ、行政、大企業、スタートアップなど様々な立場から12組が登壇、様々な観点からリサーチを語りました。

本記事ではキーノートのひとつ、ウーブン・プラネット・ホールディングス株式会社でWoven Cityの担当をしているYuki Houseさん, Sabrina Leeさんの『UX research for Human-city interaction』の登壇の模様をお届けします。

■登壇者

Yuki House
Director of UX, Woven City

シリコンバレー、サンフランシスコで約20年間、 Walmart、 Electronic Arts、 Glassdoorなどのスタートアップからフォーチュン500の企業にいたる多彩な企業においてUX/デザインディレクターの経験を持つ。日本では、サービス・プロダクトの顧客体験だけでなく、イノベーションに不可欠なEmployee Experienceの重要性を、Deloitte Digital、 KPMG、 Paidyで伝導してきた。サンホゼ州立大学卒。

Sabrina Lee
UX Research Manager, Woven City

人間とロボットのインタラクションを専門とするUXリサーチャー。 自動運転車、ADAS、AI/IoTサービス、製品開発に関する複数の研究プロジェクトを主導してきた。心理学学士、インダストリアルデザイン修士 。

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Woven CityとUXリサーチャーの役割


Woven Cityはトヨタ自動車のプロジェクト。新しいモビリティの価値を創出し「モビリティ」の定義を拡張するとともに、ヒトの幸せを量産するしくみを創出するため、あらゆるモビリティの実証実験を行う街「Woven City」は、静岡県裾野市のトヨタ自動車東日本の工場跡地に建設されます。

トヨタ・リサーチ・インスティテュート・アドバンスト・デベロップメント株式会社(TRI-AD)の再編にともない新規事業やイノベーションを牽引する会社として誕生。この会社が担うWoven Cityのプロジェクトは、Woven City Managementチームが担当しています。
Woven CityのPurposeは幸せの量産(Well-being for all)で、現在の「モビリティ」が意味する「クルマ」や「交通」から、ヒトとヒトをつないで「心をも動かす」モビリティまで、その意味を拡大することをビジョンとしています。そのために様々な実証実験をWoven Cityで実施していきます。

こちらのビデオを見ていただくと、どのようなイメージを持ってリサーチをしているか分かりやすいですよ。

Woven CityのUXチームはデザイン、リサーチ、UXテックなどの分野が含まれていて、UXリサーチャーはUXチーム以外にR&D, 建築・街づくりチームと連携することも多くあります。

プロダクト、自動車、実証実験の街:リサーチする対象とその特性

インタラクションデザインや心理学などをバックグラウンドに持つSabrinaさんは、人間とロボットの関係に着目してこれまでのキャリアを積み上げてきました。

日本の自動車会社におけるUXリサーチは、離れてしまいがちなテクノロジーとウェルビーイングの間をつなぐコネクターの役割を果たせるのでは、と考えているそうです。

では実際何をしているのかを、プロダクト、自動車、実証実験の街の3点に分けて例示していただきました。

プロダクトでは大量生産が前提で、ひとつの主な機能を目的としています。自動車も大量生産を基本とはしていますが、様々な機能が統合されています。そして実証実験の街は、ユーザーや機能、プロダクト、サービスなどのすべての要素によって成り立ちます。

プロダクトの特徴は、比較的短い期間で開発され、その価値は特定機能の使い勝手に準じます。テストの方法としてはコンセプトテスト、ユーザビリティテスト、モックアップ/プロトタイプなどが挙げられます。

自動車の特徴は、プロダクトよりは長い期間で開発されます。安全性や、安全と感じられることが価値となります。カーシミュレーター、テストコースでの試運転などがテスト方法となります。

そして、Woven Cityで実施される実証実験の特徴としては、短い開発と長い開発が両方あるなかでずっと変化し続けること。ウェルビーイングと幸せがその価値となります。テスト方法としては、VR機器などを用いたデジタルツインがあります。

街のリサーチは、すでにある基準や法律に則り、インフラやハードウェア・ソフトウェアの連携をしていきます。人々のウェルビーイングのため、そしてプライバシーを守りながらも、そこにいる人々とどのようにインタラクションをしていくか、ということに主眼が置かれています。

このような大きなプロジェクトで働くときのチャレンジは、とにかくスコープが大きく、組織も大きいというところです。長期間のプロジェクトのため、キーとなる人々が去る、データが古くなるなどのリスクが発生するおそれも隣り合わせです。ユーザーのデータをどのようにまとめるかも課題です。そのような答えのない状態にやりがいを感じるようなメンバーがWoven Cityにはいます。

Woven Cityでの働き方

伝統的でありながら革新的、日本的でありながら国際的な文化を持つ職場で、UXリサーチャーとして、またUXエバンジェリストとして従事するSabrinaさん。Woven Cityでのチームメンバーは年齢・性別・国籍などの多様性にあふれ、UXリサーチャー・UXデザイナー・UXエンジニアがひとつのチームとなっているといいます。

リサーチャーはプロダクトチームと緊密に、アジャイルに連携して仕事を行います。デジタルツイン上でのイテレーションを回すなど、探索型の調査を重視しています。

機械と人間の間のインターフェースをどうあるべきか考えるヒューマンマシンインタラクション(HMI)やヒューマンコンピュータインタラクション(HCI)という言葉はありますが、それでは街はどのように呼べばよいのでしょうか?どのようにリサーチを行えばよいのでしょうか?……その答えを、まだWoven Cityのメンバーもわかっていません。ただ、街は車・ロボット・建造物・人などさまざまな要素があり、そのすべてを1人の人が体験します。リサーチ対象は、そのすべてに及びます。

ヒューマンシティインタラクションの流れは、Woven Cityで一定の原則があるようです。全体のミッションを理解し、UXデザインやブランディング、インクルーシブデザインについて学び、シナリオを設定してリサーチを実施します。そしてデータを蓄積しながら、また新たなリサーチを繰り返していき、見識を深めるものとなります。

そして、インクルーシブデザインを、Woven Cityは大切にしています。"Not for them" but "With them"、つまり”対象の方たちのために”ではなく”対象の方たちとともに”デザインしていく過程を今後も発展させていく予定です。

Woven CityでUXリサーチャーは、今までやったことのない領域に足を踏み入れる面白さがあります。スケールは大きいですが、短期間で回すプロジェクトもあります。海外に近い雰囲気で働ける環境です。まだないものを探り、タイムラインが違うものを扱い、ダイバーシティーの中で働くことはチャレンジも大きいですが、やりがいが大きい環境とも言えるでしょう。

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Woven City採用情報 Toyota Woven City | Careers (woven-city.global)

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また、8/2(火)にアフターイベントも開催いたします。「STARTのその後」をテーマに豪華ゲストをお迎えしますので、たくさんの方のご参加をお待ちしております🔍

[編集・文章]若旅 多喜恵  [写真] peach


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