noteに聞く、リサーチの現場(ゲスト:宇野 雄さん、仙田 真郷さん)【RESEARCH Conferenceプレイベント レポート】
デザインリサーチ、UXリサーチをテーマとした日本発のカンファレンス「RESEARCH Conference 2022」のプレイベントである「RESEARCH Conferenceプレイベント 〜noteに聞く、リサーチの現場〜」が4月15日にオンライン配信されました。note株式会社 CDO・宇野雄さん、UXリサーチャー・仙田真郷さんをゲストに事例をご紹介いただくとともに、パネルディスカッションを実施しました(スポンサーとしてイベント会場提供・配信協力もいただき、ありがとうございました!)。
本カンファレンスの目的は、「より良いサービスづくりの土壌を育むために、デザインリサーチやUXリサーチの実践知を共有し、リサーチの価値や可能性を広く伝える」ことにあります。プレイベントではnote株式会社をはじめ、事務局メンバーがリサーチ現場から得たナレッジやリサーチャーの苦悩ややりがい、さらに経営視点からのリサーチ活用まで活発にトークが展開しました。
リサーチを浸透させるプロセスもデザインする
「note社の事例ご紹介」のパートでは、まずnote株式会社CDOの宇野さんより、note社のデザインチームについてご紹介いただきました。note社は、CDO、リーダー、プロダクトデザイナー、UXエンジニア、グラフィックデザイナー、イラストレーター、UXリサーチャーの10名がデザインチームに所属。UXリサーチを含むデザイン領域への投資を積極的に行っているそうです。
そのような環境下で、デザイナーだった仙田さんの声かけにより、2021年9月にUXリサーチチームが発足。「社内プロジェクトに横断的に関わることができた。社内でも需要が高まっているだけでなく、チームの立ち上げとしても成功例になっている」と宇野さん。
チームをリードしてきた仙田さんからは、チーム発足の背景から、苦労とその乗り越え方、note社だからこそリサーチがうまくいった事例、今後の展望についてプレゼンしていただきました。
詳しいプレゼン内容はぜひ仙田さんのnoteをご覧ください!
チーム立ち上げの取り組みに関して、他登壇者からは「参考になる」「共感して頷きが止まらなかった」との声がありました。
このプレゼン内容を聞いていた木浦さんは、仙田さんの巻き込み力に着目。「たとえば社内へのインタビュー動画の共有。ただデータをオープンにしているだけでなく、参考になる箇所を指定して共有している。“どうやったらリサーチに興味を持ってもらえるか?”を考えるマインドが素敵ですね」と木浦さんからコメントがありました。「リサーチの価値を知ってもらうプロセスをデザインしている」と松薗さんも感心。
仙田さんいわく、特に社内限定でユーザーインタビューをYouTube配信する取り組みは手応えがあったそうで、「社員が約150名で、こういったライブ配信は通常はなかなか見てもらえないものではありますが、動画のなかには視聴数が70ほどある動画もあります」とのこと。その巻き込み力は数字にも現れていらっしゃるようです。
また、UXチームの役割について、草野さんから「外部のアドバイザーが2人いますが、どういう関わりをしているんですか?」と仙田さんへ質問がありました。週一の定例で毎週のタスクを仙田さんから共有し、Slackで頻繁にフィードバックをもらう体制をとっているそうです。「noteは、UXリサーチチームにかかわらず、アドバイザーを積極的に登用しているんです」と宇野さん。「特化した分野で、習得に時間がかかるなら、専門家にお願いした方がいいと考えています。リサーチをnoteにアジャストしていくことに集中し、ナレッジはショートカットしていこうとしています」と、会社のカルチャーがチーム体制に反映されていることを教えていただきました。
著書『はじめてのUXリサーチ』著者であり、アドバイザーとして他社のUXリサーチにも関わっている松薗さんは、「現場のイシューベースでリサーチをすすめると、困りごとが出てくる。その困りごとには共通している部分がある」と語ります。「社内でリサーチの実務は担いながら、アドバイザーが参加する体制にすると、アドバイザーにさらに実践知が蓄積される。それをまた別のところで共有・発信することで、業界全体のリサーチ文化が深まっていいですね」と、草野さんはアドバイザー活用のメリットに言及。UXリサーチチームの在り方にも示唆が与えられました。
リサーチに欠かせない信頼関係の構築
パネルディスカッションのパートでは、各社それぞれのリサーチの実践知が共有されました。本パートでファシリテーターを務めた草野さんが「僕はいらなかったですね」と笑ってこぼすほど、議論が飛び交う時間となり、普段の業務で抱いた疑問について質問をし合う場面も。
仙田さんからは他登壇者に、「戦略的リサーチと、施策に効く短期的リサーチ、どうバランスをとって進めればいいでしょうか?」と率直な質問をぶつけられます。UXリサーチをはじめて3年目になる松薗さんは「時間をかけて今、戦略的リサーチに取り組めるようになってきた」とのこと。「信頼と実績が必要なので、インハウスでいきなり戦略的リサーチに取り組めるのは稀な気がします。一方で、じわじわとできることを広げていくことも、インハウスリサーチャーの面白さですね」と、やりがいをお伝えいただきました。
「ただ、別のスキルセットも必要になるので、壁にぶつかると思います!」という松薗さんから仙田さんへのアドバイスに、会場からは笑いが。松薗さんの場合、特にビジネス理解を深めなければならない場面があったそうです。さらに、草野さんは、「戦略的リサーチは不確実性が高くなる」といいます。「データを分析し、インサイトをつかみ、今に囚われすぎずにアイディエーションすることが必要になる」と、リサーチャーとしてリサーチ全体をファシリテートしていく重要性に触れられました。
クライアントワークでリサーチを用いられている木浦さんへ、「批判的な声を受け止めることもあるリサーチは、嫌がられませんか?」と宇野さんが質問。木浦さんいわく、プロダクト開発に関わるメンバーからはユーザーの声が求められるが、セールス職からの理解が得にくい現場もあるそうです。
セールス職の巻き込みのコツとして、「急に“インタビューしたいからクライアント紹介して”と言っても難しいので、コンセプトを作る段階から参加してもらいますね」と、初期から協力体制を築く方法をご紹介いただきました。クライアントワークであっても、「サービスをより良くする」ことを目的とした1つのチームとしてリサーチを活用する姿勢は変わらないようです。
リサーチャーの交流で、リサーチの可能性がもっと広がる
最後に、「RESEARCH Conference 2022に期待することは?」という問いに、仙田さんは「他社のリサーチャーと交流する機会がないので、いろんな事例を共有し合えることが楽しみです!」と答えてくださいました。プレイベントでは、3社から5人が登壇し、リサーチャー同士の交流によって、リサーチの価値や可能性の広がりを体感することができたのではないでしょうか。このプレイベントでの盛り上がりに続き、RESEARCH Conferenceでは、多様で内容に富んだオンライン配信だけでなく、miroを使ったオンラインコミュニケーションやSNSなどで活発な交流が実現しました。
プレイベントは、YouTubeでアーカイブ視聴が可能です。
また、本カンファレンスの模様は、noteでレポート記事として公開されています。
リサーチャーの交流が、リサーチの価値を深め、可能性の広がりにつながります。アーカイブ動画やレポート記事を通じて、この交流の輪にぜひご参加ください!
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それでは、次回のnoteもお楽しみに🔍
[編集] 若旅 多喜恵 [文章] 野里 のどか
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