捨てられたダ○ソーのシールたちはどこへ行ったの?
「あっ、シールいらないです」
この地を訪れるものたちは決まってこう言う。
ここはダイソーライフガーデン岡谷川岸店。今日もこの地は、お買い得な日用雑貨を求めるたくさんの人々で賑わっている。性別に年齢、職業に家族構成。出自も経歴もバラバラな彼ら。しかし共通点がたった一つだけある。
それは、シールが欲しくないと言うことだ。
ピンク色に毒々しく輝くキャンペーンシール。フランスの自動車メーカー"シトロエン"のパチモンみたいな3本の"く"が重ねられた意匠を持つそのシールは、買い物に来る誰も彼もみんなから拒否される嫌われ者だ。
包丁だっけ?お皿だっけ?これを集めることで何が手に入るのか?いつまでに集めたらいいのか?何枚集めればいいのか?そもそもこのシールを集めようという発想に至った人類は、有史以来誰一人存在しないので当然誰も知らない。
誰からも求められないこのシールは、何のために生産されたのか誰からも認識されたことがない。今も誤って受け取ってしまった人の財布の中で、レシートとかポイントカードの間にぐしゃぐしゃに挟まって眠っている。
どんな咎人であろうと、生まれてきたことや、存在すること自体には罪はないという。だがここに唯一の例外がある。ダイソーのシールだけは、存在するだけで誅せられるべき罪深き存在なのだ。
それゆえ今日も、主婦が、サラリーマンが、ご年配の方々が、子供たちが、まるでこの言葉が退店の挨拶であるかのように、
「あっ、シールいらないです」
の台詞とともに店を去ってゆく。
レジでこの光景を目にしすぎた私は、キャンペーンシールのことを不憫に思ったので店内に奇跡的に貼られていた、キャンペーン要項の記されたポスターを見てみた。
10分後、店内の陳列棚を一通り見て回り、欲しい商品をカゴに入れ、レジに並ぶ私。代金を支払い、店員さんと相対し、言い放った。
「あっ、シールいらないです」
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