Column Vol.13 〜キンデルダイク-エルスハウトの風車群とその歴史〜
レラテックの田内です。レラテックには昨年春に入社し、むつ小川原洋上風況観測試験サイトの運営に関わりながら、技術メンバーの側面支援等を担当しています。
以前、ユネスコ世界文化遺産に登録されている、オランダのキンデルダイク-エルスハウトの風車群を訪問する機会があったので、このコラムではキンデルダイクにある風車群の紹介と、風力発電の起源となる風車の歴史についてお話したいと思います。
世界一大きな風車がある街、キンデルダイク
キンデルダイクは、九州とほぼ同じ面積とされるオランダ1) 第二の都市ロッテルダムから、南東約15㎞の位置にあります。運河沿いに広がるオランダ最大規模の風車群は、1997年にユネスコ世界文化遺産に登録されました。
1000年前、キンデルダイク周辺は多数の河川と海に囲まれた泥炭地であったため、人々は水位が低い時のみ、狩猟や漁に訪れていました。のちに入植者が砂丘に住み始めたことで堤防が作られましたが、低地を洪水から守るため、定期的に地下水や雨水を河川に汲みださなければならない状況にあったとされています。
13世紀に入り、地域が水委員会を設立。そこから20基の風車を導入し、水位が上がった時には水を汲みだし、干ばつの時は低地の水路へ水が戻す、という工夫がされるようになりました。現在も風車19基が当時のままに、同じ働きをしています。
また、風車の他にも水域管理に向けて、ポンプステーションが建設されています。1868年に設立されたWisboomポンプステーションは、当時蒸気エンジンにより稼働していました。現在は、新たに設置されたコンピューター制御による電気駆動のポンプステーションが、風車24基分の揚水力を有しながら、キンデルダイク地域の水位を調整しています。2)
霧に包まれた風景が印象的だった12月の訪問
私がキンデルダイクを訪問したのは、12月のある寒い一日でした。その日はキンデルダイク周辺に濃霧が立ち込めており、数メートル先も見えないほどでした。そのため、連なる風車を一望することはかないませんでしたが、運河の水面に浮かび上がる風車を見ることができ、とても幻想的でした。
人々が生活している土地と、すぐ近くを流れる運河の高低差があまりなく、水位が高い運河からの水を揚水した後に、別の水位の低い運河へと排水しており、今でも風車が人々の生活の一部として活躍しているのを実感しました。
日本では、風車よりも水車の方が古くから馴染みがありますが、エジプトなどの古い記録によると、風車は3000年以上も前から使われているそうです。灌漑(かんがい)と揚水を目的とした風車は、西暦1100年あたりから使用されていたとフランスやイギリスの書類では報告されています。
また、オランダで最初の穀物製粉用の風車が建てられたのは、西暦1439年ともされています。
19世紀後半には、風力発電の創始者とされるデンマークのP.ラクールにより、風力発電のための高速風車が開発されました4)。現代においても、風車の主力メーカーの多くがデンマークであることも、このような歴史的背景を考えると頷けます。
今回は風車の歴史について少しだけ解説しました。
レラテックでは、昨今におけるデンマークの風力発電への取り組みについて知るため、「再エネ先進国デンマークに学ぶ。日本の洋上風力発電の未来(前編・後編)」の記事を公開しています。ぜひご覧ください。
レラテックでは風況コンサルタントとして、風力発電のための「観測」と「推定」を複合的に用いた、最適な風況調査を実施いたします。
参考資料
1) 外務省ホームページ(オランダ基礎データ):https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/netherlands/data.html#section1
2) キンデルダイクホームページ:https://kinderdijk.com/
3) オランダ政府観光局ホームページ:https://www.holland.com/global/tourism/get-inspired/current/unesco/the-windmills-of-kinderdijk.htm
4) 牛山泉「風と風車のはなし 古くて新しいクリーンエネルギー」(2008年)、成山堂書店