ジャケットとパンツのトワルチェック!
先週あたりから東京は気温がぐっと下がり、ようやく冬っぽくなってきました。天気が一週間を通して晴天に恵まれたので昼間は歩いているとアウターを脱ぎたくなる陽気ではありましたが日が沈むと一気にひんやりとして冬の到来を感じました。考えてみたらもう12月。そりゃあ寒くもなるわ。
僕はかなりの冷え性なのでこれからの時期は厚めの靴下やらモコモコスリッパやらのアイテムが必須です。夜は寝る直前に風呂に入って体を温めないと足が冷えすぎて寝れなくなってしまいますし、何かと面倒なことが増えます。
でも冬はしっかりと寒くなってくれないとアウターが売れず、僕が仕事をしているアパレル業界は大変なんで寒くなるのは歓迎したいところです。
さて、今回は僕のブランドの1stコレクションのメインアイテムであるジャケットとパンツのトワルがようやく完成したのでそれのチェックをした時のことを書きたいと思います。
工場さんに1stサンプルを作ってもらう一歩手前の大切な大切な作業なので集中して色んな可能性を考えながらしっかりチェックしました。
と、本題に入る前に『トワルチェックってなんぞや??』という方のために簡単に説明をしておきましょう。
トワルチェックとは完成したパターンのチェックをする為に実際に生地を裁断して服の形に仕上げて確認する、1stサンプル前のパターンの仕上がり確認作業です。大抵の場合は本番の生地を使わず、安いシーチングなどの生地を使って縫い代やポケット、タブ、見返し、ボタンなどのディティールは簡素化します。あくまでバランスと各パーツのつながりがきれいになっているかを確認をするのが目的なので作業を簡単にするんですね。パターンナーさんのチェックでは裁断したシーチングをトルソーの上でピンでとめて組んでいく方法が一般的かと思いますが、僕は実際に着てチェックしたいので簡単にではありますがミシンで縫い合わせます。
そんなトワルですが、今回はジャケットとパンツを作りました。
まず今回はジャケットから。
僕のかかげた1stコレクションのキーワードは『正装・和装・リラックス』の3つ。これに基づいてデザインしたジャケットはノッチドラペルのジャケットの襟を立てた状態を正としてデザインした襟周りと半纏のようにゆったりとした筒袖。それをボタンを使わず着物のように紐で縛って着るというのがポイントでした。(詳細は以前のこちらの記事を読んでみて下さい。)このデザインポイントの中でも半纏のようなゆったりとした・・・ってところがバランスが難しく、サイズ出しの時に特に悩んだ部分でした。
まずはトルソーに着せてチェックしてみます。
考えていた通り襟周りはジャケットの襟を立てた感じになっていますし、それが着物の襟のように首に沿う形になっています。このあたりの見え方は狙い通りで、いい感です。
ただ、バランスがちょっと・・・。ゴージ位置(?)の低さや襟幅は良さそうですが角度と襟先のカーブのバランスが気になります。なんと無くジャケット要素が薄すぎ、着物感が強めな気がするし、インナーが見える部分が広すぎる。
このジャケットは前合わせを無くしています。ボタンが無いので前の重なる部分を無くしたんですが、これのせいもあるんでしょう。
ここのバランスは要再考です。
袖は半纏みたいなとは言いつつもハンガーにかかっている状態でも立体感があって美しい袖付きだというのがわかる佇まいにしたかったので2枚袖にして前振りで緩やかにカーブした正装のジャケットの袖のような感じにしてもらったんですがちょっとその分量が足りないようです。太くてゆとりがあって、袖口も太い筒のような袖になっているのはOKだと思いますが、立体感が出ていません。なんかペターんとした見え方です。立体感は僕のデザインにおいてはめっちゃ重要な要素なのでこれは要修正です。
胸囲や着丈、袖丈などのサイズ感はいい感じです。ゆったりとした横方向のフィットに対してちょっと短いかな?ってバランスの着丈がブルゾンのようにも見えて『簡単にカテゴライズできないデザインバランス』が作られています。
うん。いい感じ。
後ろ側は中心にベンツがあるんですが、これは無しでもいいかも。
着る時にジャケット感を感じてもらいたいと思っていたので足したんですがトワルで見る限りそんなに・・・って感じです。
ただ、実際の生地はトワルのシーチングよりも断然ハリのある生地です。着て動いた時にベンツ開きの部分がはねるように揺れる感じになるのであれば残した方がいいけど・・・果たして。
まぁこれは一旦、残して1stサンプルで確認しましょう。
疑わしきは罰せず、です。
腰ポケットは左右で高さを変えたんですが、バランス的には右身頃側の位置が良さそうですね。ちょっと高い位置にして違和感を出したかったんですが高いと手が入れにくいし、腰を曲げたりひねったりした時にちょうど体が曲がる位置にポケットがくるんで着心地に違和感が出そうな気がします。大きさや角度はいい感じ。
袖口はシンプルにスリットのみ。カフスとかセッパとかのたいそうなディティールは足したくなかったし、袖口が太いと腕の動きに合わせてスリット部分が大きくゆれて袖口に動きが出るはずなのでこのデザインにしました。
これもいい感じですが、ちょっとスリットが浅い気がします。浅いと動く分量が少なくなるので動いた時にあまり動かないかも・・・。ですが、深すぎるとインナーの袖とか手首とかががっつり見えてしまうのでそれはそれで美しく無い。と言うわけでプラス1cmだけ深くして様子を見ることにしました。
裾はベーシックなジャケットのバランスを踏襲してラインを決めました。これはどうやらうまくバランスがとれている感じです。
もうちょっと前開きヘム裾あたりのカーブの角度を立てた方がいいかもって気はしますが、今のままでも十分に納得できるバランスです。実はここのラインにはかなりこだわって線を引きました。と言うのも僕が考える美しいジャケットの佇まいにおいて、襟〜ラペルのバランスはもちろん重要ですが、ここの前開き〜裾〜脇のヘムのラインはかなり重要だと思っています。急にカーブしてもダメですし、緩やか過ぎてもダメ。各部分のカーブがきれいにつながり、水の流れを描いたようにスーーっと繋がるのが理想です。これはどうやら大丈夫な感じです。
次に着用してチェックします。
僕がトワルを半身やピン打ちではなくて両身をミシンで作るのはこのためです。実際に着用しないと着心地というのは当たり前の話分かりません。とは言えこれは実際の生地では無いので詳細なチェックまではできませんがバランスや肩傾斜、襟の首周りの落ち着き具合、ハンガーにかけた時の袖の落ち方や前開きのなびき方などは十分にチェックできます。
着用して鏡の前であれこれとポーズをとりながら確認しました。
一番気になっていた襟の首周りの落ち着き方ですが、首の付け根あたりがちょっと浮いている感じがあります。でも本当にわずか。数値にして2〜3mmってところでしょうか。
まぁ僕が着て、って事なんで僕の体のバランスを正しい基準として見るかどうかという問題はありますけど。にしても襟周りは重要ですし、気になるのでこれは修正しましょう。
他の部分は肩はいい感じですが、袖付きを肩傾斜からほぼ、直線になるように肩山の高さを決めてもらったので腕を下ろした時に脇にたまる生地の分量が多い。袖も太いし。
じゃあ肩山を高くして袖をちょっと下向きに付けるかとも思ったんですが、ちょっとでは意味無いかなぁって感じです。
トワルの生地感であればそこまで気にならないのでOKですが、これが実際のハリも厚みもトワルよりもある本番生地になった時に違和感が出そうです。袖が太いのでたまった生地が体にあたって気持ち悪いってほどにはならないと思いますが。
迷った結果、これは現状維持で進行する事にしました。
・・・と、以上がジャケットのトワルチェックの結果です。
文章で読むとなんかよく分からないかと思いますが、このブログは僕の備忘録も兼ねていますので読んで頂いた方には大変申し訳無いのですがどうかご容赦下さい・・・。
チェックしてみて感じたことはサイズ感やディティールのバランスはコンピューターを使って画面上ではありますが原寸大でのシュミレーションができるので大きくはズレていませんが、立体になった時の心地と佇まいというのはやっぱり作ってみないと分からないという当たり前のこと。手間だろうがなんだろうがこのトワルは絶対に組んだ方がいいと改めて思いました。
でも先日まで頭の中にしか無かった僕のデザインしたジャケットが、生地や付属は代用ですし、各部分の仕様はかなり簡素化しているとはいえ手で触れて実際に袖を通せる状態になったことは嬉しかったです。良かった点、悪かった点もはっきりと分かったし。
という感じでトワルチェック・ジャケット編は終了です。
次回はトワルチェック・パンツ編ということで書きたいと思いますので興味を持って頂ける方は是非、ご一読下さい。
それではまた!
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