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街を歩くときの自意識過剰

今年で24歳になる私だが、自分の中でこれは明らかに思春期の残滓だと思う部分がある。

街を歩くときの、自意識過剰具合だ。

身長が高い(175cm)というのもあるのかもしれない。

家の外に一歩出た瞬間から、必ず「誰かに見られている」という意識がなかなか抜けない。

「向こうからやってくるあの人、私の方を向いている気がする......」
「後ろから近づいてくる人がいる......スカートの裾、変になってないよね?見られてないよね?」
「ちょっとあの人、私のことどこかのモデルだと勘違いしてないか?さっきから私の方ばかりジロジロ見ている気がする......」

大事なのはこの「気がする」という点で、おそらく、というか誰も私の方など向いていない。誰もお前のことなんぞ見てないとはわかっているのに、それでも、「きっとあの人もあそこにいる人も私の方を見ているにちがいない」という勘違いをやめられないのだ。まさに思春期の残滓。

気づいたらこうなっていた。「大人になればそのうち周りの視線なんて気にしなくなるでしょう」と思って気長に待っていたのに、大学を卒業するという春になってもいまだ「誰かに見られてる勘違い」が抜けない。

一体、いつになったら周囲の視線を気にならなくなるのか。

てなわけで、ひどい自意識過剰な内面を抱えて外に出ている私は、いつ人に見られても恥ずかしくないよう、いつどんな瞬間の私を見られても恥ずかしくないように完璧にしている。(つもり。)

まさか道端で変な顔はできないし(変な顔ってなんだよ)
ぼろぼろなものを着て外に出かけることは自分が許さない。
なんでもない道を歩くときもキャットウォークで歩き、人が多い大通りは心なしか背中の筋肉に力を入れて姿勢を正して歩くようにしている。
駅で切符を買うときも、改札口でピッとかざす時も、大きな駅の階段をのぼるときも、常に誰かが今この瞬間の私を見ているという意識を保ったまま、なるべく流れるように、スムーズに、手慣れた手つきで事を成すようにしている。
チャージ残高が不足して後ろの人たちを待たせることな、私の中で決してあってはならないことなのだ。必ず、残高を確認するようにしている。

......こうして書いていると、自意識過剰すぎて本当に笑えてくる。なんなんだ私という人間は。

本当は誰も私のことなど見ていなくて、私なんぞ、群衆の中のひとりでしかない。それもわかっているのに、常にその場所の中心は(どちらかというとネガティブな文脈で)このわたし、という意識なんだろう。

姿勢をピンとさせたり、どこへ行くにもかわいい服を着るというなんちゃて美意識の高さに貢献する程度の自意識過剰さなら、まだ100歩譲っていい。

でも私の場合、それで終わらない。だから困っているのだ。

例えば通りを歩いている時に、「一旦端によって立ち止まる」とか「気になった店にフラット入る」「カメラで風景を撮る」ということがそう簡単にできない。

「常に誰かが私を見ている」から、こんなところで急に立ち止まっては/カメラで風景を撮っては 困る...というか、視線を一気に集中させるようで、怖くなってしまうのだ。とっても勇気がいる。

自分はカメラマンにはなれないだろうな、と思うのは、街中で自分がいい!と思った風景に立ち止まることもできないし、カメラを構えてシャッターをきることもできないからだ。街ではおとなしく群衆に混ざることこそが良しとする私の高すぎる自意識が、急な行動のチェンジをなかなか許さない。


それで困るなあ、と最近いちばん感じたのは、道端できれいに咲いている梅の木を、まじまじを見つめることができなかったこと。だんだんと暖かくなってきている今のシーズン、桜にさきがけて街で美しく満開を迎えているのは梅の木だ。

家から駅までの道に、庭の軒先でちいさな梅の木を植えているお宅がある。だが、その木になかなか立ち止まることができない。せっかく満開を迎えて、うつくしい桃色の花を咲かせているというのに。
この前なんて、羽の緑がたいへん美しいメジロが木にとまってなんとも風情ある春の昼さがりだったというのに......私はその梅の前で春をめいっぱいに感じることができなかった。家主が来るかもしれないし、後ろからやってくる人に「なんだコイツ」と思われるのを心底恐れてしまった。
結果的にお宅の前をとおるたびに、その梅の木に向かって満面の笑みで「今日もきれいだね、いい天気だね」と心の中で話しかけている、いちばんやばいやつになってしまっている。

梅は満開の時期が短いのか、その木はもう枯れかけてしまっているのがなんとも寂しい。個人的には桜より断然梅が好きなので、「梅を見る会」を開きたいぐらいなのに。

道端の梅にすら立ち止まれない自分にこの上ない思春期を感じる。
どうにか早くこの自意識を克服したいものだが、他の人はふだん街を歩くとき、どこを見ながら歩いているのだろう?
何を考えているのだろう。何も気にせず、お昼ご飯はどこで食べよう〜?などを考えているのだろうか。
それとも、私のように「常に誰かに見られている」という意識を持って完璧を装うふりをしているのだろうか.....。

街の人に聞いてみたいぐらいだ。


ここまで書いてきて思う。
私って変なやつだ。

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