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小説|不思議の国のカギ

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ーーこれは、不思議の国の"カギ"を探すアリスと不思議の国の住人達との物語ーー
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#連載小説

小説|不思議の国のカギ(17)

小説|不思議の国のカギ(17)

チャシャ猫は笑ったまま、すうっと目を細めた。白ウサギは表情を変えない。
……2人は互いを見つめたまま、同時に片足を後ろに引く。
ーーーー次の瞬間。
チャシャ猫と白ウサギの武器が激しくぶつかり合う。
その反動で、爆風が辺りに吹き付けた。
「………………っ」
アリスは砂嵐から目を守るために顔の前に腕を出す。その間にも、2人の戦いは繰り広げられていた。
白ウサギが先手を切ってチャシャ猫に剣を繰り出す。チ

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小説|不思議の国のカギ(16)

小説|不思議の国のカギ(16)

……分かってる。
チャシャ猫の全てが理解出来る訳ではないけれど。
その孤独感は、私も知っている。
両親が死んで、どうしようもない寂しさと不安に毎日襲われていた。でも、私には街の人達がいたから、寂しくても元気で暮らして来れた。
白ウサギにも仲間がいる。
でも、チャシャ猫にはきっと、誰もいなかったのだろう。
この何処までも闇が広がる死の森で、たった一人で苦しみに耐えて来たんだ。

……私に、出来ること

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不思議の国のカギ(15)

不思議の国のカギ(15)

アリスは、そのあまりの凄まじさに息を飲んだ。白ウサギがアリスの腕を引く。
「行くぞ」
「う、うん」
慌ててアリスも走り出す。
その周辺では、三月ウサギと眠りネズミの2人が公爵夫人の騎馬兵を相手に銃戦を繰り広げていた。
アリスは振り返らずに白ウサギの背中を追う。そこから前を覗くと、何かが見えてきた。
「……人?」
アリスは思わず立ち止まる。
目の前にいたのは、二十歳程度に見える女の人だった。
こちら

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小説|不思議の国のカギ(14)

小説|不思議の国のカギ(14)

ドックン……と、ひときわ大きく鼓動が鳴る。
動揺が収まらないアリスの顔を、眠りネズミが覗き込む。
「……分かった?」
眠りネズミのその言葉と同時に、アリスの脳裏にイカレ帽子屋の言葉が流れ込んできた。
『お前はこの森の中央を目指せ。このくそ猫は、あそこへは行けない』
そして眠りネズミは言った。
『白ウサギはたぶん、この戦いの原因を知っている』
眠りネズミが嫌いなもの。
それが、この戦いを起こした……

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小説|不思議の国のカギ(13)

小説|不思議の国のカギ(13)

ーーそれは10年ほど前の話。
白ウサギは『鍵』を止めるため、アリスの様子を探りに人間世界にやって来た。
耳と尻尾は巧妙に隠し、人間に紛れ込む。
着いたのは街外れの山奥。本当に人が住んでいるのかも不思議なその場所に、ぽつんと一軒家が建っていた。
白ウサギがその家に近付こうとした、その時。
「!!」
『鍵』が白ウサギの行動に気付いた。
急な異空間からの攻撃に対処しきれず、白ウサギは数十メートルほど後ろ

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小説|不思議の国のカギ(12)

小説|不思議の国のカギ(12)

翌日。
太陽の強い日差しが不思議の国を照らす中、3人は死の森の中央部の川辺に立っていた。
アリスの顔が引きつる。
「…………それ、本気で言ってるの?」
「………………」
それはほんの数分前のこと。
その川は横幅十メートルになるかという、とても大きな川なのだが、白ウサギはそれを飛び越えて渡ると言い出した。
三月ウサギも当然そのつもりだったらしく、準備運動を始めている。
そのため、アリスが三月ウサギに

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小説|不思議の国のカギ(11)

小説|不思議の国のカギ(11)

「ーー大丈夫だ。あいつは死ねない」
「え……」
アリスは白ウサギの言葉に疑問を持った。
『死な』ないではなく『死ね』ない……?
「どういう……こと…………?」
白ウサギはアリスの方を向いた。その瞳にアリスが映る。
「帽子屋だけじゃない。この不思議の国の住人は全て……死んでもまた、甦る」
「!!」
不思議の国の住人は、その生を終えると再びハートの女王の薔薇園から甦るのだという。
名前や見た目はそのま

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小説|不思議の国のカギ(10)

小説|不思議の国のカギ(10)

しばらく走った所で、アリスは足を止めた。目の前には小さな扉がある。
アリスは、その扉をゆっくりと開けてみた。
「……違う」
扉が閉まると、アリスは再び歩き出した。『鍵』が見つかるまで、これを永遠と続けていかなくてはならないのか。
それを考えると、気が遠くなった。
「でも、やらなきゃ」
アリスは自分の頬を叩き、気合いを入れる。
白ウサギ達に助けてもらうだけじゃダメなんだ。自分が決めた事なんだから、自

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小説|不思議の国のカギ(9)

小説|不思議の国のカギ(9)

それが全ての始まり。これは、アリスと不思議の国の物語ーー。
「『アリスも、初めは普通の少女だったんだ。不思議な事が大好きで、この国の住人とも仲良く暮らしてた』」
彼女と特に仲が良かったのは、ハートの女王だった。2人はいつも街に繰り出して遊んでいた。赤い薔薇が好きなハートの女王。城の庭園に白い薔薇を植えてしまって困り果てていたハートの兵士達に、アリスは優しく声をかけた。
ーー大丈夫。ペンキで赤く染め

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小説|不思議の国のカギ(8)

小説|不思議の国のカギ(8)

アリスとハートのジャックは、先程歩いた廊下をゆっくりと戻っていく。その途中、庭に赤い花が咲いているのに気付いた。
あれは……ーー。
「あれは元は白い薔薇だったのですよ」
「なぜ、赤く染まっているの?」
「貴女の前の"アリス"が、陛下が赤が好きだと聞いて、城の兵士と共に、ペンキで白い薔薇を赤く染めたのです」
アリスは口をつぐんだ。ハートのジャックは続ける。
「……『アリス』は陛下の全てだったのです」

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小説|不思議の国のカギ(7)

小説|不思議の国のカギ(7)

「ん……」
誰かに呼ばれた気がして、アリスは目覚める。辺りを見渡すと、一面が花畑だった。不思議の国ではないーー直感でそう思った。
「……ここは…………?」
「ここは『鏡の国』だよ、アリス」
後ろから声がした。
慌てて振り向くと、双子の小さな少年達が、2人仲良く手を繋いでアリスを眺めていた。見た目は5、6歳程度に見える。
「鏡の国って?」
アリスが疑問を投げ掛けると、2人は顔を見合わせて笑う。
「鏡

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小説|不思議の国のカギ(6)

小説|不思議の国のカギ(6)

あれから数日が経った。
三月ウサギの傷も塞がり、あとは体調の回復を待つだけなのだが、白ウサギの提案で街の散策に出掛ける事になった。
今日は『鍵』の気配がないから、アリス一人で外出しても問題ない、らしい。
街の中央部に入ると、人々の賑やかな声が充満していて、楽しそうな雰囲気が伝わってきた。街に響く愉快な音楽や香ばしいパンの香りも、アリスにとっては全てが新鮮だった。
「お嬢さん、お一つどうだい?」

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小説|不思議の国のカギ(5)

小説|不思議の国のカギ(5)

白ウサギの穴まであと少しという所で、三月ウサギの足が止まる。草むらの方角を凝視した。
ーー来る。
直感でそう感じた。
三月ウサギはアリスの手を掴むと、ぐいっと強引に自分のほうに引っ張って走り出す。
すると、アリス達が通過した所に、次々と槍が突き刺さっていく。それらをかわしながら、敵の居場所を確認する。
既に近くの茂みに隠れていたのだろう。敵の数は相当なものだった。
二十……いや、三十か。
それら全

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小説|不思議の国のカギ(4)

小説|不思議の国のカギ(4)

一方チャシャ猫は、城の前で一人の青年と相対していた。
青年の服装はきちんとした白のスーツ姿。髪は短髪。腰には帯刀。そして何より端整な顔立ちの青年だった。彼は、その静かな瞳でチャシャ猫を見下ろす。
先に口を開いたのはチャシャ猫だった。
「あれ?ジャック。わざわざ出迎えなんてご苦労様だね」
「早く城の中へ。……女王陛下が大層お怒りです」
「うわ。あの人怒ると怖いからな~」
そのわりには愉しげな口調のチ

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