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小説|不思議の国のカギ

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ーーこれは、不思議の国の"カギ"を探すアリスと不思議の国の住人達との物語ーー
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2022年4月の記事一覧

小説|不思議の国のカギ(18)

小説|不思議の国のカギ(18)

不思議の国。
この世界でほぼ同時に生まれた、この世界の最初の住人。
それが、白ウサギとチャシャ猫。
2人とも、お互いが生まれて初めて見る一番最初の生き物だった。
ーーーーだから、友達になれると思った。
彼は、あまり自分から話す性格ではなかったが、自分は他愛ない会話を毎日飽きもせず彼に話に行った。
2人だけで暮らしていたその頃の不思議の国は、あまりにも広く感じたものだ。
でも、2人だから寂しくはなか

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小説|不思議の国のカギ(17)

小説|不思議の国のカギ(17)

チャシャ猫は笑ったまま、すうっと目を細めた。白ウサギは表情を変えない。
……2人は互いを見つめたまま、同時に片足を後ろに引く。
ーーーー次の瞬間。
チャシャ猫と白ウサギの武器が激しくぶつかり合う。
その反動で、爆風が辺りに吹き付けた。
「………………っ」
アリスは砂嵐から目を守るために顔の前に腕を出す。その間にも、2人の戦いは繰り広げられていた。
白ウサギが先手を切ってチャシャ猫に剣を繰り出す。チ

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小説|不思議の国のカギ(16)

小説|不思議の国のカギ(16)

……分かってる。
チャシャ猫の全てが理解出来る訳ではないけれど。
その孤独感は、私も知っている。
両親が死んで、どうしようもない寂しさと不安に毎日襲われていた。でも、私には街の人達がいたから、寂しくても元気で暮らして来れた。
白ウサギにも仲間がいる。
でも、チャシャ猫にはきっと、誰もいなかったのだろう。
この何処までも闇が広がる死の森で、たった一人で苦しみに耐えて来たんだ。

……私に、出来ること

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不思議の国のカギ(15)

不思議の国のカギ(15)

アリスは、そのあまりの凄まじさに息を飲んだ。白ウサギがアリスの腕を引く。
「行くぞ」
「う、うん」
慌ててアリスも走り出す。
その周辺では、三月ウサギと眠りネズミの2人が公爵夫人の騎馬兵を相手に銃戦を繰り広げていた。
アリスは振り返らずに白ウサギの背中を追う。そこから前を覗くと、何かが見えてきた。
「……人?」
アリスは思わず立ち止まる。
目の前にいたのは、二十歳程度に見える女の人だった。
こちら

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小説|不思議の国のカギ(14)

小説|不思議の国のカギ(14)

ドックン……と、ひときわ大きく鼓動が鳴る。
動揺が収まらないアリスの顔を、眠りネズミが覗き込む。
「……分かった?」
眠りネズミのその言葉と同時に、アリスの脳裏にイカレ帽子屋の言葉が流れ込んできた。
『お前はこの森の中央を目指せ。このくそ猫は、あそこへは行けない』
そして眠りネズミは言った。
『白ウサギはたぶん、この戦いの原因を知っている』
眠りネズミが嫌いなもの。
それが、この戦いを起こした……

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