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「学芸員」の専門性について

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今回は学芸員の専門性について、書いてみようと思います。先日、X(旧Twitter)で話題になっていたことです。はたして学芸員に専門性はあるのか、それはどんなものなのか。前提として「学芸員」を語ることは、非常に困難であるということを前提にお読みいただければ幸いです。

法令からみた学芸員の専門性

「学芸員」とはなんなのか。なかなか難しい問いですが、まずは法令からみてみたいと思います。「学芸員」は、博物館法という法律のなかに記載のある職です。

3 博物館に、専門的職員として学芸員を置く。
4 学芸員は、博物館資料の収集、保管、展示及び調査研究その他これと関連する事業についての専門的事項をつかさどる。

博物館法第4条

ちなみに1項・2項は館長に関する記述、5項はその他職員、6項は学芸員補に関する記述となっています。この文章を素直に読めば、学芸員には専門性がある。そして、その専門性とは「博物館資料」を中心とした博物館の活動を専門的に行う職員ということになります。

採用・任用からみた学芸員の専門性

学芸員には、地方公務員であることが多いと思います。その採用の方法と専門性について考えてみたいと思います。

学芸員が地方公務員として採用される場合、おおむね以下の3種類の方法で採用されているのではないかと思います。

  1. 研究職として採用

  2. 技術職として採用

  3. 行政職として採用

1 研究職として採用

主に都道府県において学芸員を募集する際に、研究職として採用されることがあります。たとえば、鳥取県では各部署に所属する学芸員を「専門的科学的知識と創意等をもって試験研究又は調査研究業務に従事する職員」として、研究職として位置付けています。学芸員のほかには、畜産や林業などの研究所職員にも、研究職に位置づけた職員がいるようです。

これらの研究職として位置づけられた職員には、当然に専門性が求められるものと思われます。

2 技術職として採用

研究職ではなく、技術職として学芸員を採用する場合もあります。考古学の方は、学芸員というよりも埋蔵文化財に関する専門職として採用されることが多いのではないかと思います。とある自治体の日本民俗学を専門とする方の名刺をいただいた際に、肩書が技師だったことがあるので、ほかの分野でもあり得ることかと思います。

たとえば、京都府教育委員会事務局職員採用試験では、「文化財保護技師」を選考試験によって採用しようとしています。

第二十一条の二 選考は、当該選考に係る職の属する職制上の段階の標準的な職に係る標準職務遂行能力及び当該選考に係る職についての適性を有するかどうかを正確に判定することをもつてその目的とする

地方公務員法より

法令上の定義は上記のとおりですが、正直理解しづらいです。実際に選考採用が行われている事例や各自治体による説明を勘案してみると、資格や免許などを持った特定の者に限って採用をしようとする場合に用いられる採用方法です。先に挙げた京都府の例では、学芸員や司書、保育士、医師、薬剤師、栄養士などは、選考によって採用されているようです。

この場合、特定の技能を持った者として採用をしているわけですから、やはり専門性が求められているものと思われます。

3 行政職として採用

これがもっとも多いと思いますが、行政職として採用するパターンです。それでも学芸員の資格を取得していることが条件になるわけですから、結局、技術職のパターンと変わらないのかな、と思わないでもありません。ただし、技術採用の場合は、勤務先が限定されていることがほとんどだと思います(学芸員であれば博物館等か文化財保護担当課、保育士であれば保育園かこども園など)が、行政職の場合、「博物館・文化財課“等”に勤務」のような記載が多いのではないでしょうか。

とはいえ、技術職採用であっても、結局行政職に任用されることもわけで、やっぱりあまり変わらないように思います。

法令等では学芸員には専門性が求められている

ここまで法令や採用方法から学芸員の専門性について見てきました。法令上は博物館における「博物館資料の収集、保管、展示及び調査研究」を行う専門職員として位置づけられています。

採用や任用の方法については様々なケースはあるものの、研究職や技術職として採用される事例も少なくないことから、やはり専門性もしくは技能が求められていることは確かなようです。

少なくとも法令等からみた場合には、学芸員には専門性が求められる職だとして良いのかと思います。次回は、その専門性の中身について、考えてみたいと思います