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第26節 清水エスパルス戦

 こんにちは、私です。
 オリジナル10の国立決戦。47,628名の大観衆の中で行われた清水戦は2-2のドロー決着となりました。用意していた清水対策のプレスが嵌らず、先制を許してしまいましたが、すぐに見木のゴールで追いついて飲水タイムで守備の修正ができたのは良かったです。後半立ち上がりは入りが良く、小森のゴールで逆転。しかし、清水の3枚替えから徐々に選手の質で押し込まれ、追いつかれてしまいます。その後も清水に押し込まれチャンスを作られてしまいますが、椋大のビッグセーブもあって引き分けで試合を終えました。
 大観衆の中でプレーする緊張感となかなか風の通らないスタジアムで暑さもあってかなり難しいゲームだったと思いますが、選手の質・経験値ともに格上の相手に厳しい試合内容の中で勝点1を拾えたのは良かった。攻撃時に相手の背後を取るというチームの狙いを表現し、そこからチャンスを作れていたことも良かった。ただ、後方の繋ぎは不安定でここでのミスから相手に奪われ、チャンスを作られるシーンが目立ちました。後方の繋ぎは改善していかなければいけません。

J2リーグ 第26節
清水エスパルス 2-2 ジェフユナイテッド千葉

スタメン

・格上相手への守備

 選手一人一人の質が高く、特に乾貴士は別格の選手です。小林監督は乾について試合前にこのようにコメントしています。

やはり一人ひとりのクオリティーが高いチームですし、そのなかでも間違いなく乾貴士選手はスペシャルです。彼が出てくるともう“彼のチーム”ですから。それが明確に出ているなかで、どれだけ彼を抑えられるかだと思います。もちろん彼が出てくるか出てこないかは分かりませんが、現在スカウティングして彼らのゲームを見ているなかでは、そこはもう明確な戦い方として出ているので、そこをしっかり抑えることが絶対的に必要だと思っています。

 監督の言う通り、乾をどれだけ抑えることができるのかということがこの試合のキーとなっていて、チームの核である乾に仕事をさせないことを守備の狙いとしていたと思います。また、高い位置を取る右SBの北爪に日高を当てるようなプレスも用意されていました。ただ、用意していたプレスはうまく嵌らず、乾への対策もクオリティで超えられてしまうシーンが多かったように思います。試合終盤は個の力を強める清水に押し込まれる時間が続きました。ただ、椋大を中心に粘り強く守り続けることができました。

①ハマらなかった清水対策

 この試合のジェフの守備での狙いは高木が相手の右CBにプレスへ行き、高い位置を取る右SBを日高が捕まえ、佐々木がスライドして右SHを見るということ。高い位置を取る右SBを自由にさせないプレッシングを準備してきました。そして相手のキーマン乾は田口が監視して仕事をさせないことを狙いとしていました。
 ただ、この用意してきた守備はハマらず。見木は守備の反省として試合後にこのようにコメントをしています。

プレッシングのところは左が1つずつ前に出て、トシくん(高木俊幸)が相手の右のセンターバックに、(日高)大くんが右サイドバックに出ていくというプランでした。相手の右サイドハーフは中に入るので、それは(佐々木)翔悟が見るという形です。それを想定して練習していたんですが、おそらく相手が自分たちのことをスカウティングしていて、右サイドバック(北爪健吾)の位置が低くて。そこのところの守備で自分たちのズレが生じてしまって、僕たちの左サイドの裏を突かれて相手の中山克広選手に何度かドリブルされて危ないシーンが続きました。準備していたことに対して相手の配置が少し変わっていたので、そこの対応力が少し足りなかったと思っています。
あとは乾(貴士)選手に対して(田口)泰士くんがついて、あまりボールを持たせないということをチームとして狙いを持っていたのですが、かなり自由に、右に行ったり左に行ったり、何度かボールを持たれて危ないシーンを作られてしまったので。守備ではその2点が反省点というか、押し込まれてしまった原因なのかなと思います。

 普段高い位置を取る相手の右SBがこの試合ではそこまで高い位置を取らなかった。その結果、日高が相手の右SBへのプレスに行ききれず、中途半端な形になってしまい、相手の右SHに日高の出た裏のスペースを使われてしまいました。また、相手の中盤は流動的で乾も色々なところに顔を出すため、田口がマークに付ききれず、乾を自由にさせてしまいました。
 このように用意してきた守備がハマらなかったことで押し込まれ、先制点を許してしまいました。ただ、見木のゴールで悪い流れを引きずらず、耐えることができました。乾の技術やホナウドの運び出しによってチャンスを作られる場面もありましたが、飲水タイムから高木が前に出ずに相手のSBを気にするようになっていてプレスの修正ができていました。立ち上がりの状態のままプレスをかけていたら突き放されていたと思いますし、前半途中でプレスの修正ができていたのは良かったです。

②個の力で押し込まれた終盤と体現できた「当たり前」

 後半の立ち上がりから良い時間帯が続きましたが、清水の3枚替えのところから徐々に清水ペースに。後半途中から清水が個の力を強め、押し込まれる展開になってしまいました。特に途中から入ったオセフンのポストプレーには手を焼きました。椋大がビッグセーブをした岸本のシュートもオセフンが強引に前を向いて大輔を振り切ったことで生まれた清水のチャンスでした。また、田口など中盤の選手の運動量が落ち、乾を自由にさせてしまう場面も目立ちました。
 試合終盤は清水がシステムを変えて選手の質、個の力で押し切るようなサッカーを展開され、ボール非保持の時間が続きました。しかし、椋大のビッグセーブもあって勝ち越しは許さず。他の選手たちも最後のところで粘り強く対応できていました。
 国立競技場は風が通らず、熱気がこもるようなスタジアムで選手たちにとってはかなり厳しい環境だったはず。選手の質などで上回られ、清水の攻撃に耐える時間が続くかなりタフなゲームでした。勿論、椋大のセーブがなければ負けていたゲームでしたが、それでも粘り強く戦って清水に勝ち越しを許さなかった。これは小林監督の言う当たり前を体現できたと言っていいでしょう。去年の終盤、特に秋田戦などはこうした当たり前が全くできていないチームだったような印象ですし、下位に沈んだ2019シーズンも同じで当たり前が全然できていなかった。今年のアウェイ水戸戦からチームを引き締め直して小林監督の言う当たり前を体現できるようになっているのは評価してもいいのではないかなと個人的に思っています。戦術的な部分での課題は多いですが、この試合が上位進出へのきっかけとなってほしいです。

・安定しなかった後方での繋ぎ

①運ぶドリブルと正対

 2CBが前にスペースがある状態で余裕を持ってボールを持つシーンがありましたが、運ばずに縦やサイドに出したり、ロングボールを蹴ることが多く、受け手が苦しくなる場面が目立ちました。

 前にスペースがあるにも関わらず、運ばずにパスを出してしまうと次の受け手に時間とスペースを与えられず、寄せられやすくなってしまいます。
実際に佐々木が運ばずに日高に出して、日高が嵌りかけるシーンが目立ちました。日高の技術によってプレス回避できていましたが、佐々木が運んで相手を引き付けていれば日高はもっと楽にボールを受けることができていたはずです。

 前にスペースがある状態でしっかりと運んで相手を引き付けることができれば、受け手に時間とスペースを与えることができます。また、図のようにフリーとなった日高へのパス、マークを外した見木への縦パス、立ち位置を下げた日高→椋大→大輔ルートでサイドチェンジなど選択肢を増やすこともできます。

 さらにジェフのCBの選手は相手と正対することができておらず、プレスを受けやすい状況を作ってしまっています。側対の状態だと選択肢が絞られ、プレスされやすくなってしまいます。

 相手と正対することで複数の選択肢を持つことができ、相手に寄せられにくくなります。
 髙橋は正対できていることが多い印象で、プレス回避のところでとても効いていたように思います。運んで相手を引き付けることや正対するといった個人戦術を当たり前にすることができれば、もっと後方での繋ぎが安定するはずです。

②田口の立ち位置の微妙なズレ

 怪我の小林に代わってアンカーの役割を田口が担いましたが、これまでこの位置で起用されてきた小林との微妙な立ち位置のズレも後方での繋ぎに安定感を欠いた要因の一つだと思います。

 田口はしっかりとポイントに立つことを意識していたと思いますが、立ち位置が若干高めで相手2トップを牽制できていなかった。また、普段とは違う若干の立ち位置のズレによってミスも多く出てしまったのかなと思いました。

 もう少し相手2トップに近いところに立つことができていれば、相手2トップ間を閉めさせ、プレスへと行きにくくして、CBが運び出しやすい状況を作ることができます。さらに2トップ間で受けようとする田口に相手のボランチがついてくれば、その奥が空き、風間などがそのスペースを使うことができます。
 このように田口の立ち位置が普段起用されている小林よりも若干高めだったことが後方での繋ぎに安定しなかった要因の一つで、もう少し相手2トップに近いところに立つことを意識すべきだったように思いました。

③SHとSBの立ち位置

 SHとSBの立ち位置も後方での繋ぎに不安定さを招いた原因で、SHに関してはSBからのパスコースを作れない立ち位置を取っていて、SBに関してはCBから遠すぎる&低い位置で張りすぎのように思いました。

 SBが低い位置に張る&SHが中に絞る(SBとの縦縦の関係も多い)とパスコースが限定されやすく縦にしか出せなくなってしまいます。おそらく背後を狙うというテーマの下このような立ち位置を取っているのだと思いますが、基本的にはSBが内に絞ってSHが張った方が良いと私は思っています。
 新明がSHに入った時にこういったSBからのパスコースがない状況になってしまうことが多く、この試合でも新明が背後を取る動きで中に立ち位置を取ってしまっていて、髙橋からのパスコースないといったシーンがありました。

 また、CB-SB間の距離が遠いことが多く、CBからサイドへのパスコースがない状況が多いです。サイドが繋がっていないことでCBの出し所がなく、プレスを受けてしまう、低い位置でボールロストしてしまうことが目立っています。佐々木のキック精度の高さでなんとか繋がっていることもありますが、ここも立ち位置を修正する必要があります。

 SBを絞らせてSHを張らせれば、SBからのパスコース問題&CB-SBの距離問題をともに解決させることができます。この配置のほうがライン突破が容易にできますし、逆サイドへも振りやすい。

 勿論、CBが開ききっていれば、SBが張って、SHが中に絞る形を取ってもよいと思います。味方との距離感を意識しながら、複数の選択肢を作れる立ち位置を取るということをもっともっと意識してほしいです。

・最後に

 タフなゲームでしたが、なんとか勝点1を拾うことができました。後半終盤は特に苦しかったと思います。ただ、当たり前を体現することはできていいたように思います。ビルドアップでの課題は多いですが、背後を突いてチャンスを作っていて、できることも増えています。水戸戦からチームを引き締め直して当たり前を体現できていますし、この試合の勝点1をムダにしてはいけません。
 次は首位町田戦。この試合の勝点1をムダにしないためにも必ず勝ってほしいです。

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