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「市場」ではなく「企業」を買う株式投資【増補版】を読みました

「市場」ではなく「企業」を買う株式投資【増補版】 を読みました。

目次です。

第1章 「市場」は買えるのか
第2章 高投資収益率企業の定量的特色
第3章 脱市場投資のあり方
    ーロングオンリー絶対リターン型株式投資の内外事例
第4章 長期投資に耐えうる企業群への投資
    ー企業を選別して長期的に投資する
第5章 企業価値増大を楽しむ投資
第6章 企業とともに成長する投資
第7章 年金からみた望ましい日本株式への投資
第8章 大阪ガス企業年金における国内株式運用管理
第9章 [座談会]インデックス運用か厳選投資か
第10章 王道となった選別投資


「スキルのない運用マネジャーにアルファを生み出すことはできない。しかし、熱いオーブンの上で立ち続けることができる我慢強い顧客(投資家)、銀行預金のようにいつでも好きなときに引き出せるものではなく、一定期間引き出しができないファンドと契約できる顧客が存在しなければ、どのようにスキルの高いマネジャーであっても、長期間持続し、統計的に有意な水準と考えられるほど大きなアルファを生み出すことはできない。ウォーレン・バフェットも、・・・

第3章 脱市場投資のあり方 89頁

ピーター・バーンスタインの指摘だそうです。

ピーター・バーンスタインについては、まろさんの記事をご覧になってみてください。


この第3章から非常に強いメッセージを感じます。第3章をご担当された堀江貞之さんはさらにこう述べられています。

時によりそのマネジャーが大きくベンチマークに負け越すことは当然起こりうる。その条件を覚悟する勇気が投資家に必要である。そのような状況下で絶対リターン型投資を採用し続けることができるかどうかは、投資に対するある程度高い理解力が求められるということであろう。

投資する会社を厳しく選別する投資を「絶対リターン型投資」とされています。それに取り組む投資家は、灼熱のオーブン、極寒の氷の上にあっても動じない我慢強さが不可欠、必須。

その我慢強さはその投資スタイルに対する深い理解と納得が生み出すものだということです。

だからこそ、投資家に対する説明、丁寧に伝えよう、伝わるかどうか見届けよう、そうした姿勢が感じられる情報開示や報告が求められるんだと思います。ロクな説明がなく抽象的な報告では、灼熱も極寒も耐えられるはずがありません。


絶対リターン型投資には2つのアプローチがある、と述べられています。

一つ、長期企業価値(本質的価値)評価型

一つ、経営への積極関与型

前者の色が濃いマネジャーとして、第4章にコモンズ投信さん、第5章に農林中金バリューインベストメンツさんが登場されています。

後者の色が濃いマネジャーとして、第6章にあすかコーポレートアドバイザリー 光定洋介さん、現在 みさき投資の中神康議さんが登場されています。

第4章、コモンズ投信さんは 投資先の #ユニ・チャーム #シスメックス  のケースを具体的に紹介されています。「見えない資産(価値)」の実例として #コマツ  や #エーザイ  も。最後には投資先への関与という観点で投資先との「対話」の実例も紹介されています。

第5章、農林中金バリューインベストメンツさんは 最初に「リターンの源泉」について詳説されています。130ページの「成長は必要か」というパートが読み応えたっぷりです。

第6章では、あすかバリューアップファンドの投資先の選別基準や実際のケースとして #ピジョン  への投資について詳説されています。

みさき投資さんのニュースレターでピジョンの山下さんとの対談が発信されています。こちらもご覧になるとさらに理解が深まると思います。


第9章の対談では

厳選投資のメリット、厳選投資アセットマネジャーの選び方等が議論されていて、非常に興味深いです。

厳選投資のメリットは、7割強の株主価値破壊企業を排除し、価値を創造している企業にだけ投資する点です。

第6章をご担当の中神さんのコメントです。

厳選投資のマネジャーが行なっていることはキャッシュフローを当てることであり、株価を当てることではない。(略)
投資先企業をどういう理由で選び、その結果はどうだったかをじっくり聞けば、厳選投資のマネジャーの良し悪しを見分けられるということです。

第3章をご担当の堀江さんのコメントです。

第9章までは2013年に創られたコンテンツです。

当時に考え、書いた内容が陳腐化しているわけでない。むしろ、7年以上の年月が10名の先見性を実証してくれた。当時の観察と分析の方向に沿い、市場の株価が変動し(上昇し)、買って良かった企業と、買わなくて良かった企業が分かれていった。
ということで改定作業、増補版ということで落ち着いた。
10人の執筆と座談会の部分は基本的にそのままである。

編著された川北さんのブログでこのようにご説明されていました。

今回の【増補版】で追加されたのが第10章です。

川北さんによる「王道となった選別投資」です。

初版から7年の振り返りが述べられています。

Shimoyamaさんのブログです。

初版ですが、ろくすけさんのブログです。


さて、この本を読み終えて真っ先に感じたのは、初版が出版されていた際にこの本に出会っていたら、僕自身どんな感想を持っていただろうか?ということです。

実は出版された2013年当時、この本の存在には気づいていたのです。というのも、コモンズ投信さんのファンドを毎月買い増していたからです。でも、実際には手に取らなかったんです、存在を知りながら。

そこで、当時(2013年12月末)の僕のポートフォリオを振り返ってみました。

201312_renny_ポートフォリオ

インデックス運用が約7割を占めていました。アクティブファンドも含まれていますがサブ、サテライト、そんな感じですね。当時の僕は、アクティブファンドを選ぶ際に、この人たちに任せてみよう、というファンドマネジャー、投信会社への期待が一番大きかったように記憶しています。5つの「P」で言えば、実の所Peopleだけ、という具合でした。Philosophy, Process, Portfolio, Performanceに対しての意識は今と比べると遥かに低かったのです。ファンドの投資先、Portfolioへの関心も極めて乏しかったと思います。何より、アクティブファンドでもフィー(コスト)が重要だと信じていたので、むしろそこをえらく気にしていました。

何が言いたいか、というと、ですね。この本の初版が出版された時に仮に出会っていても、今読むほどには内容が自分の中に伝わらなかっただろう、もしかすると、全然つまらんわ!何言うてるんですか?くらいに感じていたかもしれない、と思ったのです。

この7年で随分と考えが変わったなあ、ということを強く確認する読書となりました。

今、この本が深く自分に染み渡るきっかけになった出来事はいくつか思い当たるのですが、代表的なものをサルベージしてみました。

鎌倉投信さんの受益者総会には初回から連続で参加させてもらっていたのですが、投資信託からもたらされるリターンは投資先から、というのを肌身で体感した、分かった体験だったと思います。

2014年2月に始めた、m@さん、まろさんとのリレーエッセーも非常に大きいインパクトがありました。「株式投資って一体どういうことなんだろう?」それを何度も自分で考える機会になりました。

このファンドとの出会いも非常に大きかったです。

アクティブファンドでもインデックスファンドと同じようにフィーばかり気にしていた僕に「アホちゃうか?!」と教えてくれた、貴重な存在です。

2016年11月には中神さんの本に出会えました。この本、Kindleではなく紙で買うべきでした!

そして、この本。

2017年、この本で奥野さんと出会えました。

もうこの頃、既にインデックスファンドへの追加投資を止めちゃってました。

僕自身、こんな風に「変われた」ことをとてもポジティブに捉えていますし、過程で出会った様々な人たち、本、出来事に深く感謝しています。

何年後かに、この【増補版】を読み直してみた時、僕の考えに変化は起きているのか。それとも、この【増補版】が7年以上経っても書き直される必要が無かったように、特段の変化は起きていないか。

いずれにせよ、変わること、変化を恐れることなく、自分でしっかりと考えた自分らしい株式投資を続けます。

市場か会社か


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