見出し画像

三位一体の経営 (著・中神康議さん)


立場は全然違うけれど、経営者と従業員、そして株主という三者が一体となって変革に取り組めば、みなで豊かになれるんだ・・・・。

中神さんのこの気づき、発見が執筆する動機だと本の冒頭で説明されています。

「みなで豊かになれる」とされていますが、裏を返してみれば、変革に取り組まないと、豊かになれない、もっと言うと、貧しくなる?

この本の「おわりに」には

そして私たちはみなで貧しくなりつつある

というセクションがあります。このセクションはこう締め括られています。

私たちがいま真摯に向き合い、直視しなければならない事実は、「日本企業に関わってきた人は、みなで貧しくなってきた」という事実です。

#教養としての投資  で #NVIC  奥野さんも指摘されていました。

本の著者、中神さんの存在を知ったのは4年前のことでした。

この本には大きな刺激をもらいました。Kindleで読んだのですが、本で買うべきだった!という一冊です。その後、中神さんが代表をされている #みさき投資  さんはずっと追いかけています。

みさきニューズレター は非常に濃厚な内容で、年に一、二度の更新をメチャクチャ楽しみにしていました。昨年10月から更新が無いなあ、寂しいなあ、そう思っていたところに、今回の「三位一体の経営」でした。

最新のニューズレターでダイジェストが載せられています。

スクリーンショット 2020-11-24 6.36.45

特に印象深かった箇所を書き残しておきます。

「利回り」を長く続ける「複利の経営」こそが、株式価値を高め「みなで豊かになる経営」につながっていく

売上高、利益、その「額」や、それらを「率」で見るだけではなく、どれだけの資源を投入して利益を生み出しているのか、それを持続的に改善、維持していくには、そこを考えることの大切さを強調されていました。

「額だけでは不十分。率でもまだまだ。利回りを出す経営、そしてそれを長く続けることで複利を出す経営こそが、富を生み出す経営」

P/L、損益に対してのみ執着する傾向は少しずつ変わってきているのでしょうが、まだまだ道は遠い、そんな感じがしますものね。

第4章では「障壁」について詳しく説明されています。具体例を挙げて競争優位への「誤解」について解説されているのですが、これは非常に興味深いものでした。その一つが、

「差別化」なるものは、なんの持続的な利益も保証しない

他に示されている「誤解」もぜひ本でご確認してみてください。

これらの「誤解」を踏まえて、「障壁」とは如何なるものが該当するのか、中神さんの考えが述べられています。

続く、第5章ではその「障壁」を築くための必要条件が示されています。

キーワードは

呆れるほど」と「腰を抜かすほど

です。果敢なリスクテイクが「障壁」づくりに必要だ、と。こちらも具体的な事例が示されています。

果敢なリスクテイクが必要なものの、それを成果に変えるために必須のものと示されていたのが Idiosyncratic でした。

調べてみると「特異な」という意味のようです。もう少し見てみると「(一個人に)特有の」とか「奇異な」「風変わりな」といった言葉が出てきます。

この(一個人に)というところが実は大きなポイントなのかな、と感じました。

特異なビジョンがないところに、障壁は立ちません。

特異なビジョン、中神さんの言葉にすると「(独自の)事業仮説」が、リスクテイクを可能にする、それが超過利潤を生み出し続ける「複利の経営」になる、と。

こうした経営を可能にするための方法論、会社のガバナンスのあり方が第7章、第8章で示されています。

さらに、第9章では株主アクティビズムについて述べられています。

危機を抑えるために供給された資金が、回り回って少しでもゆるみが見える経営に厳しい要求を突きつけるという大きな流れは、すぐそこに迫っている

中神さんが予言されています。

アクティビストの主張には株主の論理として無理筋ではないこともままあるので、難しい、とも。

中神さんは「みなで豊かになる経営」を実現する、増やしていくために、会社と投資家の「共創」を提案されています。その「共創」に貢献できる投資家は、「厳選投資家」だ、と。

「厳選投資家」とは

滅多にないレベルの優れた企業を探し出し、その経営の優秀さに賭けることで、株式市場 の荒波を乗り切っていこうと考えている投資家のこと

です。

こうした考えを基に投資先を厳選しているファンドに大きな魅力を感じます。


中神さんの昨年の講演録がすごーく印象的でした。

ベータとか CAPM というのはノーベル賞を実際に取った理論ですが、それが本当に偉いのか、正しいのかというのは、すごく違和感が実はあります。

私の目には「厳選投資家」と映る、ベイリー・ギフォードさんもCAPMを痛烈に批判していました。

何故こんなにも多くの市場参加者が、小数点以下の最下位の桁まで正 確な予測に固執しているのでしょうか。答えはその方が簡単かつ無難だからであり、皆と同じことをすれば安心 という心理によるものです。不確実性 は計算が難しく、失敗のリスクは大き くのし掛かります。CAPMという出来合いの万能薬で、投資の永遠の謎を解決した気になる方が簡単です。

ただし、CAPMは実際には機能しません。これは確信を持って言えます。


本を読み終わって感じたことが2つあります。

一つ。みさき投資さんが運営する公募投信があったら良いなあ、それがあればぜひお金を託したい。これはあらためて思いました。

一つ。小倉昌男さんの「経営学」をもう一度読もう!Idiosyncratic を意識しながら。

非常にエキサイティングな一冊でした。


この記事が参加している募集

サポート頂いた際は、TableforKidsへの寄付に使わせていただきます。 https://note.com/renny/n/n944cba12dcf5