「時代遅れ」のアクティブファンド
先日、 #鎌倉投信 さんの運用報告会でこんなコメントがありました。
5年、10年のスパンで起きるべき変化が「早送り」で起きている、、、かもしれない、投資信託でも、と、少し考えて始めています。きっかけはこのファンドです。
純資産総額が1兆円を超えています。ファンドの設定が昨年7月、その7月末純資産総額が3,926億円でした。ファンドへの資金の流入、基準価額の上昇で1年も経たずに1兆円を超えました。
ケタが1つ違いますが、こちらのファンド。
純資産総額が1,000億円を超えました。こちらのファンドの設定は2019年6月。10百万円からのスタートです。昨年4月末の純資産総額は13.6億円ですから、こちらのファンドも劇的にその規模が大きくなったことが分かります。
最初に挙げたファンドは、大きな力を注いだ販促活動があったと推測されますし、2つ目のファンドは短期で驚異的なパフォーマンスが見られたということも大きかったと思います。しかし、です。”ESG” や ”インパクト投資” という言葉が銘打たれたファンドがここまでの規模になるのは、コロナ禍前では考えられなかったのでは、とも思われるのです。
この2つのファンドのWebページを見ていると、情報発信に力を入れていることも感じられます。
ESGへの取り組みが「将来、企業価値を向上させる資産」として捉えることができるようになったということです。「その企業のESGへの取り組みは、資産としてどれほどの価値があるか」を分析し、評価することでリターンの向上につなげることが可能と考えられます。
http://www.am-one.co.jp/fund/fundgroup/26/
投資先の紹介を非常に積極的に行なっています。
この種の投資先紹介では、株価の推移「しか」載せていないものがこれまで非常に多かったのですが、業績の推移についてもデータが加えられています。
2つ目のファンドも積極的な情報発信が見られます。
こちらのファンドは「株価」のみですが、投資先がどんな会社であるか、が示されています。
2つのファンドから感じ取れるのは、ファンドの投資先を知ってもらいたい、伝えようとする意思です。
これまでの投資信託の月次レポートで書かれている内容は、そのほとんどが、その1ヶ月の株価の値動き、ファンド全体の基準価額の動き、投資先の株価の動き、つまり、「価格」の話でした。でも、アクティブファンド、特にしっかりと調査、分析を行なって投資判断し、相応の期間、投資を継続するアクティブファンドにとって、短期間の「価格」の話をウダウダと何ページも書くことに、さほどの意義は無いと僕は思います。市場全体に投資する、株価指数に連動することを目指すインデックスファンドならば「価格」の話しか語れない、語るものが無い。でも、アクティブファンドは、投資先の調査、分析、投資判断、そうした行動を行なっているのに、その種の話はほんの数行、しかも、内容は極めて抽象的、先月と見比べて「どこが変わったのか」と感じさせるようでは「時代遅れ」になってしまう、ということです。
農林中金バリューインベストメンツ #NVIC さんの月次レポートをご覧ください。
株価の動きについてのコメントは全くありません。それよりも、受益者のためにどんな調査をしているか、投資先の会社の強み、特徴は何か、それらを伝えることに力が注がれています。
アクティブファンドの存在意義とは?
株価指数を上回る成績を残す。そう考えている人が大多数でしょう。
でも、「価格」がどう動くか、は結果論でしょう、時間を短くすればするほど。株式投資の果実、リターンの源泉は、投資先が価値を持続的に創造し、その価値が市場に高く評価されることだと僕は考えています。長期に亘り持続的にそれを実現できる投資先で構成されたポートフォリオを保有していれば、結果的に果実、リターンが得られる、と。株価指数に連動するファンドを保有に比べて、成果が劣後するかもしれません。
大事なことは、持続的に価値を創造し、その価値が市場で高く評価されうる会社を、見つけて、調べて、考えて、判断する、選び抜く、また、見守り続ける、その資格が無いと判断したら処分する。これがアクティブファンドの存在意義だと僕は考えています。
今回、取り上げた2つのファンドの投資先です。僕はしっかりと選び抜いていると感じます。アクティブファンドらしい仕事をされている、と。発信にも上述の通り、取り組まれています。
こうした仕事ぶりをきちんと確認することなく、フィーの多寡を、パッシブファンドのそれと比較して「高い」と評するのはアンフェアだと感じます。投資信託という仕組みに対するリスペクト、愛が無いのだなあ、と。
値段ばかり高くて、美味しくない、サービスの悪いレストランだってあります。そういうレストランはお客さんが離れていくだけ。投資信託も同じことでしょう。
成績の良いアクティブファンドを事前に選び出すことは不可能。
その通りだと思います。でも、レストランも似ていると思うのです。食べログ等で高い評点が付いていてもアレなお店に出くわすこともありますし、雑誌で絶賛されていてもアレレなこともあるでしょう。「絶対外さないお店」を紹介している本でもハズレを引くことだってあります。
「時代遅れ」のアクティブファンド
少し脱線しました。
上記の2つのファンドに限らず、投資先のことをしっかりと伝えよう、投資に対する考え方を伝えよう、その意思を感じさせる発信が実はじわじわと増えてきていることを感じます。
今月の値動きは、、、と市況、株価の動きしか語っていない、抽象的な内容に終始している、そんな報告、レポートしかしていないアクティブファンドは、これから急速に「時代遅れ」になっていくのではないか。
「ファンドの投資家は、所詮、価格しか、基準価額の騰がった、下がったくらいにしか関心が無い」。
そんなステレオタイプに、その投信会社は囚われているのではないでしょうか。確かに、投資信託を買い始めたばかりの頃はそうなってしまうものです。
でも、徐々に変わっていく、一体自分のお金はどのように取り扱われているのだろう、投資先はどんな事業をしているのか、どんな価値を社会に届けているのか、それを投信会社はどのように評価しているのか、そこに関心が向く人も出てくることでしょう。で、僕の勝手な予測ですが、そんな投資家が確実に増えていく、それが「時代」になっていく。
そうした関心に対して配慮していないレポート、報告を行なっていることは「そんなこと(投資先の価値や、それを投信会社がどのように判断しているか等)には関心を持ってくれるな。価格、基準価額だけ見ておいたらいいんですよ。」というメッセージを発しているようにさえ見えてしまいます。
アクティブファンドの存在意義(僕が考えている意義でしかありませんが)って、そこにあるんかい?って。
積立投資の効用を丁寧に説明することも非常に重要です。しかし、その効用を理解して、行動、実践を継続するには、自分が投資している、保有している資産への深い理解が伴っていることが大きな助けになります。投資先はどんな基準、プロセスで選定されているのか、また、そうして選ばれた会社がどんな風に社会に価値を届けているのか、をちゃんと伝えることも、アクティブファンドにとって極めて重要です。
そのアクティブファンド、「時代遅れ」の道を突き進んでいませんか?
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