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「対話」「エンゲージメント」 と #責任投資 (後編)

前編 はこちらです。

先日、 #鎌倉投信  さんの運用報告会に参加しました。

そこでは10年以上継続して株式を保有している投資先21社(投資先は全部で68社ですので 1/3 弱が該当します)が紹介され、その中の会社のいくつかが詳しく紹介されました。また、投資先の会社が事業活動で「これからの社会に必要なこと」、例えば「資源の有効活用」「働く環境整備」など、を実現した具体例が紹介されました。そして、同時に懸念のある投資先とその対処、今後の方針についても報告されました。

こうした報告に「血が通っている」と感じられるのは、そこに投資先との「対話」が存在してるからだと推測しました。Shimoyamaさんがこんな指摘をされていました。

懸念、リスクの要素があれば売却する、投資先が上場会社であれば、それは投資家にとってさほど難しいことではありません。でも、それでいいのか、ということです。調査、分析に時間をかけ、また対話を続けてきた相手ですからね、(懸念の元になっている事案にも依る場合もあるでしょうけど)一刀両断に全ての株式を売却することは、果たして責任ある行動なのか、とも思えるわけです。

同じ日に、僕は別の予定で参加できなかったのですが、農林中金バリューインベストメンツ #NVIC さんも年次総会を開催されていました。ふたたび、Shimoyamaさんのツイートです。Shiomyamaさんはイベントを梯子されたようです。

投資先の会社と投資会社とのエンゲージメント、対話が価値創造につながる可能性についてコメントされています。このツイートに  #コモンズ投信 の伊井さんがこんな風に応じられていました。

エンゲージメント、対話からのアウトプットをより良いものとする、ポテンシャルを高めるのが、お互いの信頼関係だと思います。伊井さんが「長期投資家しかできない」とご指摘の通り、時間がそれを育てる面は非常に大きなものがあると思います。が、単に長く保有しているだけでは、そこに時間が流れていただけでは信頼関係はなかなか生まれないことでしょう。だから、日頃のコミュニケーション、対話の積み重ねが非常に大事になってくるのだと思います。そうやって積み重ねてきた関係を、即座に断ち切る、一刀両断にするのが全売却という行動だと思います。僕が投資先をコロコロと目まぐるしく入れ替える投資信託が好きになれない理由の一つです。

エンゲージメント、対話ということで、国内大手投信会社のエンゲージメントに関する発信を調べてみました。

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共通していることがありますね。具体的な対話の事例紹介、相手先の会社が「匿名」となっています。いずれの会社も、投資銀行等をグループ内にもつので、色々とデリケートな面があるのでしょう。しかし、です。これら対話を持った会社に投資していた資金には公募投信のお金、市井の生活者、フツーの個人投資家のお金も含まれているのではないか、と想像します。であれば、公募投信を保有する受益者に、より具体的なイメージを持ってもらうために、可能な限り、会社名を開示するべきだと思います。「対話」と呼べないかもしれませんが、それが投信会社と受益者との「対話」の一つの形ではないでしょうか。

上記で紹介した投信会社の報告は、スチュワードシップ・コードの原則6 

「機関投資家は、議決権行使も含め、スチュワードシップ責任をどのように果たしているのかについて、原則として、顧客・受益者に対して定期的に報告を行うべきである」

に基づいたものです。

冒頭にご紹介した、鎌倉投信さんはこの原則6について、次のように表明されています。

鎌倉投信は、運用状況ならびに投資先企業の取り組み、スチュワードシップ責任等について、法令等で定める運用報告書の交付に加え、運用報告会の開催や月次で発行する運用報告書「結いだより」やホームページ等を通じて受益者に報告します。

また、鎌倉投信が設定・運用するファンドの決算、運用状況をより良くお伝えするため、重大な約款変更等の承認事項の説明のため、更には、投資家、投資先企業、運用者が一同に集い、顔が見える投資の形を体感できる場として「受益者総会」を原則として年に1回開催します。更に、運用報告の一環として、投資先企業の取り組みを心で感じていただくために適時「いい会社訪問」をおこなう等、受益者と投資先企業を交えた直接的な対話の場を育みます。

年に一度、まとめてレポートで発信するのではなく、毎月のレポートで、そして、先日行われた運用報告会で、投資先との対話の模様が報告されています。対話の相手となった投資先の会社名は全て明らかにされています。


NVICさんはどうでしょうか。

6-1.運用機関は、直接の顧客に対して、スチュワードシップ活動を通じてスチュワードシップ責任をどのように果たしているかについて、原則として、定期的に報告を行うべきである。

当社の長期運用を遂行する上で、当社の運用哲学・手法に対して、最終顧客から十分な理解を得ている状態を保つことは不可欠な要素です。この信頼関係を維持・強化するべく、定期的に報告会を実施し、投資先企業の状況、対話状況を含めた運用状況について議論します。

また、当社の投資先企業の方のご協力を得て、最終顧客向けの施設見学会などを企画することもあります。これは、当社が行う長期投資の概念をより深く理解していただくために非常に重要な機会であると考えています。
6-3.機関投資家は、顧客・受益者への報告の具体的な様式や内容については、顧客・受益者との合意や、顧客・受益者の利便性・コストなども考慮して決めるべきであり、効果的かつ効率的な報告を行うよう工夫すべきである。

最終顧客を含めたお客様向けのスチュワードシップ活動の報告は、お客様との間で様式・内容について合意がある場合にはそれにより、また特に合意のない場合には、お客様に分かりやすいものとなるように努め、よりお客様の利便性やコストについてのご希望の添えるよう工夫を重ねます。
6-4.なお、機関投資家は、議決権の行使活動を含むスチュワードシップ活動について、スチュワードシップ責任を果たすために必要な範囲において記録に残すべきである。

スチュワードシップ活動については都度記録し、最終顧客を含めたお客様への報告や情報開示に利用するとともに、スチュワードシップ活動の改善と当該企業への投資判断に適宜反映します。

毎月のレポートで、投資先が詳しく紹介、説明されていますが、そこでは投資先の会社との対話の内容もカバーされています。「匿名」にはなっていません。


コモンズ投信さんです。

私たちは、スチュワードシップ・コードの実践および運用実績について、お客さま向けに月次運用報告、メルマガ、セミナーなどコミュニケーションツールを用いて定期的に報告いたします。特に重要であると判断した事項は、適切にお客さまと共有し、積極的な対話に努めます。

こちらも月次レポートやその他のイベント等で、対話について報告するとされています。「匿名」ではなく会社名は明らかでしょう。


投資パフォーマンスの目線での対話を、多くの投信会社は意識し、念頭に置いているようにも感じられますが、本当にあるべき姿はそこ?と感じてしまいます。

投資先と信頼関係を築きつつ、色んな問題に対して、投資先の持つ力、良いところを活用して一緒に何か新しい価値創造につなげることができないか、知恵を絞りあう、そんな対話がもっと沢山あるべきなのではないか、そう思われてなりません。

投資先、投信会社、また投信会社を支持する受益者の対話、エンゲージメントが新しい価値を創造することが出来たら、そんな例が増え出したら、と。

下記に挙げた新しいチャレンジもそんな潮流につながることを願っています。

たまたま今朝、「対話」についての記事と出会いました。

組織にとって大切なのは、「聴く」。相手と価値観が異なっていても、聴くことに意識を向けて、丸ごと受け止めます。それが心理的安全性を高め、フラットな関係を築いていきます。

鎌倉投信さんの運用報告会で、五十嵐さんが「対話」について、”とにかく話をきく”と強調されていたことを思い出しました。「聴く」ことの大切さ、僕も肝に銘じたい、そう思いました。

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