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「調査」と「対話」 ー #アクティブファンド に期待すること

アクティブファンドに何を期待していますか?

(株価指数と比べて)大きな値上がり?

それとも、時価変動の上下動、リスクの低減?

これらはいずれも価格のお話ですね。

価格、株価の予想、予測に軸足を置いている(と推測できる)アクティブファンドは関心が湧き上がりません。

株価の予想、予測に軸足を置いているアクティブファンドに見られる特徴は、2つです。

その種のアクティブファンドの月次レポートはシンプルでしかも量が少なめです。内容も今月はA社の株価が騰がった、B社の株価が下落した、といった内容に終始しています。運用方針も株価の見通しが説明されています。

これが一つ目の特徴です。二つ目の特徴は運用報告書で見つけることができます。

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運用報告書(全体版)には、通常、組入資産の明細が載せられています。

上に挙げたサンプル。左端の列に数字が入っているのは1年前の決算期末に保有していたことを意味します。「ー」は1年前の決算期末に保有していなかった資産です。1年の間にファンドの中身がガラッと変わってしまっていることが窺えます。1年という短期間でこのようにポートフォリオを変えるファンドは価格、株価の見通し、予測に軸足を置いて運営されているものと僕は考えます。

こうしたファンド運営で立派な成績を残しているアクティブファンドは実際に存在しています。ただ、僕はそうした投資判断のプロセスには興味を持てません。

立派な成績を残しているやん!と見つけ出したアクティブファンドがあったとしても、月次レポート、運用報告書をザッと見て、上記の2つの特徴を確認できると、僕の好奇心はそこで終わってしまうことがほとんどです。


アクティブファンドに期待していること ー 「調査」


中神康議さんの「投資される経営 売買(うりかい)される経営」を読み返してみました。

長期投資家は「長期調査家」
・・・

私たちが会社をそこまで調べる理由は、「この会社は本当に長期投資に値する会社のか」の1点を見極めたいからです。「長期投資に値する」とは、「長期間に渡って企業価値が持続的に上がり続ける」ということを意味します。

アクティブファンドに期待しているのは「(価格、株価の)予測」ではなく「(価値、事業の経済性の)調査」です。

ろくすけさんのブログです。

持続的に企業価値を高める、そんな事業経済性を持つ「障壁事業」。そうした事業を丹念な調査で選び出すこと。

「障壁」をより堅牢なものにするために、事業を通じて積み上げた資本を(また場合によっては新たに資金調達し)投下、的確な資本配分を実現できるだけの能力、胆力を持ち合わせているか、という面も調査すること。

もちろん、これらの「調査」を基にした投資判断は最終的には「予測」になってしまいます。しかし、株価が上がりそうか、割安か、に軸足を置いた「予測」とは決定的に違っているはずです。「予測」や判断までに、事業についてどれだけ「調査」を積み重ねたか、です。

長期投資にとって最も重要なことは、「素晴らしい経済性をもったビジネスを選択することであり、企業価値評価(Valuation)の正確性ではない(=割高割安を言い当てることではない)」

「京都企業が世界を変える 企業価値創造と株式投資」の第8章 長期投資の意義と実践 で奥野一成さんのコメントです。

投資するか否かの判断、意思決定に至るまでの「調査」はもちろんのこと、投資実行後も魅力と感じた経済性が維持、強化されているか、継続した「調査」を期待しています。

「調査」が徹底したものであればあるほど、それを伝える、発信することで、説得力は増すことでしょう。こうした調査の内容を発信することを「手の内を晒すことになる」と考えるファンドマネジャーも居るでしょうけれど、長期的にみれば「どれだけ調査しているか」がアクティブファンドの質を決める要因だとすれば、「調査」についての発信を渋ったり、端折っていたりすれば、投資家の信頼が高まることはないでしょう。

アクティブファンドに期待していること ー 「対話」

ファンドマネジャーと投資先との「対話」。今後、益々重要視されると予測しています。事業経済性を維持、強化する、持続的に価値を創出するために、互いの立場、見地から建設的な「対話」を積み重ねていくことです。

#青天を衝け  の第24回。

「一人がうれしいのではなく、皆が幸せになる。一人一人の力で、世を変えることができる。おかしれえ…。これだ。俺が探し求めてきたのは、これだ!」

投資家とファンドマネジャーとの間にしっかりとした信頼関係が出来たアクティブファンドには、渋沢栄一さんが探し求めてきたことを実現できる可能性がある、そう思っています。そう簡単に実現できるものではないでしょう。が、お金ではなく、知恵やアイデアといった資本がこうした協働で価値を創出する可能性はあるはずです。

「一人ひとりの未来を信じる力を合わせて、次の時代を共に創る」

ファンドマネジャーと投資先との「対話」はもちろんですが、ファンドマネジャーとファンドに資本を託す投資家との「対話」も同じく重要です。「対話」を通じてお互いを理解する、アイデアを出し合える、そんな関係を築いていく。しっかりと「調査」を積み重ねて、信頼を高めているアクティブファンドならその役割を担うことが出来ると思います。

立派な成績のファンドを見つけて、その月次レポートや運用報告書を確認して「うわあ、こんなにしっかりと調査、対話しているのか!」と唸らされることはまだまだ少ないのですが、これからそんな出会い増えたら嬉しいことです。

「調査」「対話」に真摯に取り組み、その様をしっかりと報告、発信出来るアクティブファンドが一つでも多く増えて欲しい、そう強く願っています。

#ステキな投資信託をそだてましょう


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