オノマトペピアノ【毎週ショートショートnote】
すっかり桜が散った暖かい春の日。
私は音楽室でピアノを弾く彼と出会った。しなやかな指から溢れ出る繊細な音色は、私に桜の幻を見させた。
いつも彼は何も語らず、ただ私の話を聞く。自分の気持ちを表現するのが苦手らしい。
そこで私は、彼に子供用のおもちゃのピアノをプレゼントした。そのピアノは演奏できるのはもちろん、特徴的なのがキーボードを押せばオノマトペが奏でられる。
「今日の授業どうだった?」
『ヘトヘト』
「私、今日のテストやり直しさせられるんだ…」
『ガーン』
繊細で音符ひとつひとつ拾い上げる音色と、機械的で一音一音はっきりしている音色。
奏でられる音色は全く違うが、どちらも私をワクワクさせた。
「私と毎日話してて鬱陶しくない?」
彼は首を横に振り、『ワクワク』とおもちゃのピアノで答える。
私はホッとした。
すると、彼はアッとした顔をして、もう一つのキーボードを押す。
『ドキドキ』
その機械的な音は、私の心までドキドキさせた。
(409字)
こんばんは。れんこんです。
たらはかに様の企画に参加させていただきました!
微笑ましい2人の関係に、後日談も書きたくなりました(笑)
最後までご覧いただきありがとうございます。
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