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洋服記録88_DNA的ファッション

記憶に残るドラマというものがある。

今も昔もリアルタイムでドラマをみる機会は多くなく、
沢山の作品を知っているわけではないのだが、
それでもいくつか、記憶に残っているドラマがある。

その一つに、
「恋ノチカラ」がある。

深津絵里演じる籐子と、
堤真一演じる貫井巧太郎のラブ・コメディではあるのだが、
大手広告代理店から独立した有名クリエイターの個人事務所が、
徐々に信頼を得て仕事を軌道に乗せていくビジネスストーリーでもある。

私がこのドラマを知ったのは高校生ぐらいの時であったが、
広告業界のキラキラした世界と、
ビジネスマンとして仕事に奮闘する大人たちの姿に、
大きな憧れと羨望を抱いたものである。

私はかつて、自ら志望してインハウスの広告業務に就いていたが、
その背景にはこのドラマの影響が少なからずあったと思う。

そんなドラマであるが、
私が特に影響を受けた部分が2つある。

1つは、営業マンという存在。

西村雅彦演じる敏腕営業マンの吉武が、
すったもんだの末に事務所のメンバーに加わることになったシーン。

得意先の社長からの度重なるクレーム電話に手を焼き、
パニックになりながら対応を押し付け合う最中、
突如現れた吉武が電話を取り、その場を収めてしまう。

電話を切った後、
「今のは何の会社の社長だ?」と聞くシーンに、
私は営業マンという人間の真髄を知った。(と思っていた)

その後も、クリエイターと得意先との間を取り持ったり、
死ぬほど飲んでも翌日涼しい顔で出社したり、
私の中での営業マンの人物像がどんどん固まっていった。

具体的に言うならば、
口がうまく、人たらしで、酒席にも強い人。

私は新人時代に何年か営業をやっていたが、
心のどこかで、
なんとか吉武さんに近付こうとしていた節があったように思う。

ちなみに、
30歳前後で出会ったバリバリの営業マンにこの話をしたら、
営業を舐めるな!と怒られた。
相手も事情も知らずにその場だけを収めるなんて無責任が過ぎる。
そして、できる営業には酒なんて一滴も必要ない。
とのことだ。

組織論の授業で観た「十二人の怒れる男」でも、
気が強く自身の主張を通す傲慢な人間として描かれていた営業マンに対し、
クラス1スマートな現代の営業マンが、偏見がひどすぎると嘆いていた。

往々にして営業マンというのは、
こうした類のステレオタイプに嵌められる傾向にあるように思う。
私も大いに影響を受けてしまったわけだが、
それが良かったのか悪かったのか、今となってはわからない。

そしてもう1つ影響を受けたのは、
籐子のファッションである。

自由度の高い業界であることに加え、個人事務所という設定だったせいか、
スーツやオフィスカジュアルに身を包んだ籐子はほぼ出てこない。
タートルネックにプリーツスカートといった着こなしは、
籐子に、そして深津絵里に、
本当によく似合っていた。

ジャケットやトレンチコートではなく、
キルティングジャケットにマフラーといった格好で仕事に行けるなんて、
かわいくて、おしゃれで、自分らしくて、
本当に憧れたものだ。

そんな中でも私の目に焼き付いているのが、
籐子が履いていたシューズ。

ゴルフシューズを思わせるような編み上げタイプのローファーで、
黒と白が幾何学のように配置されたデザイン。
これがとんでもなくおしゃれなのだ。

私はそれ以来、
同じようなデザインの靴を探し求めた。

大学時代は、ジーナシスで似たようなシューズを見つけ、迷わず買った。
社会人時代、今は無き自由が丘のイタリア靴のお店で同様のローファーを見つけ、
誕生日プレゼントで買ってもらったりもした。

そして先日、
購入履歴からおすすめされて何気なく見たポロラルフローレンで、
籐子配色のフラットシューズを見つけてしまった。

正直、この数日前に似たような配色のパンプスを購入しており、
ラインナップ的には不要と判断すべきことは理解していたのだが、
それでも買わずにはいられなかった。

もはや私のDNAに、
この配色とデザインが深く刻み込まれてしまったようだ。

初めてあのドラマを観てから20年・・・。

当然、自身の経験値や好みは変わっていくわけだが、
貫井企画に就職したいとすら思っていたあの頃の憧れや、
今も変わらず素敵だと思うファッションに思いを馳せ、
時間の流れの早さを憂うアラフォーであった。

籐子配色シューズのコーディネート備忘録

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