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洋服記録87_シロクロニシティ

自分のことを地黒だと認識していた時期があった。
 
幼少期から外で遊び、
夏は海やプールで一日中泳ぎ、
学生時代も炎天下で部活に励んでいた。

皮が剥けるほど真っ赤になった後、
染み込むように黒くなって夏を越し、
その後遺症で真冬でも私の肌は小麦色であった。

故に長年、
自分は地黒だと思い込んでいた。
 
それが勘違いだと気付いたのは高3の頃。
 
大学受験を控えた最上級生は、
その多くが春夏の大会を最後に部活を引退する。
私も同様に引退し、部活の代わりに塾に通う夏休みを過ごした。
 
そして秋になり登校すると、
久しぶりに会った後輩が駆け寄ってきて、一言。
 
「先輩!顔が真っ白ですよ!どうしたんですか?!」

え、真っ白ってどういうこと?
粉も液も何も塗ってないけど。(当時はすっぴん)
真っ青はわかるけど、真っ白ってどういう状態・・・?
 
そう言われて、自分でもはたと気付いた。
たしかに白い。
腕も顔も、なんかやけに白い。
 
あれ、私って色白だったのか・・・。

長年黒い自分しか見てこなかった身としては、
この気付きはまさに青天の霹靂であった。
 
それ以来、かつてほど炎天下にいる機会も減り、
がっつりの日焼け生活とは縁遠い生活を送ってきた。

ところが、
過去の代償を見事に受け始めるのがアラフォー。
かつて燦燦と受けた太陽光をエサに活性化したメラニンが、
徐々に隠しきれぬシミとして現れ始めた。ぎゃー。

せめて目立つ部分だけでも対処しようと、
今年の頭にレーザーでシミ取りに勤しんだ。
 
片頬に丸く現れたレーザー照射後のシミは、
翌日には瘡蓋になり、その翌日には赤み代わり、順調な経過を辿った。
処方された術後薬もせっせと塗り込んだ。
 
そこから1週間、2週間。そして1か月。

なぜか、赤みが消えない。
メイクで隠せるので日常生活に支障はないものの、
一向に赤みが消えない。

薬の塗り方が甘かったのだろうかと反省しつつ、
向かった術後検診。
赤みを検診したドクターの診断は「かぶれ」。
その要因は、なんと処方された塗り薬にあると言う。

え、毎日塗れって言ったよね。
言われた通りの回数とタイミングで塗ってたんですけど!
レクチャーを受けた通り、
丁寧に丁寧に塗り込んでいたんですけど!!
 
基本的に言われたことを守るスタンスの人間にとって、
出された指示によって事態が悪化するというのは到底許し難い。
さてこの怒りをどう伝えようかと思案していると、
私の顔をまじまじとみたスタッフ達が口々に言う。

「それにしても、本当に綺麗に丸く赤くなってますね。」
「まじめ~!」
 
曰く、
普通は患部にざっと塗り込むので周辺がぼやっと赤くなるはずが、
私の場合はきっかり丸く赤くなっている。
日々継続して同じ場所に丁寧に塗り込まない限り、
ここまでの綺麗な丸は作れないのだと宣う。

その指摘に対し、
急に湧き上がる羞恥心。

「言われたことを守る」どころか、
もはや「言われたことを忠実に守らずには居られない」。
人はそれを、小心者と呼ぶ。


処方された薬の使用を止めた途端、
みるみる赤みが引いていく私の肌。
かつて黒を吸い込んだように、赤もあっという間に吸収した。

こうして肌に浮上した悩みは解消したものの、
代わりに自身の性格への悩みが浮上したアラフォーであった。

白黒のコーディネート備忘録

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