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この刹那[着飾る本心]綾村湯葉


死にたいって言いたくて言ってるんだと思ってる?
そんなわけないじゃん
私をなんだと思ってるの
馬鹿にしないでほしい
こっちは生きるだけで精一杯なのに
やらなきゃいけないことは多くて
やるのが当然だと思われていることも多くて
一度刃物を腹に突き立ててしまえば
もうどうしたって苦痛しかない
パソコンのファンが回る音にもいたたまれなくなって
自分を正当化するための自己暗示だけが上手くなる
私の一切合切を信用できなくて
判断が下せなくなってくる
心配されたところで相手の心さえ信じない
自分の感情も信じられない

「今私はあなたのことが好きです。明日もきっと好きです。たぶん一週間先も好きでしょう。ですが、その間に喧嘩をするかもしれません。価値観の違いが発見されるかもしれません。そうしたら私はあなたのことが好きでいられるでしょうか。そもそもこの感情は好きという感情なのでしょうか。依存というわけではないでしょうか。私はこれからもずっと好きだよなんて言葉は言えません。私を信じられないので」

なんて、パフォーマンスだよ
本気にした?

《収録作品》
1.霧雲
2.コバルトブルー・ランドスケープ
3.朝に停滞
4.無精卵
5.この刹那
6.醜い心の子
7.私と君の違う話
8.空を飛びたい
9.誰かの心の詩
10.あいしている

《著者略歴》

綾村湯葉 Ayamura Yuba

2019 第15回 名桜大学懸賞作品コンクール 詩部門佳作「煌めきオーバードーズ」
2020 第14回 びぶりお文学賞 詩部門正賞「こんにゃく」
   第1回 名桜文学賞佳作 詩部門佳作「心の海色」                

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