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人はみな愛おしいのだ 〜かぐやびより〜

どうやら今年の花粉はすごいらしい。
というくらい、ありがたいことに、今のところほとんど花粉に脅かされることもなく日々過ごしているささきです。
今年は桜の花の開花も早くて、うれしいような、
さみしいような、不思議な気持ちです。

そんな3月のある日。映画上映会のお手伝いにいってきました。

場所は長野県の大町市です。

長野県というと、軽井沢や松本、安曇野、白馬などなど、結構有名な場所が多いように思いますが、「大町」というとあまり有名ではないかもしれません。
私もつい最近しりました。


そちらにある、これまた福祉施設が運営するカフェでの上映会でした。


カフェの外観
バリアフリー上映会です

上映映画のタイトルは
「かぐやびより」

さんわーくかぐやさんという、藤沢市にある
福祉施設を舞台にしたドキュメンタリー映画です。

カフェの内部

カフェの中にスクリーンを設置しての観賞会。実際に撮影をした監督のトークショーつき、なおかつ、カフェ特製のお弁当もついてくるという贅沢な内容です。

映画は1時間45分。

カメラマンである津村和比古監督が、3年半、現地に通い撮影した映画。
言葉にするのは、なんだか野暮な気がしますが
感じたことを書いてみようと思います。


感じて味わう。そんな映画だと思った。


ホームページに乗せられていた監督の言葉が
全てを表しているような、そんな映画でした。

監督のメッセージ

誰かを愛したい、そして愛されたい、理解し合える仲間が欲しい。
安心して過ごせる居場所が欲しい。
さんわーくかぐやは、そんな思いを叶えてくれる、安らぎの場所なのだろう。
「標準」とか「普通」、あるいは「健常者」とか「障害者」を意識しないでも過ごせる場所。
ありのままでいられる空間で、日々触れ合い、笑い、遊び、そして働く。
共に過ごした贅沢な時間を紡いで、映画「かぐやびより」は生まれた。
映画を撮ることによってしか表現出来ない感情があることを改めて知った。
今だからこそ、このような作品が必要なのではないか?そう確信している。
この作品を改めて観ると、誰もが心のどこかで望んでいる優しい世界を描けたような気がする。
急がなくても良い、ゆっくり、ゆったり、何もしなくても良い。生きているだけで良い。
自分が自分のままでいられる事が本来の楽な生き方。誰もが等しく愛おしいのだ。

かぐやびよりホームページより引用

描かれていたのは、とにかくさまざまな「人」の姿。
福祉施設というと、それだけでなんだか特別な響きや意味を感じてしまう人は少なくないと思います。
わたしも長らく児童福祉の世界にいますが、
福祉施設を身近に感じて生きてきたかといわれると
そうではないかもしれません。
福祉施設が舞台というと、なんだかそこに
「特別」な意味合いをもって見はじめてしまうかもしれません。

でもきっと、そんな先入観をもたずに
その世界を味わってみることを勧めたくなる映画です。

そこには、年齢とか、性別とか、
仕事を何してるとかしてないとか、
知的障害があるとか、精神障害があるとかないとか、
普段わたしたちが何気なく区別しがちなものが
区別でも特別でもなく、「そのまま」描かれていました。

ありのまんま、そのまんまの「人」であって、
その人達の喜びや心の痛み、
さまざまな感情が、その人自身が、
誰かから色付けされることもなく、そのまま、でした。

世界の中の小さなやさしさが描かれている。

人から傷つけられた体験が、
人によってまた癒されていく。
希望を見出していく。
そんな姿も描かれています。

子を想う親、親を思う子。
そんな家族の姿もかかれています。

絵を描いたりごはんをたべたり。
おどったりうたったり。
怒られたり言い争ったり。

でも決して「これっていい話でしょ?」がない。
おしつけがない。
そっと寄り添ってくるだけ。

色々、社会には悲しいニュースがたくさんあって
そういう出来事を、映画だったり映像で伝えることも、もちろん大切なこと。
そういう事実に目を向けて、その悲しみや痛みに想いを寄せることができるから。

それと同じように、この映画で描かれていたような
小さくも大きな、日常にあるやさしさを感じながら生きていったら、それってとても豊かなんじゃないかと思いました。

そう、とても、豊かな映画なんです。

今回、幸運にも、監督と色々とお話しする時間、
近くで様子をみる機会にめぐまれました。
人へのやさしさと、好奇心にあふれた方で、
日常的に、丁寧に人を感じ取ってる方だと思いました。

言葉も映像も、表現者そのものが出るんだなぁ。

今は映像もわかりやすさが求められることも多いし、
いかに答えに、答えらしきものに速くたどり着くかということが求められるのかもしれません。
私自身はこうやって時間をかけて、じっくりと味わうようなそんな映像が、やっぱり好きだなぁと思います。

見終わった後は、
心にふわっと、ふれてもらったような余韻が残ります。
そして、また人それぞれが、
その人の中のやさしさやあたたかさを味わえる映画だと思います。


彼らもあなたも、やさしい人なんです。

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