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言葉と私とBKK(1)

 2018年1月。大学の春休みを利用して、バンコクに旅立った。旅、というよりも、旅と留学の中間、と言ったほうが正確かもしれない。当時、既に中国への交換留学の予定は決まっていたが、なんだかもっと何かしないといけないような焦りを感じて、タイ語を学ぶことにしたのである。その時の記録を、数回に分けて書くことにする。

 旅の始まりは成田空港。これから乗るのはバンコク行きの直行便…ではなく、香港行きのキャセイパシフィック航空だ。こちらのほうがいくらか安かったし、なにより、国際線の乗り継ぎという体験をしてみたかったのである。


大陸のことを「内地」と表現するのを見ると、心理的な距離を実感する

 香港空港に降りると、繁体字の案内が目についた。そうか、ここは繁体字のエリアなのか。中国でありながら、中国ではない場所。2018年時点では一国二制度の運用が緩く、今のように大陸からの締め付けが強くはなかったはずだ。今思えば、ストップオーバーの時間を長く取って、市内を見て回ってくれば良かったなと思う。これを書いている2023年現在でも、香港に行ったことはまだない。この記事の時間軸ではデモが激しくなるのは先の話になる。結局、彼ら香港人が大事にしていた「香港らしさ」というのがどういうものだったのか、分からずじまいになってしまった。

香港→バンコク線で出た機内食。マッサマンカレーの旨さを知った。

 乗り継ぎは問題なく終わり、スワンナプーム空港に無事到着した。飛行機を出ると、もわっとした熱気が身体に絡みつく。ああ、本当に、東南アジアに足を踏み入れたんだ。そう思うと、ポケモン金銀でジョウトからカントーに初めて行った時のような高揚感を覚えた。
 入国審査の列に並んでいると、ある白人がその様子を撮影していた。タイ人の係員が彼に対して何かを言っていたが、話を聞いていない様子で、痺れを切らした係員が白人をひっぱたいていた。なるほど、こういう場所は撮影してはいけないのだな。海外経験が浅かった私も、嬉しさから撮影してひっぱたかれていたかもしれない。身を挺して教えてくれて感謝する。

エアポートレイルリンク、スカイライナーのラッピング車両が走っていた

 入国して、エアポートレイルリンクのホームに辿り着くと、スカイライナーのラッピング車両が入線してきたので驚いた。こういうのって、自国のものを紹介したりするもんなんじゃないんだろうか。海外に出て、初めて自分の国の影響力が分かるのだな。そんなことを考えながら、予約しておいたアパートに向かい、一日を終えた。

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