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【Vol.6】ダイヤが放つ婚約指輪の効力

数年付き合った彼から記念日に突然のプロポーズ。真剣な眼差しで愛を誓う彼から差し出されたのは、キラリと光るダイヤの婚約指輪。あの四角形の小さな指輪の箱をパカッと開ける瞬間。女性なら誰もが夢見る人生最高の瞬間だ。これをゴールと呼ばずになんと言おう?

女性は婚約指輪をもらうとどんな気持ちになるのか?そう、心の底から安心するのだ。ああ、この人を選んで正解だった。付き合っていたことは間違いではなかった。やっと幸せを手に入れた。これからはこの人とずっと幸せに生きていく。

しかしちょっと待った。このダイヤの効力は一体何年続くのだろう。もちろん指輪のために結婚するわけではないし、永遠の愛を誓った証、硬く割れないダイヤを2人の絆となぞらえた愛の証だ。でもこのダイヤと引き換えに、この先ずっとこれから待ち受けるあらゆる困難を、どれくらい寛容に、柔らかく大きな愛で受け止めていくことができるのだろうか?

結婚という肩書きを手に入れた女性たちは、その一歩先から待ち受けるありとあらゆる困難に対し、事実驚くほど楽観的だ。両親のこと、兄弟のこと、住む家のこと、お金のこと、仕事のこと、子供のこと、学校のこと、介護のこと、老後のこと。そこからさらに枝分かれ状に派生していく様々な出来事が待ち受けているにも関わらず。結婚とはいわゆる”あらゆる困難な道のり”のスタートラインなのだ。なのに女性はダイヤの指輪の箱を開けた瞬間思ってしまう。”ああ、やっと幸せを手に入れた”と。

かつては私も、あのパカッという夢心地の音と共に人生の困難な道のりのスタートラインに立った。相手も清水の舞台から飛び降りるつもりで買ったのであろう愛の証を差し出し、とても誇らしげだった。しかし実際、婚約指輪をつけて生活していたのは初めの数ヵ月くらい。仕事でパソコンを打つ時、料理をする時、洗い物をする時、掃除や洗濯をする時、とにかく気になって仕方がない。あの光り輝く小さな石がありとあらゆる場所に引っかかるし、少しでもゆるいと石が回転する。ダイヤは変わらず輝くが、リングの部分は時間が経つにつれ、いつの間にか傷つき、じんわりとくすんでいく。あの箱を開けた瞬間の最高の状態から、ゆっくりと遠ざかっていく。たとえ毎日ダイヤを愛でなくても、結婚記念日や誕生日にはよそいきの薬指へ変身させ、その数時間後にはまた箱の中へと戻っていく。

結婚とは生活だ。単に幸せが待っている場所でも、一生安全が保障された楽園でもない。辛く困難な日々の生活の中から、ちょっとした瞬間に幸せを見出だせるかどうかの場所。その小さな幸せも、自分自身が優しい素直な気持ちで日々生きていないと見つけることすら難しい。光り輝くダイヤはあの引き出しの小さな箱の中に眠っている。そう、あなたを支えるのはダイヤの輝きではなく、日々の小さな幸せに過ぎないのだ。

それでも女性は愛する人からのプロポーズに心を躍らせ、ダイヤの美しさに目を細める。なんとも愛すべき存在ではなかろうか。

あなたなら永遠の愛の誓いと共に、光り輝くダイヤモンドが欲しい?それとも、いらない…?

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